FF編 第七章
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駅前に集合した雷門イレブンは帝国学園へ向かうために電車に乗り込む。これは響木監督の判断で公共交通機関であれば影山の手は及ばないと考えてのことだった。帝国学園は同じ都内にあるからさほど時間はかからない。三十分弱で到着するはずだ。風丸は隣で目を伏せている花織を横目に目を細める。彼女は風丸の肩口に額を寄せて静かに寝息を立てていた。
帝国学園に到着するまでのわずかな時間、その間に花織に休むように言ったのは風丸だ。集合してから花織はいつも通りに振舞おうとしていたが、完璧に不調を隠しきれてはいなかった。マックスや半田、秋を始めとする彼女と特に親しい者には異変は筒抜けで、花織にしきりに心配を向けていた。何でもないという花織の答えに納得もしていないようだったから、彼らの詰問を避けるためにも風丸は花織を隣に引っ張ってきて休ませることにしたのだ。
「風丸」
「……ん?」
声を掛けられてちらと花織から視線を逸らす。正面に座った豪炎寺が花織に目を向けてから風丸を見た。
「月島は……、大丈夫か」
クールなその眼差しに明らかな心配が浮かんでいる。豪炎寺は昨日の事件を知っているから無理もないか、と風丸は思った。集合したときにも散々響木監督や円堂から同じことを聞かれた。
実際これだけダメージを受けている。とても大丈夫とは言い難いが、これ以上事を大きくするのも花織は望まないだろう。ああ、と短く返事をしながら風丸は起こしてしまわないように花織の手に自分の手を重ねる。いつもよりも腫れぼったい彼女の瞼と目の下の隈が風丸の気持ちを奮い立たせる。
「もうあんな目には遭わせない」
まずはそれが重要だ。風丸の言葉に同調するように豪炎寺が頷く。
「……そうだな」
豪炎寺の鋭い眼差しが眠っている花織を映す。今日の決戦に向けてか、それとも仲間を守るという闘志か。豪炎寺の瞳の中にも燃えさかる感情が滲んでいた。
ほどなくして、一行は無事に帝国学園に到着した。どんよりとした暗い雲が空を覆う。今にも降り出しそうな天気が助長して、帝国学園の醸し出す空気は重厚で暗い。まるで要塞のように広大な土地一帯に校舎を構えている。サッカースタジアムは屋内にあるから、天候に試合内容が左右されないのが唯一幸いな点だ。
「……」
口々に帝国学園に対する感想を述べるチームメイトを尻目に、風丸は花織の元へと視線を寄せる。電車の中でわずかとはいえ仮眠を取った花織は、朝に比べれば多少顔色がマシになっているようだ。だが、それとは別に帝国学園を見上げる彼女の表情にはこの空と同じように暗い影が掛かっていた。肩を丸め、両手をギュッと胸の前に握りしめている。いつになく花織が委縮して見えた。
帝国学園は影山の支配下にある。それだけで花織の怯えようには察するにあまりあるが……、もしかするとそれだけではないのかもしれないと風丸は思う。
俺は帝国にいた頃の花織を知らない。だが、友達もいなかったと話していたのは花織自身だ。
「……花織」
手を伸ばして花織の背中を軽く叩く。すると肩を跳ねさせた花織が風丸を見た。チームメイトたちがいる中で大胆なことをする気はない。だが、自分が花織を支えられたら。勇気づけられたら……。せめて自分が隣にいることを伝えたくて、一言に込めて花織に頷きかける。
「大丈夫だ」
実際、何の足しにもならない言葉だ。現実が近づくにつれ、情けなさに胸が押しつぶされそうになる。だがそれでも、自分の言葉で花織がわずかに微笑んでくれたことが、風丸の背中を後押しする。
俺が花織を守る。必ず守ってみせる。
そのために、必要な判断を誤ってはいけない。