FF編 第十二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先日、世宇子中学のキャプテンを名乗る、亜風呂照美ことアフロディが雷門中学へ挑戦状を叩きつけに来た。彼は突然、どこからともなく現れ、豪炎寺と染岡のドラゴントルネード、鬼道と一之瀬のツインブーストを片手で止めて見せた。そして我がチームのキーパーなら指一本でこれを止めて見せると笑った。彼は雷門中を挑発しに来たのだった。
さらには円堂のゴッドハンドをゴッドノウズなる技で破り、辛くも円堂はそのシュートをカットしたものの、ゴッドノウズという驚異的な必殺技は、円堂にすぐさま立ち上がれないほどにダメージを与えた。チームは不安になっていた。まじまじと力量の違いを見せつけられたようだった。
そしてアフロディが去った後、やってきた監督が合宿を提案した。学校に泊まって、飯でも作ると。円堂以外が満場一致で監督の意見に賛成し、急遽決勝戦を間近に控えているにも関わらず、サッカー部で合宿を行うことになった。監督が何を考えているのかはよくわからないが、監督がそういうのだから重要な意味があるのだろう。
きっとキャプテンである円堂のためだ、花織そう思った。彼は明らかに焦っている。他の皆も決勝戦を控えて気合が入りすぎているように思えるが、円堂は段違いだ。気合よりも、もはや意地だ。確かにこのままでは新しい必殺技もできないだろうし、チームにも悪影響を及ぼすだろう。
「秋ちゃん、お布団ってもう足りてる?」
集合時間の午後五時より早く到着していた花織は秋と一緒に体育館で、選手たちの布団の準備をしていた。今日は全員ここで眠るようだ。もちろん、マネージャーと選手たちの布団の間は間隔を開け、衝立を準備している。
「うん! でもあともう二つ枕がいるかも……」
「わかった。私、今から取ってくるね」
花織明るい調子で、秋に笑い掛ける。選手が焦るのに対して花織落ち着いている。きっとそれは彼女の中で気持ちの整理が付いているからだし、自分のやるべきことが分かっているからだろう。
花織布団類が準備してある部屋へ向かい、体育館を出る。そろそろ時間ということもあって集まり始める選手たちに、一言ずつ言葉を掛けて行った。
「栗松くん、壁山くんお疲れ様です。体育館で楽にしててね」
「はいッス」
「分かったでヤンス」
円堂以外の選手たちは合宿に対して意欲的で、楽しみにしている様子が伺える。いいことだ、合宿はこうでなければ。花織枕を準備する為に道を急ぐ。廊下の曲がり角を曲がった瞬間、急いでいたためか誰かにぶつかりそうになってしまった。
「わっ、すまん!」
「ごめんなさいっ」
思わず衝撃に目を瞑ってしまったが、互いに聞こえた声に恐る恐る目を開く。互いからあっ……、と声を上がった。何故なら花織ぶつかりそうになった相手は風丸だったからだ。お互いの間に何となく気まずい沈黙が走る。
耐えかねて風丸がじゃあ、と花織隣をすり抜けていこうとする。しかしその前に花織が風丸の顔を見つめた。刹那、どきっと風丸は自分の胸が高鳴るのを感じる。花織……。彼はその表情に目を奪われる。何故なら彼女は風丸ととまだ付き合っていた頃、自分に見せてくれていた微笑を浮かべていたからだ。
たった数週間ぶりだというのに、彼女が自分に微笑んでくれることがとても懐かしい気がする。今すぐに花織の前から消えた方がいいとわかっているのに、風丸は動くことができなかった。
「練習お疲れ様、一郎太くん」
「……」
「じゃあ……、また後でね」
花織そう微笑んで風丸の前から去って行った。風丸は花織を振り返る、花織は自分のことをいったいどう思っているのだろうか。そればかりが疑問として風丸の中に募った。先日の件で、花織に完全に嫌われたのだと思った。
しかし実際はそうではなくむしろおにぎりの一件と言い、今の出来事といい、花織から自分に対しての好意が失われていないように思える。そんなはずはないのに。
もしかしたら、俺が良いように解釈しているのかもしれないな。風丸は花織の後姿を見つめながら自嘲気味に笑った。きっと自分がまだ花織に好かれていたいと願うから、きっと花織の行動がそういうふうに見えるのだろう。
何たって花織が好きなのは鬼道なのだから。俺に対してその気持ちは無いのだから……、重々それは自覚している。風丸は自分に言い聞かせた。
花織の優しさをはき違えてはいけない。花織はチームメイトにいつも声掛けをしているし、困ったことがあればいつでも相談に乗るような人間だ。
加えて何か改善点があれば指摘するような……、チームに置いて重要なマネージャーじゃないか。風丸は自分の気持ちを押し殺して、そんな考えを自分に何度も刷り込んだ。そうしなければ自分の気持ちを、今更どうやっても仕方のない気持ちを、花織に打ち明けてしまいそうだった。