FF編 第十一章
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アメリカからの帰国子女、一之瀬一哉がチームに加わり、準決勝、全国大会常連校で豪炎寺のかつて在学していた中学である木戸川清修中学に雷門中学は勝利した。これで雷門中学は決勝戦への駒を進めたわけだ。
あと一試合、世宇子中学との決勝戦にさえ勝利してしまえば、廃部寸前だったあのサッカー部が全国一となるのだ。そんな興奮と今後の課題も相まってサッカー部は妙な緊張状態にあった。先日の試合前の小さな出来事は当事者以外の中からは消失しつつあった。
この頃は、花織に笑顔が増えたと思う。遠目に一之瀬、土門、秋と談笑している彼女の姿を風丸一郎太は見つめていた。最近はあの面子で、よく一緒に彼女は過ごしているような気がする。木戸川清修戦を終える前頃から、暗い面持ちをしていた花織が彼らに励まされて元気を取り戻していくのが分かった。
依然、彼女がもしかして怪我をしているのではないかという疑いはそのままだったが、それでも確かに彼女は笑顔になった。加えて彼らだけではなく、最近は鬼道も花織と二人で話している姿を見かける。さすが鬼道、花織と既に仲直りをしたのだと風丸は思った。
いや、もしかすると付き合い始めたのかもしれない。鬼道と話している花織の表情は無邪気で、楽しそうでそれでも凛として意見を述べたりしていて。自分と居た時よりもずっと綺麗に見えてしまう。事実そうなのかもしれないが、それが無性に悔しい。
花織が自分の手中に無いことが堪らなく嫉妬と劣等を風丸に覚えさせた。これが自分の望んだ花織の幸せだったはずなのに、引き裂かれるような胸の痛みを未だ感じている。花織ともうどれくらい話をしていないだろう、どうせ精々一、二週間程度だろうが、それでももう何年も話していないかのように感じる。花織とボールを蹴り、フィールドを駆けていた時がまるで遠い昔の事のように思えた。
本当は手放したくなんてなかったのに。上辺では後悔も動揺もすべて包み隠しているつもりだ。だが、内心では自分を全部塗り替えてしまいそうな彼女への想いで溢れている。花織を手放してしまったことが未だに未練となって胸の中で燻り続けている。だがその未練はもう断ち切らなければならないもので、風丸には選択肢などなかった。もう、彼女の邪魔をしてはいけない。もうこれ以上彼女を悩ませないためには、自分が彼女から遠ざかるしか道はないのだと風丸はそう思っていた。