FF編 第八章
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試合終了後、風丸はフットボールフロンティアスタジアムのとある通路に来ていた。もちろん、宮坂と話すためだ。格好良かった、と満面の笑みを浮かべてくれた花織を置いて彼は一人ここにやってきたのだった。通路を仕切る柵に腰かけて風丸は宮坂と対峙していた。
「本当にすごい試合でしたね。僕、感動しました! 特に最後の霧隠をかわした場面は鮮やかだった。まるで、疾風のようなダッシュでしたよ」
興奮しきった声で宮坂がこぶしを握る。風丸はそんな彼にとうとう自分の決めた答えを口にした。花織告げたのと同じ答えだ。
「宮坂、俺、サッカーが大好きなんだ」
少し宮坂の感情を伺うような表情で風丸が見上げれば、宮坂はただ静かに目を伏せ彼の答えに頷いた。
「はい、ボールを追う姿から伝わりました。風丸さんが走る場所は、今はこのフィールドなんだって」
ボールを通して皆に気持ちが伝わる。風丸が今日この試合で学んだことだ。宮坂にもボールを蹴る自分を見て、自分の気持ちが伝わっていたのだろうか。そう思ってみれば、そうなのかもしれない。今日は普段よりも花織の声がよく聞こえた気がする。いつもよりも俺のサッカーへの想いが強かったからか。風丸は切なく微笑むと、立ち上がった。肩にかけた白いタオルが少しずれる。そして宮坂に背を向け、自分の想いを口にした。
「陸上のトラックを走るは楽しい。でもサッカーには自分一人では見られない世界がある。俺はイレブンの、イレブンは俺の感じるものを感じる。今はそれを追いかけてみたいと思うんだ」
ちらり、と風丸が宮坂を振り返る。宮坂は力強く胸の前でこぶしを握った。
「はい、フィールドを駆ける風丸さんはカッコいいです。僕、応援してますから!」
「ありがとう」
風丸が宮坂に礼を言えば、宮坂も風丸に背を向ける。一歩だけ踏み出して何か風丸に言うことを思いだしたのか、風丸を振り返り宮坂が言葉を紡ぐ。
「今日の風丸さん、きっと月島さんも惚れ直したと思います。本当に、物凄くかっこよかったですから」
「いいや。……そんなことはないさ」
宮坂の言葉に風丸は目を伏せる。そして静かに首を振った。
風丸は、陸上よりもサッカーを選ぶという決断を下した。それともう一つ、彼の中でのもう一つの悩みの決断を彼は試合の中で決めていた。もう期待しても仕方がない。俺の我儘よりも花織の気持ちを尊重してやりたいから。
先日の言動、花織の鬼道に対する仕草や何もかも……、今までのすべてを思い出して考えた結論だ。花織の傍にいるべきなのは俺じゃない。もう決めたんだ。花織と別れる、次の試合が終わったその時に。次の試合が、花織に恋人として応援してもらえるラストゲームだ。