FF編 第八章
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勝負は結局、戦国伊賀島の初鳥、風魔によって中断され、結果が明らかとなることは無かった。
そして迎えた雷門中学対戦国伊賀島の試合は、戦国伊賀島の忍術、というのか必殺技に翻弄され、攻めきれないでいた。そんな中、先ほど風丸に勝負を仕掛けた霧隠が必殺シュート土だるまを放ち、先取点を伊賀島のものとした。ハーフタイム、戻ってきた風丸に花織が心配そうに声を掛ける。
「一郎太くん。さっきの……、大丈夫だった?」
花織が言うさっきの、とは風丸がオーバーラップした際に、相手ディフェンス高坂の必殺技かげぬいに派手に転ばされてしまったからだった。花織はその時から、風丸が怪我をしていないか心配でならなかったのだ。
「いや、俺は大丈夫なんだが……」
ちら、と珍しく風丸が花織から視線を逸らし、円堂に視線を向ける。先ほどから彼は円堂の仕草が気にかかっていた。霧隠のシュートを受けてから、どうにも彼のふとした行動が気にかかる。右手を庇っているように感じられるのだ。
「だったらいいんだけど……。はい、ドリンクとタオル」
「ああ、ありがとう」
風丸が笑って花織の手から二つを受け取る。花織は心配が拭えないながらに新しいタオルとドリンクを手に持ち、彼の近くにいた土門にタオルとドリンクを渡した。
「はい、土門くん」
「おう、ありがとう。花織ちゃん」
快活に笑って土門もそれらを受け取ってくれる。汗をぬぐう土門を見ながら、花織はねえ、と彼に声を掛けた。風丸と同じディフェンダーでしかも隣のポジションに位置する土門だ。風丸の動向に違和感がないか知っているかもしれない。
「今日の一郎太くん、どんな感じ?」
「ん? どんな感じって……。花織ちゃんも分かってるだろ。今日はアイツ、いつもよりも張り切ってるよ」
「そうなんだけど……、さっき結構派手に転んじゃってたから」
「なーるほどね、心配なわけだ」
土門が頭の後ろで手を組みながらにやにやと花織を見る。花織の頬が少し赤くなる。すると土門がぽんぽんっと花織の頭を撫でた。
「大丈夫だって。ほら……、な?」
土門がそう言って指差した先は風丸だった。じっとこちらを睨むようにしてみていた彼だが、花織が自分を見たのに気が付くや否や、慌てて風丸は視線を逸らした。土門はそれがおかしくて仕方がなく、笑いを堪えながら花織に言う。
「あんな顔できるんだ、怪我なんかしてねえよ。花織ちゃんも、過度な心配するくらいなら後半からもアイツを応援してやれって」
そう自分で言葉にしながら土門は思う。花織は鬼道と風丸、決めかねているなんて言っているが、そんなことはない。花織の瞳は以前、土門が花織に問いかけた時とは全く違う。地区予選決勝で負傷した鬼道の元へ向かわなかった花織の対応が、それを何より裏付けている様に思えた。
❀
後半開始してから数分経つ。ハーフタイム終了間際に何とゴールキーパーの円堂が負傷していることが明らかとなった。どうやら霧隠のシュート、つちだるまを受けた際に負った怪我らしい。花織の想い人は円堂のカバーすることを、皆と宣言して意気揚々とフィールドへと駆けて行った。
「止めろ! 壁山!!」
「あ……っ」
円月の陣から抜け出た霧隠をブロックしようとした風丸だったが、易々と彼に避けられてしまう。花織は思わず声を漏らした。その後霧隠の放ったシュート壁山にブロックされたように見えたが、こぼれ球を拾って霧隠が再びシュートを放つ。今度は普通のシュートではない、先ほど円堂のゴールを破ったつちだるまだ。
「ゴッドハンド!!」
円堂が技を繰り出すが、先ほどの怪我のためか、取りこぼしボールはゴールへと突き進んでゆく。にやり、と霧隠がゴールを確信した時だった。そこへ一人の影がボールの前に立ちふさがる。その人は目にもとまらぬ速さでボールをカットし、シュートを防いだ。
「一郎太くん……!!」
花織の口から彼の名前が零れる。ボールをカットしたそのプレイが、風のようなその速さが、自信に満ち溢れた男らしい表情が花織の心を締め付けた。カッコいい、心からそう思う。
風丸はそのままボールを持ち、フィールドを駆けあがっていく。速い、彼は誰にも止められない。風魔のくもの糸を避け、風丸は上がる。
「行くぞ! 豪炎寺!!」
風丸の声がベンチまで届く。二人の放った必殺シュート、炎の風見鶏が深々と伊賀島ゴールに突き刺さった。同点だ。
「一郎太くん!!」
気が付けば花織は彼の名を叫んでいた。霧隠と競り合う彼、鮮やかにヒールでボールを上げ霧隠を躱し、豪炎寺にパスを送る。花織は夢中だった。フィールドを駆ける彼に一喜一憂しながら花織は応援の言葉を叫ぶ。
「がんばって!!」
聞こえているかなど分からない、それでも花織は叫んでいた。そして風丸はボールを再び豪炎寺にボールを送り、ファイアトルネードがゴールネットに突き刺さった刹那、二対一で雷門中の準々決勝進出が決定したのだった。