FF編 第七章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
以前は通ることの許されなかった、それでも鬼道に会うために花織が通っていたこの通路。そこに雷門サッカー部の控え室はあった。完全自動の扉のそれ、さっそく中へ入ろうと円堂が進み出るとそれよりも早く扉は開いた。
「……っ!」
目の前に立ち塞がった人物に、雷門サッカー部勢の表情が強張る。中から出てきたのは帝国学園サッカー部のキャプテン、鬼道有人だった。鬼道は雷門の面子を確認する。その中で二人の大切な人の無事を確認してふっと息を吐いた。
「無事に着いたみたいだな」
「どういう意味だ! まるで事故にでも遭った方がいいみてえな言い方じゃねえか。まさかこの部屋にも何か仕組んでんじゃねえだろうな」
どすを聞かせた声で染岡が鬼道に食って掛かる。無理もない、どうあっても鬼道は敵なのだ。以前痛めつけられた痛みを易々と忘れられるはずもない。鬼道の安堵の言葉は、彼らにとっては皮肉にしか聞こえなかった。それを理解していて鬼道は言葉を続ける。
「安心しろ、何もない」
「はあ? んなの信じられるか!」
鬼道の動揺すらも見せない態度にさらに腹が立ったのか、染岡が喧嘩腰に言う。だがしかし、鬼道はそれを完全に無視して花織の前に立った。花織の目が大きく見開かれる。鬼道の行動に花織は目に見えて動揺した。半歩下がって風丸の陰に花織は身を隠す。
「花織、俺と一緒に来い」
「なっ……!!」
どよどよと選手たちがざわめき始める。それは鬼道が花織のことを名で呼んだことに対してか、彼女に着いてくるように言ったためかは定かではなかった。
「わ、私は……」
花織はふるふると首を振ってまたさらに一歩後ずさった。彼女は風丸との約束を気にしているのだ。それでも鬼道はずいと花織に歩み寄る。そして花織の方へ静かに左手を伸ばした。しかしその鬼道の行く手を、彼のもう一人の大切な人が阻んだ。
「春奈ちゃん……」
鬼道の手を阻んだのは春奈だった。春奈は厳しい面持ちで花織へと伸ばされた鬼道の手を払って、花織の前に立ち塞がる。
「花織先輩に触らないで。貴方なんかに先輩が着いていくわけないでしょ」
強く厳しい声だった。兄に対する言葉とは思えない。だが花織の前に立っていた風丸がやんわりと春奈を押しのけて花織の背を押し、鬼道へと花織を差し出すようにする。ざわ、と円堂、豪炎寺以外の雷門中サッカー部メンバーが動揺の声を上げた。花織もそのうちの一人だった。
「風丸先輩!?」
「一郎太くん……!?」
辺りからも風丸の名を呼ぶ声がする。しかし風丸は周りの声は全く無視して真剣に鬼道を見据えている。花織の手を鬼道に握らせると低い声で鬼道に言う。
「鬼道、頼むぞ」
「ああ、任せてくれ」
鬼道は花織の右手を握り、歩き出す。花織はあまりの驚きに声が出なかった。半ば強引に鬼道に引きずられるといってもおかしくないような形で後ろを振り向けば、凛としていながらもどこか切なさを滲ませる風丸と目が合った。しかしそれでも、花織は鬼道の手を振り払うことはできず、ただただ彼に着いて行くしかなかった。