FF編 第五章
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「花織ってば、本当に大胆だよね。っていうか、半田も見惚れて固まってたし」
「う……、うるさいな」
どこかに走り去ってしまった風丸と花織を見つめて面白そうにマックスが言う。半田の頬は未だに赤かった。
「ふふん、まあこれで風丸も報われるよね」
「え……? それってどういう意味?」
傍で半田とマックスの会話を聞いていた土門が思わず口を挟む。意味がわからない、あのふたりは好き合って付き合い始めたのではないのだろうか。
「ああ、土門は知らないんだよね」
「転校生だからねー」
肩を竦めて土門が笑うと半田が続ける。
「あのふたりは誰が見ても普通のバカップルだもんなあ」
「普通じゃねえの?」
「まあね、人に言う話じゃないし、ボクは何も言わないけど」
「おいおい……、ここまで話しといてお預けかよ」
お預け、とは言いつつも土門は何となく花織、風丸、そして鬼道の関係を悟りつつあった。きっと花織はここへ転校した時、鬼道に振られてはいたが、ずっと想いは寄せ続けていたのだろう。そしてそんな花織に恋心を抱いた風丸がどうにかして花織と関係を結んだのか。
当てはめてしまえば風丸が報われるというマックスの言葉も、先日の花織の鬼道を想うような口調にも説明がつく。しかし、これが本当だとしたら中学生であるにもかかわらず、なんて複雑な恋愛事情を抱いているのだろうか。そして。
「……鬼道さんはいったい」
「ん? 何か言ったか?」
土門の漏らした声に半田が反応する。土門はいや、と手を振ると身体を秋葉名戸校舎の方へ向け返事を返す。
「……俺、ちょっとトイレ行ってくるわ。あのふたりが戻ってくるまで、まだ時間ありそうだしな」
そういって土門もふたりが消えた校舎へと駆ける。そして人目につかない場所を探すと携帯を取り出した。一応さっきの半田たちの話で花織の想いの推測はできたのだが、これは報告すべきことなのだろうか。
正直言って、鬼道の命令する偵察内容の内、花織のことは帝国の役には立たない。それでも心情的には過去に二人の恋を帝国学園サッカー部として応援していたのだし、鬼道の想いを推測すれば応援してやりたいと思う。
「一郎太くん……」
ふとその時、土門の耳に女の声が聞こえてきた。ひっそりと身を隠しながら声の主を探せば、風丸と花織が土門の隠れていた場の左斜め後ろにいた。
彼らの所からこちらは死角になっているらしい。ちらりと土門はメイド服姿の花織へと視線を向ける。頬を染めて風丸を見つめる彼女は確かに二人、いやそれ以上の男を虜にしても可笑しくないと思えた。
しかし、彼女の見つめる風丸は慈愛に満ちた瞳をしているにもかかわらず、どこか哀しさを感じさせる。それは恋人を見つめる瞳にしてはあまりにも切なく寂しげなものだった。本当に複雑すぎて土門には理解できない。
土門は携帯をサイレントモードにし、それを構える。帝国の、鬼道の為にふたりに干渉する気はないが、これくらいは許してほしい。そう思いながら土門は携帯カメラのシャッターを切った。