FF編 第四章
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風丸と花織は練習後、再び河川敷へと戻り、自主練習をしていた。練習終了から一時間がたった今、ようやく河川敷からは人影が消え始めていた。
学校内に練習をする場所のない雷門イレブンは未だに河川敷を練習所として使っているのだが、野生中に勝利してから様々な学校から偵察隊が雷門に派遣され、練習の一部始終を記録されているのだ。彼らの前に実力を晒し続けていれば、弱点などすぐに捕えられ対策を講じられてしまう。
そのために特に必殺技の練習は新たにマネージャーとなった理事長の娘、雷門夏未によって禁止されていた。円堂は必殺技の特訓をしたがっていたのだが、やはり場所が無ければどうしようもない。そんな感じで今日一日の練習が終わってしまったため、燃焼不足だった二人は自主練習をすることにしたのだった。
一対一で風丸とボールを競り合う。確かに花織は身のこなしも軽く、帝国学園出身ということもありボールコントロールも一般的な未経験者よりも長けてはいたが、日々練習を積んでいる風丸にはまだまだ及ばない。ボールを取ったと思えばすぐに取り返される、だがそれを何とか今まで培ってきた体力やスピードで補い、練習として成立している形になっていた。
「ありがとう」
暫く一対一やパス練習をこなした後、ふたりはコート沿いのベンチに腰掛け、休憩を取ることにした。近くの自販機でドリンクを買ってきた風丸が抱えた二つのペットボトルの内、一本を花織へと差し出す。そして彼も花織の隣へと腰掛けた。ふたりの間には以前、こうやって並んで掛けたときに空いていた距離は無かった。どちらともなく寄り添い、身体を揺らせば時々肩が触れ合う。
「一郎太くん、ごめんね。私じゃ練習相手にならないでしょう?」
申し訳なさそうに眉を寄せて花織が風丸の顔を覗き込む。風丸は首を振って花織の言葉に微笑みを返した。
「そんなわけないさ、十分練習になってるぜ?」
「……そう言ってくれるのは嬉しいけど、実際私と練習するよりも他のみんなと練習した方が身になるのは確かだし」
花織はペットボトルをギュッと握り、俯く。もっと風丸の役に立ちたかった。マネージャーとしてのサポートも大切なのは重々感じている。しかしもともと陸上部員として彼と共に走ることに喜びを感じていたのだ。だからこそ、この頃は特にこう思う、彼と同じフィールドに立ちたい、と。試合に参加したいとは言わない、むしろ試合の時は傍で彼の勇士を見ていたいと思う。しかし彼と共に走る喜びをたまには実感したいと思うのだ。
しかし今の自分の実力のレベルなら軽いウォーミングアップ程度にしかならない。花織にとって、それは彼の時間を無駄にしてしまっているようでどこか申し訳なくて仕方がないのだ。
「私……、せめてあともう少し、サッカーが上手かったらな」
「十分上手いよ、それに俺は花織と一緒に練習できて楽しいぜ」
風丸の楽しい、という言葉に花織が少し嬉しそうにはにかむ。彼の優しい言葉を聞くとすぐに不安な気持ちも、劣等感もどうでもいいと思えてしまう。
「一郎太くんがそう言ってくれるなら……、いいかな」
「ああ」
風丸がぽんぽんと花織の頭を軽く撫でる。花織は甘い胸の高鳴りを感じつつ、ようやく彼のくれたドリンクに口を付けた。渇いた喉にさっと冷たさが染み渡る。
「そう言えば円堂くん、必殺技に結構固執してたよね。一郎太くんは何か必殺技、作らないの?」
「そうだな、作ろうとは思うんだが……」
少し困ったように風丸は髪を揺らす。きっと何から考え、どうイメージをしてよいのかも分からないのだろう。しかも部での練習では必殺技の練習を禁止されている。自分でなんとなく練習することも、チームメイトの技を参考にすることもできない。しかし、風丸自身何か必殺技がほしいとは感じていた。自分の持ち前のスピードを生かした必殺技が。
花織は風丸の手にそっと自分の手を重ねる。風丸が目を見開いて花織の顔を見れば花織も柔らかい笑みを浮かべて風丸を見つめていた。
「ね、一緒に考えてみない? 私、一郎太くんの必殺技、見てみたいな」