FFI編 第十三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
イタリアはコトアールに大敗した。イナズマキャラバンが会場に到着したと同時に試合終了のホイッスルが鳴り響いた。その圧倒的な結果に彼らは驚くことになる。イナズマジャパンと鎬を削り、引き分けたオルフェウスはコトアール相手に一点も得点することができず、八点差で試合を終えていた。
その結果を見て円堂は先に帰ってくれ、チームメイトに言い残し、イタリア代表の控室に向かっていった。残された他のメンバーは試合結果についての憶測を交わし合いキャラバンに戻ろうとしているときのことだった。
「カオリ!」
スタジアムの外、大声で名前を呼ばれて花織はびくりと肩を震わせて振り返る。さらりと長い黒髪が揺れ、花織は髪を抑える。声の元を探して目を凝らせば、スカイブルーの髪の少年が突撃せん勢いで花織のところに飛び込んできた。
「ウィンディ……」
「試合、見に来てくれたのか⁉」
素早く花織に駆け寄ってきたウィンディは、花織の手を取って花織を嬉しそうに見つめた。
「うん、まあ……。決勝進出おめでとう、ウィンディ」
さすがにホイッスルが鳴った後に到着したのだから試合を見たとは言えないだろう。花織は困ったように笑い、ウィンディに握られた手をどうしたものかと見つめる。そんな二人の間に割り入ったのは先刻まで花織と話をしていた風丸だった。ムッとしたような表情でウィンディが握っている花織の手を取り、自分の手に握らせる。その行動にウィンディもまた顔を顰めた。
「何すんだよ、お前! カオリは今、俺と話してるんだ」
「前にも説明しただろ、花織は俺のガールフレンドだ。前々から思っていたがお前、花織に馴れ馴れしすぎるぞ」
いい加減にしろ、と言いたげに風丸がウィンディを睨みつける。ウィンディも不機嫌そうな表情で腕を組んだ。気まずい沈黙の中二人は睨み合う。二人がいがみ合う理由は分かっていても、花織は二人の間に分け入ることはできなかった。ただただこの空気をどうしたらよいものかと困った表情で風丸とウィンディを見比べる。
「風丸くん、花織さん」
そんな火花散らす渦中に、完全なる第三者の声が分け入った。三人ともその声の主に視線を向ける。彼女は風丸と花織を見つめてそこに立っていた。
「もう合宿所に帰るみたいだから、キャラバンに戻りましょう?」
久遠冬花、彼女は静かな声でそう言い、風丸と花織に促した。花織はじっと風丸と冬花を見つめる。風丸と花織の中は至って良好だ。だが先日抱えた蟠りはいまだ解消されたわけではない。
「ああ、ありがとう久遠」
ただ単純に礼を言い、笑う風丸の裏に本当は何か隠し事があるのかもしれない。冬花と風丸のやり取りを見つめながら花織は少しだけ目を細める。花織は先日のあの出来事や日々の小さな積み重ねからやはり冬花と風丸の間にある何かを疑わずにはいられなかった。もちろん態度にあからさまに出したり、冬花や風丸に対して何を言うわけでもないけれど、ただただ気にかかっていた。
「……」
花織は俯いて髪を耳に掛ける。こうして勝手にモヤモヤしていたって何も解決しない。花織は自分の手を握っている風丸の手を見つめる。そんなことは分かっているけれど、解決するすべはない。先日、彼らに話を誤魔化されたことが確実に尾を引いていた。
「花織、戻るぞ」
握った手を引いて風丸が言う。花織はハッとして面を上げた。いつの間にか冬花はこの場を去っていて、すぐにもキャラバンに戻らなければならないことを察した。花織は振り返って複雑そうな表情で立ち尽くすウィンディに小さく会釈をした。
「またね、ウィンディ……」
「……」
ひらりと小さく手を振って、花織は風丸と共にその場を去る。その場に残されたウィンディはさらりと靡く彼女の黒髪を見つめる。そしてぎゅうっとこぶしを握り締めた。
❀
今、たった今花織の表情が一瞬陰った。イナズマジャパンのマネージャーが現れてからだ。風丸が現れたその女と話をしている間、花織は俯き居心地の悪そうな表情で彼らから目を逸らした。またあの女だった、自分が花織をデートに誘いに行った時と同じ女。花織があの女を気にしているのは明らかなのに風丸はそれに気づく様子もない。
……何で、カオリにあんな顔をさせられる?
ウィンディが胸の奥に感じているのは強い憤りだった。強く右手でずきずきと痛む胸元を握りしめる。去っていくときの花織の繕った表情に感情の波が荒れ狂っていた。寂しげだった、苦しそうに風丸を見ていた、俺には分かる。
……やっぱりお前がカオリの傍にいる資格はない。
彼女にあんな顔をさせるような奴が、彼女の隣にいていいはずがない。