FFI編 第十一章
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円堂大介の最後のノートが発見された。幼いころの記憶を取り戻したという冬花に頼まれて、夏未と古株さんがずっとノートを探してくれていたらしい。
なんでも冬花の幼いころの記憶だけではノートの場所を確定しきれず、雷門理事長と相談し、彼女の所縁のある場所を探してやっと見つけられたものだそうだ。円堂はもう特訓ノートには頼らないと決めていたが、何でも、ノートの中身はこれまでの特訓ノートとは異なるらしい。
「というわけで、これがじいちゃんの最後のノートなんだ」
そういうわけでチーム全員がミーティングルームに集められてノートの中身を聞くこととなった。円堂が前に立ち、冬花と共にノートを覗き込む。
「冬花、見覚えはあるか?」
久遠監督が冬花に問いかける。監督の声に冬花はノートの文字を読んだ。ぐちゃぐちゃの、第三者が見ても全く読めない字。
「これは……、確かにパパが見ていたノート」
冬花が記憶を思い返すように呟く。その古ぼけたノートにどうやら見覚えがあるようだ。
「パパに勇気をくれたノート。パパはこのノートを何度も何度も、読み返していたわ。私が読めるのは、パパがそうやって声に出して読んでいてくれたおかげ」
冬花が凛とした表情で円堂を見つめる。
「私、パパがこのノートから、心の強さを貰えるって言ってたのを覚えてる」
冬花がそう言葉を続ける。冬花は円堂以外に唯一円堂の祖父、大介さんが残したノートを読むことのできる人物だ。彼女が文字を読めるのにはそういう事情があったわけだ。
「で、そのノートに何が書いてあるんだよ」
「裏ノートにあった究極奥義を超える超究極奥義とか」
染岡と立向居が声を上げる。もしそうならば、チームにとって大きな実力アップに繋がるかもしれない。決勝トーナメントに進むことが決まった今、少しでも力になるものは取り入れておきたい。
「それが……、今フユッペが言った通りなんだ」
「はあ? それじゃ意味が分かんねえぞ」
染岡が訳が分からないと言いたげに立ち上がる。円堂はまっすぐ前を見据えて言葉を繰り返した。
「だから、心」
チーム全員の頭の上に疑問符が浮かぶ。風丸も首を傾げて円堂を見つめた。さらりと彼の髪が揺れる。
「キャプテン、どういうことなの?」
吹雪がチームを代表して円堂に問いかけた。円堂はノートを高く掲げてチーム全員に聞こえるように声を張る。
「技じゃないんだ。ここに来るまでに目を通してみたけど、このノートには必殺技のアイディアは書いてないんだよ」
染岡が黙って席に着く。円堂は続けた。
「だけどこの中には俺たちがこれから強くなるためには必要なことが書いてある。読んでみるぞ」
冬花が席に着く。円堂はノートを広げて中を読み上げ始めた。
「技を生み出す根源は心の強さである。新たなる技を生み出すには新たなる心を身に着けること」
チーム全員が円堂の言葉に耳を傾ける。
「心のその一、どんな時もあきらめない『ガムシャラガッツ』 心のその二、どんなに強い敵も恐れない『タチムカウユウキ』」
まるで格言のようだ。そんなことを想いながら風丸は円堂の言葉を聞く。
「心のその三、大切なものを守りたいと思う『ソコナシノヤサシサ』」
どくん。風丸は自分の心の中の深いところで、何か響くような感覚を覚える。大切なものを守りたいと思う、ソコナシノヤサシサ……。
「 心のその四、仲間の全てを信じられる『ゼッタイテキシンライ』」
次の言葉も耳に入れずに風丸は思わず視線を動かす。自然と彼の視線は隣のテーブルの斜め前に座っている黒髪の少女へと向けられた。
「心のその五、どんな事態にも動じない『コオリノレイセイ』」
彼女は凛として円堂の話にじっと耳を傾けている。真剣にこの言葉を聞いているのだろう。だが風丸は次の言葉よりも、心のその三、その言葉が心の中でずっと響き続けている。
「心のその六、 隠された真実を見抜く力『ミヌクシンガン』」
じっと風丸が黒髪の少女、月島花織を見つめていると、風丸の視線に気が付いて彼女は何も言わずに微笑んだ。風丸も思わず表情が緩む。
「心のその七、人の過ちを赦す心の強さ『ユルスツヨサ』」
彼女はどんな時も風丸の傍にいた。
「心のその八、他人の喜びと悲しみを分かつ『ワカチアウナミダ』」
風丸のサッカーは常に彼女と共に在った。サッカーを始めた理由。エイリア学園と戦う理由。様々な理由の根源に彼女の姿があった。
「心のその九、高き志を持つ者だけが見る『ハテシナキユメ』」
今も同じ夢を見てる、共に世界の頂点を目指すために選手とマネージャーという立場は違えど同じ場所を目指して走っている。
「心のその十、自分の力を信じる力『マヨワナイジシン』」
強く優しい自分のパートナー。風丸はその瞳に映す少女を見て思う。いつだって、どんな時だって彼女を守りたい。共に泣き、共に笑い同じ道をこれからもずっと歩んでいきたいと。
「心のその十一、どん底でも消えることのない『センシノホコリ』」
ノートの言葉の意味は分からなかったが、風丸の心に響く言葉があったのは、確かだった。