FFI編 第九章
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次のアメリカ戦へ向けての準備が既に始まっている。次に対戦するアメリカ代表ユニコーンにはかつてのチームメイト一之瀬と土門が所属しているのだから気合が入るのも当たり前だといえるだろう。チーム皆、気合を入れて練習していた。
そんなイナズマジャパンに雪原のプリンス、吹雪士郎が帰ってきた。怪我をすっかり治して、かつてと変わらない微笑みでグラウンドに彼は現れた。反対に彼の代わりにチームを離脱することになったのは栗松で、これはアルゼンチン戦で負った怪我が原因であった。
「花織さん」
吹雪が彼女の名前を呼ぶ。早く話しかけたくて堪らなかった人。花織は吹雪を見つめて口元をほころばせた。
「士郎くん、おかえりなさい」
「ただいま。いつもメールありがとう、おかげでみんなやチームの事、日本にいてもちゃんとわかったよ」
花織は何でもないことのように首を振る。花織は吹雪と緑川にライオコット島に来てからのイナズマジャパンのことをずっと報告していた。それが、花織が吹雪と日本を発つ前に約束した事項だったからだ。
「君のメールは励みになったよ。だから予定よりも早く復帰できたと思うんだ」
にこりと微笑んで吹雪が花織の手をとる。そして少しだけ心配そうに眉間に皺を寄せた。
「花織さん、少し痩せた? 無理してない?」
「私は元気だよ。いつも通りだから」
そういって花織は微笑む。手元にある大量の手紙を見えないように隠した。彼女は今、選手宛の手紙の選り分けをしていたのだ。
敗れたもののずっと無失点を貫いていたアルゼンチンのゴールを破って、イナズマジャパンの実力はさらに認められた。ファンレターの数もすっかり多くなってこうやって事前に宛名によって分けなければ選手が目を通すのも大変なくらいだ。
花織は今、陰鬱な気持ちでいた。というのも風丸宛のファンレターを何通も目にしてしまったからだ。彼のプライバシーを侵害するようなことをする気はないからもちろん手紙の開封などはしていない。それでも封筒に貼られたハートマークのシールだったり、女の子らしい可愛い字で書かれた宛名だけで花織は少し複雑な気持ちになる。
それだけならまだしも葉書もあるのだ。それは目を通したくなくても内容が目に入ってしまう。応援しています、ならまだしも”大好きです”や”格好良くて素敵です”などという彼に対する言葉を見ているとどうしても妬かずにはいられない。
本当はこのファンレターを彼に渡さずに隠滅させてしまえればと思う。他の女の子の彼へ憧れる気持ちはもちろん理解できるが、それを彼に渡したくない。
私は心が狭いのだろうか。たかがファンレターくらいでこんな気持ちにさせられるなんて。
「花織さん」
思いつめるような表情をしている花織を吹雪が呼ぶ。花織は我に返って吹雪を見上げた。吹雪はふわりと微笑んで花織の頬に手を添える。
「……久しぶりだからもっと顔をよく見せて」
低い声で囁きながら吹雪が花織に顔を寄せる。花織は戸惑い目を丸くして頬を少しだけ赤く染めた。吹雪が真剣な顔で花織を覗き込む。このまま近づけばキスができてしまいそうだ。そんな距離がどうしても気恥ずかしくて花織は目を逸らしてしまう。吹雪はふふ、とそんな花織の反応を見て笑った。
「冗談だよ。……ふふっ、花織さん顔真っ赤」
「もう、士郎くん……」
からかうように笑った吹雪に花織は微苦笑を見せる。吹雪はそんな花織の髪を撫でて優しい声で囁いた。
「うん、君はそうやって笑顔の方がいいよ」