FFI編 第七章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「久しぶりに会っても君の心配は風丸ばっかりなんだね」
そう言ってパックに入ったオレンジジュースを吸い上げるのは、縞々のニット帽がトレードマークの松野空介ことマックス。そしてその横で割と真剣に話を聞いている特に特徴のない男子生徒は半田真一だ。二人は花織の学友あり雷門サッカー部の一員で、学校ではそれなりに仲良くしている人間だ。
今回、ライオコット島に行く前に少し会おうかということになり、放課後に顔を合わせることにした。校内の適当な場所で待ち合わせて、久しぶりに顔を合わせる。アジア予選突破のお祝いの言葉もそこそこに世間話をして、そして風丸との関係をマックスに尋ねられ花織は昨日のデートの時の出来事を彼らに話した。
「まあ、風丸も日本代表っていう立場だしねえ、そりゃファンもできるよ……。顔もカッコいいしさあ」
「……」
肩を竦めてマックスが呟く。花織はこの話題になってから黙り込んで二人の話を聞いている。マックスは表情を変えずに花織の不安を煽るような言葉を続ける。
「学校内でも聞くよ。そりゃ、うちのクラスの奴らは君たちの関係を知ってるから、言わないけどさ。でも特に下級生に人気高いみたいだよ風丸。ファンクラブもできたみたいだし?」
ファンクラブ。その言葉に花織は硬直する。この学校ですらそんなに風丸を慕う人間がいる。これが町内、都内と広がればどれだけの女子が風丸を想っていることだろうか。怖い、と花織は思った。自分が風丸に相応しいのかを疑っ てしまったから余計に。
「でも、風丸は花織が好きなわけだろ。ファンクラブとか風丸が好きな女の子が増えたって、ふたりには関係ないと思うけど」
半田がマックスの言葉で明らかにテンションが下がった花織の顔色を見ながらフォローを入れようとした。だがマックスはその努力を無にするような言葉を続ける。
「わかんないよ、風丸だって花織よりも好みの子が告白してきたらまんざらじゃないと思うけど」
僕、風丸の好みがどんなのか知らないけどさー。とジュースのストローの袋に息を吹き入れたり、戻したりと遊びながらマックスが言う。
「でも女の子が花織だけじゃないって気づいたら、風丸他の子に乗り換えちゃうかもね」
「マックス! いくらなんでも花織の前で」
「冗談だよ、すぐ君は本気にするんだから」
マックスの冗談に声を荒げた半田にどうどう、とマックスが声を掛ける。花織はまた複雑な気持ちがこみあげるのを堪えて立ち上がる。自分よりもいい子がいたら、彼はそっちにいってしまうだろうか。人の心は分からない。
自分だってあれだけ鬼道を想っていたのに、今はこんなにも風丸が好きなのだから。
「私、そろそろ合宿所に戻ろうかな。今日は二人に会えてよかった」
平静を装って花織が立ち上がる。それじゃあね、と別れもそこそこに花織は足早に二人の元を立ち去った。胸の中では込み上げる不安と、もっとしっかりしなければという思いがぐちゃぐちゃに渦巻いていた。
さて、残された二人はというと半田は、花織が去ってしまったのはお前のせいだと言わんばかりにマックスを睨みつける。
「なんであんなに花織が不安になること言ったんだよ」
むすっとした表情と低い声色、割と彼はマックスの先ほどの態度に怒っているようだ。マックスはこともなげに肩を竦めてオレンジジュースを啜る。
「だって心配するだけ無駄じゃん、あのふたり。知ってるだろ半田、風丸がどれだけ花織にべた惚れか。どうせ風丸の理想なんて花織そのものだよ」
「そうかもしれないけど……」
マックスが今度はジュースのストローで遊びながら呟く。学校内でだって花織に男子生徒が話しかければ面白くなさそうな顔をしている風丸だ。花織こそ人を惹く魅力を持った女子なのだから危なっかしくて仕方がない。そんな花織から風丸が目を放している暇なんてない。マックスはそれをわかっている。
「僕らがいくら大丈夫って声かけたって花織は納得しないよ。だって僕らは風丸じゃないもん。風丸の本心は分からないし、絶対に花織の中にモヤモヤが残る」
「……」
「でも花織の不安を煽れば、花織は絶対それを態度に出す。それを風丸が気づかないと思う?四六時中花織を見つめてる風丸がさ。百歩譲って風丸が気づかなくたって十中八九、鬼道が気づいて何らかのフォローを入れる」
何も考えていないような顔をして意外と彼はその後の展開まで読んでしまっている。半田はある意味感心してそしてふうとため息をついた。
「マックス、お前やっぱり要領いいな」
「半田とは違うからね」