FFI編 第五章
夢小説設定
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風丸の部屋を出た花織は一度自分の部屋に戻り、着替えると毎度のことながら地下の修練所へ向かった。もう少し風丸と一緒に過ごしたかった、というのが本音だが彼の邪魔になるようならば引き下がるのが一番だ。彼のために、余った時間は自分のレベルアップに使いたい。
地下修練所の電気を付ける。軽く準備運動をしてマシンの設定を始めた。ここへこんな時間に、それも入浴した後に来るのは自分が練習を積んでいることを人に知られたくないからだ。おそらく先日のミーティングでの態度からして鬼道は知っているのだろうが。
今は日本代表のために尽くすのがマネージャーとしての役割。今の花織の行動はそのあるべきマネージャーの姿から外れている。花織個人の練習はチームにとって何の役にも立たないからだ。本当ならば選手たちのために栄養バランスのとれた食事を考え、明日の練習に向けて準備をしているのが正しい。
ここで練習をするのは花織の我儘だ。風丸と一緒に走っていたい。その気持ちのために彼女は特訓を重ねる。
「よし」
彼女の目前の目標は風神の舞の習得。彼のための必殺技だが、自分も覚えたいと思った。彼の真似なのかもしれない。だが、花織と共に編み出したのだと彼自身がそう言ってくれたならば共に編み出したはずの花織ができないのはおかしい、と花織は思う。速くなりたい、もっと彼に近づきたい。誰よりも速い、彼の隣を走るために。
意志の強い瞳で花織は設定画面を見つめる。練習の時の彼女はいつもの柔和で優しい瞳とは一転して、むしろ強気で凛然としたものとなる。彼女の細い指が詳細項目を設定していく。やはり選択するのは最大レベル。深く深呼吸をしてスタートボタンを押した。
❀
――――危ないところだった。
「はあ、はあ……っ」
風丸は荒く息を吐きながら何とか部屋の鍵をかける。あの後すぐに彼女が立ち去ってくれなければ、もう少し遅かったら俺は花織に何をしていたかわからない。ベッドに腰を下ろしてズボンと下着を一緒に引き下げる。いきり立ち、固くなった彼の男根が室内の空気にさらされた。彼の中性的な顔には似合わない大きさにすでに成り果てている。こんなに、自制できないほど興奮したのは初めてだった。
「……花織」
痛いほどの刺激を感じるそれを己の手で握る。そして自分の手とは違う花織の柔らかく小さな白い手を想像しながら、自分の手を緩く上下させればそれだけで吐息の荒さが増す。
はっきりいって、彼が花織を想ってこの行為を行うこと自体は初めてではない。でもここまでの興奮と衝動に身を任せて耽ることは初めてであった。雑誌によって増えてしまった余計な知識と、先刻の花織の全てが頭の中でミックスされて風丸の空想を大きく膨らませる。
”……一郎太くん”
空想の中の花織が煽情的に風丸を見上げている。そんな彼女を抱き寄せて、深くキスをしてそれから……。その先を夢想すれば、自然と手の動きが早まる。
”ねえ……、気持ちいい?”
先ほどと寸分の狂いもない声色が彼の脳内に響く。僅かに響くいやらしい水音が彼の空想をより強いものとする。ああ、気持ちいいよ。そう返答しながら空想の中の花織の髪を撫でてやった。こうして空想の中でのように花織の全てを支配して、自分の指先一つで彼女を嬌声を上げさせることができたら。
「はあ……っ」
夢中になって彼女を思い浮かべる。花織の胸、自分とは違って柔らかなふくらみ。それが押し当てられた時の感覚を思い出す。柔らかくて例えるならばマシュマロだとかそんな月並みな表現しか出てこないが、まさにそんな感じだった。
あれに触れたら花織はどんな顔をするんだろうか。恥じらい、優しい柔らかなそして時には凛とした瞳には快楽と涙を浮かべて俺を求めてくれるだろうか。清楚な顔をあの雑誌に映っていた女たちみたいに乱れさせて、艶めかしく俺の名を呼ぶだろうか。そんなことを考えると背筋から込み上げるゾクゾクとする感覚が興奮を倍増させた。
それを扱きながら、彼女とぐちゃぐちゃに絡み合うところまで想像する。完全に彼女を組み敷いて自分の中に捕らえてしまったら、彼女は俺以外を見ないだろうか。
「花織……はあ、花織っ」
慕ってやまない彼女の名を呼び、はあはあと荒く息を吐きながらも彼の手は止まらない。好きだ、好きなんだ。お前の全部が欲しい。俺の手でめちゃくちゃにして、俺以外の手の届かない場所に閉じ込めてしまいたい。
”私は一郎太くんのものだよ”
脳内の中の花織が風丸だけに微笑みかけた。
「……っく」
どくんどくん、と手の中で何かがはじけた。手の中で熱いそれが迸る感覚。はあ 、はあ、と荒くだが落ち着いて呼吸を繰り返す。まだぼんやりとした頭で自らの手を見れば白くどろりとしたそれがべっとりと付着している。ああ……。風丸はようやく我を取り戻してティッシュで手を拭い、身の回りを整えた。はあ、と深くため息をつく。手を洗うため、彼は自室の鍵を開けて外へ出た。
流水と石鹸で手を洗いながら風丸ははっきりとし始めた頭で罪悪感を覚える。巷では賢者タイム、というのだろうか。この行為をしてしまった後、花織を空想の中で穢してしまう自分が、堪らなく嫌になる。でも花織がそれだけ魅力的で、彼にとって何より情欲をそそるものだから抑えることもできない。
花織の前では散々弱い部分を見せてしまったが、この色欲に塗れた自分は未だ隠し続けている。見せてしまったら間違いなく嫌われてしまうのではないかと考えているから、できるだけ聖人君子のように振舞っている。それ以前に風丸たちは中学生で情交するのは早いとヒロトの言葉通り風丸も思う。
花織のことは大切にしたい。その場の雰囲気に流されて彼女を穢してしまうのは風丸自身が何より許せない。
それでも、彼女は本当に清らかでありながら濃艶で。
彼はいったいどうやって今の関係を続ければよいのかを考える。きっと普通に接すればいいのだろうが、どうしても時々いやらしい考えが過ることを妨げることはできないでいた。