脅威の侵略者編 第十七章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昨日の出来事は鬼道と花織の中で秘密にしておくことになった。
理由は大したことを花織がヒロトと話したわけではないこと。花織がヒロトと密会していたこと、そしてエイリアの手の者に誘拐されかけた事をチームに打ち明けることによって混乱を招かないためだ。ただまたヒロトが花織の前に現れれば必ず鬼道には言うように、ということを約束をした。
翌日、エイリア学園ザ・カオスとの試合は波乱の展開となった。
序盤はカオスの圧倒的な力に押されっぱなしであったが、中盤から鬼道がカオスの中の綻びを見つけ、そこを付いて徐々に点差を詰める展開となった。結局は唐突に現れたジェネシスのキャプテンであるヒロトの登場により、試合は中断されてしまったのだが。
この試合ではアフロディが負傷してしまった。カオスのディフェンス技を破るため、諦めずに何度も何度もボールを持ち込もうとしていた。その諦めない姿には心打たれるものがあったが、そのせいでアフロディは病院に入院せねばならないほどの怪我を負った。
「離せ! 離せちゅーとるのがわからへんのか‼」
そして今は花織を含め、マネージャーたちは瞳子に殴り掛かろうとせんばかりに怒っているリカを引き留めている。
「あの監督、今日という今日は許さへん‼」
監督は、アフロディが傷つきボロボロになった際も試合を中断しようとは言わず、選手の交代を認めなかった。それがみすみすアフロディを怪我に追い込んだようにも見えた。花織は懸命にリカを止めようとする秋と春奈を見る。
「だからって、そんな喧嘩腰に突っ掛っていかなくても」
秋が叫んだ。でもやはり花織はリカの気持ちに共感できる。豪炎寺の一件で監督には自分には分からない考えがあるのかもと思ったが、今日の試合では監督の狙いは一切わからなかった。監督はやはり選手のことなどどうでもよいのではないだろうか。リカが懇願しても花織が頭を下げてもアフロディと交代しなかったのだ。花織も瞳子に対して確かにリカと変わらない怒りがある。
「リカちゃん、落ち着いて」
「花織! アンタもあの監督庇う気なん⁉ アンタだって許せへんやろ!」
リカの肩を叩いた花織にリカが食って掛かる。花織は頷き、落ち着いた声でリカに答えた。
「許せないよ。……だから、一緒に行こう」
「ちょっと、花織先輩ー!」
春奈が困った声を上げた。するとその時、誰⁉という瞳子の声が響いた。花織らはグラウンドの傍に生えている木の陰に隠れ、遠目に瞳子の様子を窺った。正直女子が5人もいたのでは隠れられてないと思うが……。
「……!」
花織は瞳子の前に歩いてきた少年にハッとする。ヒロトだ、グランの時のように髪を逆立てていない。いつも通りの髪を下ろしたヒロト。彼が瞳子の前で立ち止まる。ヒロト……、と彼の名前を瞳子が呼んだ。
「今ヒロトって……!」
「何やて⁉」
秋とリカが声を上げた。ここから監督とヒロトまで距離がある、だが何とか耳を澄ませば二人の声は聞こえなくもなかった。花織は耳を欹てる。ヒロトはジェネシスに選ばれたのは、俺だからなど、瞳子とよくわからない話をしている。ただ黙って話を聞く事しかできなかった。
「じゃあ、待ってるから。……姉さん」
「えっ‼」
マネージャーたちは驚愕の声を上げる。瞳子監督はヒロトの姉だというのだろうか。似ても似つかないが……、花織は衝撃の事実に言葉も出なかった。隣で様子を窺っているリカや秋らもそうらしい。エイリア学園との決戦を前に大きな疑惑が持ち上がった。
❀
ヒロトが瞳子監督のことを姉だと呼んだ。
その話は一瞬にしてチーム内に広がり、雷門の選手たちは瞳子に詰め寄った。こんな事実が出てきて疑われるのは一つ。監督はエイリア学園のスパイだったのではないかということだ。選手たちは監督の今までの不審な点を突きつけ、説明を求めた。監督は黙って何も言わないでいる。
「本当に、アイツの姉さんなんですか?」
円堂が皆を宥め、瞳子に確信を問うた。瞳子は息を付き、髪を掻き上げる。そしてじっと円堂を見つめて話し始めた。
「確かに私は貴方達に隠していることがある。……でも、もう少し待ってほしい。エイリア学園はただの宇宙人ではないわ」
ただの宇宙人ではない。その言葉に選手たちは動揺の声を上げた。花織も監督の言葉の意味を考える。どういうことだろうか、ただの宇宙人ではないというのは強大な力をもっているということだろうか……。
「皆には、私と一緒に富士山麓に行ってほしいの。……そこですべて話すわ」
「何故富士山麓なんですか⁉」
思いにもよらない場所に選手たちはどよめき、塔子が声を上げた。富士山麓、そういえば最近のニュースで富士山のある一部分だけ、衛星でも画像が確認できなくなった場所があると聞いた。もしかしてそこに?
「そこに宇宙人がいる」
鬼道が呟く。監督は鬼道の言葉に対し、肯定も否定もしなかったが言葉を続けた。
「出発は、明日の朝八時。それまでに準備を整えておいて」
それだけ言い残して監督はその場を立ち去った。選手たちは監督の反応に納得のいかなさを感じている。リカがこぶしを握り、ムッとした表情を浮かべている。彼女の隣に居る一之瀬も監督に批判的な目を向けていた。
「そんなの、信用できひん」
「結局監督は、俺たちの質問には何にも答えなかった」
花織は一之瀬を振り返る。一之瀬は暗い表情をして、静かに語り始めた。彼も花織と同じで恐らくもともと監督に不満を持っていた。だが一之瀬は今まで監督の真意を汲もうと何も大きく意見を言うことは無かった。
「俺だって今度の戦いには疑問が一杯あった。……それでもついてきたのは、エイリア学園の攻撃で傷ついた皆の想いに答えたかったからだ。今日のカオス戦だってアフロディが倒れている。でも監督にはみんなの想いなんて何にも届いていない」
苦しげに一之瀬が言葉を吐き出す。いい加減監督の態度には我慢ならないといわんばかりだ。それに続いて土門もいらだった様子で手を挙げる。
「俺も一之瀬と同じだぜ、もう我慢の限界だ。……鬼道はどうよ?」
ちらと土門が鬼道に意見を求めた。鬼道は毅然とした様子で土門を見上げる。
「どっちに転ぶにしても判断材料が少なすぎる」
「らしい答えだよ」
ふん、と土門はいつでも理性的な鬼道に対して笑った。鬼道だって監督の行動には疑問を感じているだろう、でもそれを現状で判断しないのが鬼道だ。そんな彼の意見はいつも頼もしいが、今の土門らにとってはいい子の答えであるように聞こえる。
「迷うことなんかない。エイリア学園のすべてが分かるんだぜ、行くしかないだろ!」
円堂の意見はこうだった。監督が勝つことに拘ってチームを引っ張ってきた理由が分かるのなら行くことを渋る理由はないだろう。ということだった。だがこの意見に対して鬼道が一晩悩むことを提案した。皆には考える時間が必要だと言った。
チームは揺れていた。行くと断言できる人間、監督に疑問を持つ人間、そして監督はとても信用ならない、チームを降りるという人間。皆それぞれに考えがある。答えは明日、明日になれば恐らくすべてに決着がつくだろう。