脅威の侵略者編 第十五章
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翌朝、花織はひとりで海を眺めていた。
もうすぐ沖縄を出発して、稲妻町に戻る。自分たちの暮らすあの町に帰ることになった。もう随分と戻っていなかったような気がする。お父さんとお母さんは元気だろうか、たまにメールをしているけれど、もう長い間会っていない。東京に戻ったら会えるだろうか。
久しぶりに晴れ晴れとした気持ちで海を見つめる。朝日に輝く海はとても綺麗だ。希望に満ちていて大丈夫だという気持ちでいっぱいになる。花織は携帯電話を取り出した。そして携帯の画面に残っていたメール作成画面を確認する。
昨日打ち込んだままになっていた彼へのメール。例え独りよがりでも自分の素直な気持ちを、彼に届けると決めた。自分の思うように自分が最善だと思う行動をとる。彼にとっても自分にとっても大切なチームの為に。
花織はメールの送信ボタンを押して微笑む。煌めく朝日は花織の新たな決心を祝福してくれているようだった。
「花織」
「鬼道さん」
花織を探しに来たらしい鬼道が花織を呼ぶ。その声に花織は振り返った。鬼道は花織の元まで歩み寄ると花織の肩を叩いた。
「お前の姿がなかったから探しに来た。朝食は摂ったのか?」
「いいえ、まだです。……海が綺麗だったから、つい」
くす、と花織が鬼道の心配に悪びれもせずに微笑む。鬼道は呆れたように苦笑したが、同時に内心は安堵を感じていた。ここの所、花織がこんなふうに明るく笑っている姿を見なかった。今の花織はここ最近の寂しげな様子を払って、どこかすっきりとしたように見える。
「そろそろ戻ります。……鬼道さんはもうご飯は食べました?」
「いや、まだだ。お前の姿が見えなかったからな」
鬼道は肩を竦める。鬼道は花織と春奈に対しては殊に過保護である。朝食の時、花織の姿が見えなかったから自分が朝食を食べるよりも先に花織を探しに来たのだ。特に花織は何かと危険な目に遭いがちだから目を離すことが不安なのだ。花織は鬼道のその答えに少し申し訳なさそうな顔をした。
「あ、ごめんなさい。じゃあ一緒に食べましょう、鬼道さん」
携帯電話をポケットに仕舞いこみ、鬼道の隣に立つ。どちらともなく歩き始めながら花織は鬼道に笑い掛けた。
「鬼道さん、この間大海原中の音村さんとお話していた、リズムサッカーについて教えて頂けませんか?」
「ああ、構わない」
鬼道は花織の表情を見ながら優しく微笑む。風丸がキャラバンを去る前のいつも通りの花織だ、と感じられた。そんな花織が無性に愛おしくて鬼道は何も言わずに花織の髪に手を伸ばす。
「き、鬼道さん、どうしたんですか?」
鬼道が髪を撫でれば花織が慌てた様に声を上げた。鬼道はフフ、と彼女の反応に笑みを零す。花織は笑っている方がいい、そしてこんなふうにコロコロ表情を変えているのも愛らしい。久々に見る表情に鬼道の胸はときめく。
「何でもないんだ」
鬼道は明るく笑う花織を見つめる。何度でも鬼道は思う、帝国に居たころからずっと変わらない気持ち。俺はこの女が好きだ、どうしようもなく好きだ。だからいつだって彼女の傍にいて、彼女を守る。……誰よりも絶対に。
――――俺なら、もうお前を泣かせたりしない。
この頃、ずっと悲しそうに笑う彼女を見ていて何度も言ってしまいそうになった言葉。弱りきっている彼女を揺さぶろうとする卑怯な言葉。それをもう告げる隙すらないことを鬼道はこの微笑をみて感じていた。