脅威の侵略者編 第十三章
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翌日、花織は吹雪の入院している病院へと向かっていた。足取りはしっかりとしている。瞳も何か決意を秘め、前を見据えていた。花織は鬼道のおかげで自分のやるべき事を見つけたのだ。いつか戻ってくる風丸のために自分ができることを。
今朝、栗松が置き手紙を残してキャラバンを去った。理由は風丸と同じ戦意の喪失が理由だった。この出来事で花織が考えていた決意は固まった。雷門のマネージャーとしてもう誰も、風丸のように一人で悩みを抱えさせはしないと。
彼が戻ってきてくれたときにまた誰かがいなくなるなんてことがないように。風丸が走る場所をちゃんと守っていられるように。
「監督……」
吹雪の病室の前で偶然にも瞳子と鉢合わせた。花織は一瞬監督から視線を逸らす。瞳子が先日彼女に向かって放った言葉を忘れはしていなかった。監督は先日と変わらず、クールに佇んでいる。花織は凛とした表情を瞳子に向けた。
「私、監督が先日言ったこと絶対に許せません」
まっすぐな瞳で花織は瞳子を見据える。瞳子も花織を見据えていたが何も言わなかった。花織は言葉をつづける。
「それでも私はチームに残ります。彼が戻ってくる場所を守るために、もう彼のような人を出さないように」
それが花織の決めた答えだ。花織は静かに瞳子に頭を下げる、そして静かに瞳子に頼んだ。
「だから彼が戻ってきたとき、彼がチームに加わることを許してください。……それだけです」
花織は頭を上げ、瞳子を避けて吹雪の病室へと入る。静かな病室、彼はまだベッドに横たわっているようだ。花織は吹雪の顔を見つめる。苦しげな彼の表情、彼が戻ってくるためにも花織は吹雪のことも守ると決めた。吹雪の心が壊れてしまわないように全力を尽くす。それが今の花織にできることに違いない。
花織は無意識に吹雪を風丸に重ねていた。思い悩む彼を救えなかったから、思い悩む吹雪を救おうとしている。
「花織……、さん」
花織は振り返った、人の気配に気が付いたのかうっすらと目を開けた吹雪が花織を呼ぶ。花織は吹雪のベッド脇のいすに腰掛けた。そして視線を合わせ、吹雪を見つめて花織は微笑む。瞳の奥に自分の恋人への揺るぎない想いを宿しながら。
「どうしたの? ……士郎くん」
彼女の胸に飾られた、彼からの贈り物が夕日を受けて煌めく。彼の戻る場所を守る、彼がここへ戻ってくるそのときまで。
これが花織の風丸に対する贖罪だ。
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