脅威の侵略者編 第十二章
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福岡市街地を通りぬけ、円堂たちは福岡県にある陽花戸中学にやってきた。陽花戸中学周辺の町は始めてみるのになぜか懐かしく、温かな景色が広がっていた。商店街などが立ち並んでいたからかもしれない。
雷門イレブンの中から円堂と夏未が代表して円堂大介の幼馴染だという円堂大介の裏ノートの持ち主、陽花戸中学の校長である伐天に会いに行った。そこで究極奥義が書かれた裏ノートを受け取ったらしい。
そして先刻、雷門中のメンバーに陽花戸中学のサッカー部メンバーが紹介された。その中でひとり目立ったのは一年生の立向居勇気だった。彼は円堂の大ファンらしく、円堂と握手をしたことに偉く感激していた。そして今、円堂に見せたいものがあるとグラウンドに出たところである。
立向居勇気はキーパーグローブを装着してゴール前についた。どうやら円堂に見てもらいたいものというのはキーパー技らしい。何でも彼はフットボールフロンティアでの円堂の活躍に憧れてミッドフィルダーからキーパーへと転向したのだという。
一体何を見せてくれるのだろう。雷門イレブンのメンバーは円堂を除いてはあまり興味が無さそうなふうに傍観していた。実際キーパー技と言ってもそれは円堂に勝るものではないと思っているからの反応だった。花織も風丸もただ何となく様子を窺っていた。
「それじゃあ、行くよ!」
キッカ―の一之瀬が立向居に声を掛ければ立向居は大きく深呼吸をして、お願いします! と叫んだ。頼りなさげに見えた幼い顔立ちがきりっとし、ゴールの前で構えを取る。一之瀬は軽く助走をつけ、立向居の正面を目掛けてボールを蹴った。立向居は空に向けて手を挙げる。その瞬間チーム内に衝撃が走った。
「ゴッドハンド‼」
思いにもよらない技名が叫ばれた。花織も風丸も円堂の隣で目を剥いた。確かに、間違いなくゴッドハンドだった。円堂大介が考案した、円堂守の代名詞とも呼べる技、ゴッドハンド。雷門のゴールを幾度となく守ってきた技だ。それをあの一年生がどうして……。
「ゴッドハンド……、ゴッドハンドだ‼」
円堂が感激した様に声を上げ、立向居の元へと走り出す。だが当の円堂以外の雷門イレブン、中でも特に古参の者は驚きを隠しきれなかった。土門や壁山などはぽかんと口を開けて未だ立向居を見つめている。風丸は口こそぽかんとあけてはいなかったが、目の前で起こった信じがたい光景に見るからに動揺していた。
「凄いよ立向居‼ お前やるじゃないか‼」
「ありがとうございます‼」
円堂が立向居の手を握ってブンブンと上下に振る。立向居も照れくさそうにだが嬉しそうにそれを受けた。
「でもどうやって……」
「アイツはゴッドハンドの映像を、何度も何度も見て死ぬほど特訓したんだ」
率直な疑問を風丸が思わず呟けば、陽花戸中学サッカー部のキャプテン戸田が誇らしげに言った。見ただけで出来てしまう。そこに多少なりと練習があったにしても、フットボールフロンティアが開催されてからまだそんなに時間は経っていない。この短い期間で、少なくとも円堂が血の滲むような特訓をして修得した技を会得してしまったというのか。
「凄い才能……」
花織が立向居を見て零した。風丸は才能、という言葉に思わず顔を背ける。才能、その言葉はナイフのように風丸の心を傷つけた。立向居勇気はもしかして、円堂よりもキーパーとしての才能があるのかもしれない。自分の才能を吹雪がずっと凌ぐように。自分の事ではないのに、自分の現実を突き付けられたような気がして風丸は酷く胸が苦しくなるのを感じた。