脅威の侵略者編 第八章
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結局、花織は鬼道と不動の間に掛けさせられ、真帝国学園へ向かうこととなった。その間、鬼道はずっと思いつめるような表情をしていて花織は心配になった。鬼道の気持ちはよくわかる、自分の仲間が影山の元に戻ったと聞かされて気が気でないのだろう。
花織だって雷門の選手たちに比べれば帝国の選手たちのことを知っているから、いったい誰がと気になった。彼らの中に決してそんな、影山の元へ下る様な誇りの無い人間はいなかったと思った。帝国の選手たちが影山の元へ戻った、その言葉が自分の隣に座る嫌な男の嘘であることを祈るばかりだった。
真帝国学園は愛媛のとある埠頭にあった。いや、あったというのが正しいのかは分からない。それは海の上に存在していたのだから。何と新帝国学園は巨大な潜水艦で、海の上に不気味に佇んでいた。
突然の潜水艦の登場に驚いていると潜水艦の入り口が開き、そこから影山が姿を現した。花織は思わず後ずさる。言いようのない冷酷な雰囲気、花織はやはりこの人を嫌悪していた。
「久しぶりだな円堂、そして鬼道」
「影山あああああああっ‼」
鬼道が叫ぶ。その声色には心からの怒りがあった。影山は私から逃げ出しさえしなければと鬼道の感情を逆撫でするようなことを口にする。そしてエイリア皇帝陛下から御力を借りていると発言した。とにかく影山はエイリア学園と関係があるらしい。
「さあ鬼道、昔の仲間に会わせてあげよう」
「待て影山‼」
潜水艦の奥へ消えて行った影山の後を鬼道が追う。その後を円堂も追いかけて行った。残されたチームメイト達は戸惑ったが、塔子がその後を追う姿勢を見せた。
「円堂が行くなら私も……!」
「お前野暮だなあ、感動の再会にゾロゾロ着いてってどうするんだよ? デリカシーがあるならここで待ってな」
だがその前に不動が立ち塞がり、塔子の行動を鼻で笑った。そして気が付いたように花織の方をちらりと見た。花織は瞬時に嫌なものを感じ取り、後ずさろうとしたがそれよりも早く不動の腕が伸びてくる。
「おい、逃げんじゃねえよ。お前はこっちに来い、鬼道クンの彼女のお前には特別に面白いもんをみせてやるよ」
「違う……っ、離して!」
再び掴まれた腕を引きはがそうと花織は身もがいた。鬼道のことが心配でないわけではない、だが鬼道のことに深入りするような関係では、最早ない。そもそもこの意味の分からない男と一緒に居たいとは思えなかった。こうして拘束されるだけでチームに迷惑が掛かる。
「花織から手を離せ。花織も関係ないだろ!」
それを割る様に風丸がすぐさま不動と花織の間に身体を入れようとする。そして不動を、明らかに怒りを露わにした目で見据えて怒鳴る。
「一郎太くん……」
花織が助けを乞うように風丸の方へ視線を向けた。不動はそんな二人を見て怪訝そうな顔をする。不動は風丸に対して花織の肩を抱き寄せ、見せつけるように身体を密着させる。
「はあ? 何、お前関係あんの? まあいいや、とりあえず鬼道クンがゾッコンのこの女には用があるんだよ」
「……っ‼」
もがいた花織が不動から離れ、不動が言い終わると同時に不動は空いているほうの手で風丸の肩を渾身の力で突き飛ばした。風丸は不意を突かれて数歩後ずさる。周囲を囲む雷門の選手たちが不安そうに彼らのやり取りを見つめていた。不動は厭味ったらしく笑いながら風丸を見る。
「情けねえな。好きな女にちょっかい掛けられたくらいでピーピー喚きやがって。……お前、そんなんじゃいつか捨てられるだろうよ」
実際のところ不動は、花織は鬼道ではなく、風丸の恋人であると気づいているようだ。それでも鬼道が花織を好いていることを確信しているから、今の様な態度を貫いている。不動は完全に風丸を見下したような口調で花織を引きずり、潜水艦の中へ進んでいく。
「無事に帰してやるから、大人しく待ってな。……ま、保証はしねえけど」
憎たらしい不動の言葉、だがそれがいとも簡単に風丸の心を抉る。"お前、そんなんじゃいつか捨てられるだろうよ"……今この状況に絶対に言われたくなかった言葉だ。花織を守り通すこともできなくて、何もできないまま他の人間に先を行かれる。さまざまな要因から来る風丸の不安を一瞬で纏め上げた言葉であった。