脅威の侵略者編 第六章
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あのあと、花織が急いでグラウンドに降りるとすでにフィールドにはエイリア学園ジェミニストームの姿があった。レーゼは学習能力がない、と雷門イレブンを罵ったがそれについては実力を示せばよいだろう。
緊急テレビ中継も行われる中、試合が今始まろうとしていた。だが、ひとつまた試合開始前に問題が発生していた。
「吹雪くん、貴方センターバックに入って」
円堂や栗松らが吹雪にガンガン攻めて点を取ってほしいと声を掛けていた時だった。監督はさらりと円堂たちに背を向けたまま、指示を出す。円堂らは吃驚の声を上げた。吹雪のエターナルブリザードで得点したいと考えていたからだ。
「ディフェンスに専念するのよ。絶対に前線へ上がらないで、エターナルブリザードは封印してもらいます」
「はい」
吹雪は監督の指示に素直に頷いた。しかし周囲の反応はそうではない、皆納得がいかないようだった。誰もが不安そうに監督を見る。
「何故です⁉ 吹雪のスピードを生かした攻撃、それが奴らへの対抗策でしょう⁉」
「意見は聞いてないわ」
珍しく寛容な一之瀬が監督に対して声を荒げた。だが監督はこれをさらりと流して背を向けてしまう。またきちんと説明はしないようだ。それに対してチームは不満が募っていく。花織も監督をじっとりとした目で睨んだ。
だが、衝撃はそれだけに止まらない。
「月島さん、貴女はサイドバックよ。準備はできてるのかしら?」
唐突に名前を呼ばれて、風丸の隣に立っていた花織はびくりと肩を揺らした。風丸もハッとした様子で監督を見る。他数名、そんな視線を送る者もいたが、監督は動じずに言葉を紡いだ。
「ちゃんとスパイクも用意してるわね、貴女もディフェンスに専念するのよ」
「監督……! でも、花織は」
花織よりも先に風丸が声を荒げた。その表情にはやはり花織を出場させるのは反対だ、といいたげな雰囲気がある。それもそうだ、何せ花織を抜いても雷門イレブンの人数は足りているのだから。わざわざマネージャーの花織が危険を冒して出る必要はない。
「意見は聞いてないわ、何度も言わせないで」
風丸の言葉を遮り、瞳子は去る。チームには動揺が走っていた。吹雪のディフェンス、風丸らが常々反対する花織の試合への参加。
花織はぎゅうと拳を握った。そして無言で羽織っていたジャージを脱ぐ。
「花織!」
「監督が出ろというなら私は出る。……それに私も練習してたから。だから大丈夫だよ」
花織は強気に笑って見せる。肩ほどまでの髪を左手首に巻いていたゴムで結い上げた。ジャージをベンチに置き、風丸の元へ戻る。この姿で彼と面と向かって対面するのはきっと初めてだ。花織はじっと風丸を見つめる。
「絶対に戦力になるから」
「……」
風丸はまだ不服そうだった。花織から目を逸らし、賛成できないと言いたげな表情をするが監督の命ということもあり、何も言えないようだ。女子だから、という言葉も使えない。何せ塔子が選手として出場している。完全に手詰まりだった。
「監督の作戦に、従おう!」
それに留めを指すように円堂がパンと手を叩く。それは主に吹雪のディフェンス参加に向けられたものであったが、花織の参加に対しても向けられたものだ。それをさらに夏未が根拠づけていく。
「この試合は白恋中を守るためだけじゃない。全人類の命運がかかった大事な一戦よ」
「ああ、監督もそれを承知の上で吹雪をディフェンダーに、花織を選手として起用したはずだ。勝つために……!」
さらには鬼道が監督の言葉を援護する。もう何も言えなかった、風丸は黙って花織に視線を向ける。いつにもなく真剣な表情。だが花織がそれ以上に緊張していることに気が付いた。風丸はハッとする、花織の出場に不安を覚えているのは自分だけじゃない。彼女自身こそが誰よりも不安なはずだ。
「一郎太くん……」
そう思うと無意識のうちに花織の手を取っていた。その手が震えているのはきっと寒さのせいだけではない。彼女の揺れる瞳が自分を捕える。大丈夫だ、絶対に……。花織に怪我をさせるようなことは俺がさせないから。
「よおーし‼ 絶対に奴らに勝って、半田たちに勝利の報告を届けるんだ‼」
円堂が差し出した手を中心に皆が手を重ね、円陣を組んでゆく。風丸は花織の手を引いて円陣に参加した。この試合、どんなことがあっても花織だけは必ず。そんな思いを風丸は抱いていた。