FF編 第一章
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花織の話は涙交じりで何度も中断しかけた。しかし、半田もマックスも黙って聞いていてくれた。最後まで花織が話し終えると半田が優しく花織の背を撫でた。
「だから私は風丸くんの気持ちに答えられなかった……。それに、風丸くんもいつか私を嫌いになるんじゃないかって思うと、好きだと思ってしまうのも怖くて……」
今は確かに、風丸は自分のことを好いてくれるかもしれない。だがいつか、鬼道のように酷く拒絶されてしまったら?そのことを考えるだけで花織の心は酷く苦しくなった。それにどう足掻いても鬼道への好意は未だ自分の中にある。何かにつけてやはり鬼道がここにいたらどうだろうと思ってしまうのだ。
「だから髪を切ったの……。風丸くんとお揃いになる髪を……。切ってしまえばいいと思った、そうすれば……。彼のこと踏ん切りがつくと思ってた」
「花織……、もういい」
半田が花織の言葉を止めようと声を掛ける。
「でもダメだった……! 彼の事ますます意識して……、罪悪感で潰れそうで」
「もういいから!!」
半田が声を張り上げて叫んだ。再び部室に沈黙が走る。そして無言だったマックスが口を開いた。
「……今は思いっきり泣いていいと思うよ」
その言葉に花織は嗚咽を漏らして泣いた。涙で顔がぐちゃぐちゃになるのもお構いなしだった。ひとしきり泣いた後、まだ泣きじゃくっている花織へマックスが声を掛けた。
「もう少し落ち着くまで……と。言いたいところだけど、さすがにもう行かないと。花織、立てる?」
マックスが花織を心配そうに覗き込んだ。花織は頷いて立ち上がろうとしたが、ずきりと足が痛み、立ち上がることができなかった。思わずしゃがみ込んで足首を押さえる。そういえば、先輩に蹴られたときに酷く足が痛んだことを思いだした。
「仕方ないなぁ……。半田、運んでやりなよ」
「俺が!?」
多少狼狽しながら半田がマックスを見た。マックスは当たり前だろ、と言いたげに立ち上がり、花織の傍に身をかがめている半田を見下ろした。
「君、ちゃんと授業に遅れた理由、先生に言える?説明できないでしょ?だからだよ」
「……分かった」
マックスの言葉に頬を膨らませた半田は花織の前で片膝を地に着け、花織に背を向けた。
「乗れよ」
「でも、悪いよ。そんな、私重いのに」
ぐずぐずと涙を拭いながら花織は反論する。そんな花織をじれったく思ったのか、マックスが半田の方へ花織の背を押した。バランスを崩した花織は小さく悲鳴を上げて、半田の背中に抱きつくような形になる。
花織が動揺している内に今は半田に任せなよ、とマックスは花織の頭をぽんぽんと軽く撫で一足先に部室から出て行った。どうしてか寂しげに微笑んだマックスの言葉はどこか花織の印象に残った。残された半田がよし、と花織をおぶって立ち上がる。
「俺たちも行こうか」
「うん……。ごめんね、重いでしょ?」
そんなことない、半田はそう言って笑う。花織は落ちないようにぎゅうっと半田に抱きついた。いや、理由はそれだけではないかもしれない。風丸のことが好きだと気づいた直後に不謹慎だが、ただ人の温もりに触れたかった。
「半田くん。……ありがとう」
陽の光が眩しくて花織は半田の背中に額をこつんとつけた。ああ、と慌てた様子の半田の声が無性に可笑しくて花織はさらに半田にしがみ付く。ちらりと見上げた半田の耳は赤かった。しかしその様子を教室から風丸が見ていたことに、二人は全く気が付かなかった。