脅威の侵略者編 第五章
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翌日、新しくキャラバンに加入した吹雪士郎を加えてチーム戦を行うことになった。Aチームを鬼道、一之瀬、栗松、目金そして吹雪を加えたチーム。Bチームを風丸、染岡、土門、塔子、壁山の五人のチームだ。
Aチームにはキーパーとして円堂、Bチームには花織がキーパーの役目を果たすことになった。花織にはキーパーをやった経験など全くないのだが、がら空きのゴールにシュートを打つのと、キーパー代りの誰かがいるゴールにシュートを打つのでは全然難しさが違うだろう。という彼女自身の提案からこの案が実施されたのだった。
怖かったら避けてもいい。と鬼道からも、また円堂らからも言われている。少なくとも中学生の中では日本トップレベルのシュートが飛んでくるのだから無理もない話だ。
だが、花織にそんな心配を掛けるレベルの話ではなかった。彼女のところにも円堂のところにもシュートは飛んでこなかったからだ。シュートを打つような場面になる前に練習は中断されてしまった。
「お前なあ! 一之瀬も鬼道もこっちに回せって声掛けてんだろうが‼」
染岡が苛立った様子で怒鳴り散らす。練習が中断された原因は新しく加入した吹雪士郎の為であった。吹雪は風丸からもボールを奪い、人一倍能力が突出しているように花織の目からも見えていた。だが、彼は誰にもパスを回さなかったのだ。それこそ染岡の言うとおり、鬼道や一之瀬が彼に声を掛けても見向きもせずに自分で突っ込んでいく。それに腹を立てた染岡が練習を止め、現在に至る。
「え? でも僕、いつもこうしてたし」
「白恋じゃそうでもウチじゃそんなの通用しねえんだよ! お前は雷門イレブンに入ったんだ、俺たちのやり方に合わせろ‼」
一見、染岡の言うことは横暴なようだが一理ある。サッカーはチームスポーツだ。誰かが和を乱せば一瞬でチームは瓦解する。普通なら新参者の吹雪が、雷門イレブンに合わせるべきなのだろう。だが吹雪は不服そうだった。
「そんなこと急に言われても……。そういう汗臭いの疲れるなあ」
「誰が臭いって⁉ 誰が!」
花織はため息をついて肩を竦める。染岡と吹雪はもしかして相性が悪いのだろうか、そんなふうに神経を逆なでするようなことを言わなければいいのに。
染岡は憎々しげに吹雪を睨み付け、吐き捨てるように言う。
「どんなにスピードがあろうとこんな自分勝手な奴と一緒にやれるか‼ ……無理なんだよっ、コイツに豪炎寺の代わりなんて!」
染岡もきっと意地になっているのだ。雷門のエースストライカーは豪炎寺修也、それは染岡の中で絶対に揺らがせたくないこと。もしここで吹雪を認めてしまうようなことがあればきっと豪炎寺の居場所がなくなる。……そんなことを思っているのかもしれない。
「それはどうかな」
悪くなる空気の中に落ち着きを払った声が割り入った。花織はハッとしてそちらへ意識を向ける。彼は凛とした表情を浮かべ、チームメイトを見据えていた。
「俺は吹雪に合わせてみる」
そうはっきり宣言したのは風丸だった。花織はさらりと髪を揺らして彼の方へと向き直った。彼の様子がいつもと違う、いつもならもっと明るく頼もしいはずなのに。……今日の彼はどこか鬱々としているように見えた。
「はあ? お前何言って……っ」
そう言い掛けた染岡も口を噤む。どうやら風丸の様子がいつもと違うことに彼も気が付いたらしい。風丸は険しい表情をして少し俯き気味に言葉を続けた。
「俺にも吹雪のあのスピードが必要なんだ。エイリア学園からボールを奪うのは、あのスピードがなくちゃダメなんだ。……そうでなきゃ、また前の繰り返しだ」
「……!」
どきん、と花織の心臓が大きく鼓動を打った。それはときめきとは異なるもので、何となく不安を煽るような拍動であった。風丸の様子がどうにもおかしい。……もしかして、責任を感じているのだろうか。
花織は彼の表情から様々な推論を立てる。いつも彼の表情を観察している花織にだからこそできることだ。彼はもしかして自分がエイリア学園からボールを取らなければという責任を重く感じているのではないだろうか。彼一人が気に病むことではないのに……、彼は責任感が強いから。
「だったら、風になればいいんだよ」
ずんと空気が重くなったかのように思われた刹那、吹雪があっけらかんとした声でそう提案した。雷門イレブンは吹雪の方に視線を送る。吹雪はいつものように微笑を浮かべて、どことなく自信満々に皆に言った。
「おいで。見せてあげるから」