脅威の侵略者編 第二章
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イナズマキャラバンに乗り込み、東京から出発して約五時間。一行はようやく、エイリア学園の襲撃に遭い、総理が誘拐された現場である巨鹿像のある奈良鹿公園へとたどり着いていた。初めはもちろん警察関係者が周囲を囲って現場検証などを行っているため、中へ入れてもらうことはできなかったが理事長の力にて何とかすぐに公園内へと入ることができた。
「エイリア学園の手がかりって、具体的に何を探せばいいんでしょう?」
花織は探索をしながら、共に行動をしている鬼道に問いかけた。二人はキャラバン内からずっと二人きりで話し込んでいて、そのまま持続して手がかりを一緒に探そうということになったのだ。
「さあな……。だが、何かあるはずだ」
悩むような表情をしている花織に鬼道が言う。正直に言って何かわからないものを探すというのはとても難しいことだった。鬼道自身もあまり見つかることに期待はしていないような口ぶりをしている様に感じられる。
「だが今日は、巨鹿像完成の記者会見だった。きっと多くの観覧客がいたはずだろう、恐らくそちらの方が、手がかりが見つかるような気がするんだがな」
「でもせっかく公園内に入れたんですから、探すしかないですよね……」
うーん、と難しそうな顔をして花織が首を傾げる。鬼道はそんな花織の表情をじっと見つめていた、そしてふと全く現状に関係の無い言葉を漏らす。
「お前、俺と二人で回ってよかったのか?」
「え?」
花織が唐突な問いかけに首を傾げた。単純に疑問そうに花織はどうしてですか、と鬼道に問う。花織にとっては別に良いも悪いもなかった。ただ単純に鬼道と話していたからそのまま一緒に探索することになった。それ以外に理由はない。強いて言うならば、鬼道の話が楽しいから……、だからだろうか?
「いや、二人きりではまるでデートのようだと思ってな」
「……!」
柄にもない鬼道の言葉に花織が大きく目を見開く。桜の咲き乱れる美しい公園、確かにデートスポットとしては相応しいような気もする。恋人同士でこんな場所をのんびり散歩するのはとても楽しいことだろう。だが、その発言は鬼道のキャラではない。
「どうしたんですか、急に」
「いや……、特に他意はない。ただそう思っただけだ」
鬼道は、花織と妹である春奈の事にはとても敏感だ。だからこそ、この頃になって花織の自分に対する態度の微妙な違いや彼女の心境の変化に徐々に気づき始めていた。もちろん確信には至っていないが、やはり何か気になることがあるようだ。今の言葉も、彼女の気持ちを探ろうと思い掛けたものだった。だが、花織は鬼道の気持ちにはちっとも気が付いていないようだ。
「ふふ、変な鬼道さん。……でもこんなところでデートするんだったら、のんびりサッカーやバドミントンができそうですね。初めてデートするならこんな綺麗な場所が良いです」
「……? お前、風丸とふたりで出かけたことは無いのか?」
微笑みながら花織が言った言葉に、鬼道は怪訝そうな顔をして眉間に皺を寄せる。聞いてはいけない部類の質問だとはもちろんわかっていたが、思わず鬼道は花織に問い掛けてしまった。花織は微苦笑を漏らしながら、風にそよぐ髪を押さえた。
「……実を言うと、彼とデートしたことなかったんです。ずっとサッカー部の練習がありましたし、それにお休みの日は一緒に河川敷でサッカーの練習してばっかりで……。でもそれって、デートじゃないでしょう?」
同意を求めるように花織が鬼道に笑い掛けた。だが鬼道は眉間に皺を寄せたままだ。花織の言葉に何と答えて良いのかわからないのだ。
「デートは一般的には男女が一定時間共に外出することを指す。お前がサッカーの練習をデートだと思うのならば、立派なデートだったんだろう」
「……」
鬼道の返事に花織は何も言葉を返さなかった。鬼道はフッと花織の表情を見て、笑みをこぼす。彼はもちろん、女にとってその返事が不服だということは分かっていた。
「お前が望むなら、俺がどこにでも連れていってやる。……エイリア学園を倒したら、な」
「……鬼道さん」
花織は一瞬、ハッとしたように肩を揺らしたがすぐに微笑を浮かべて鬼道を見た。鬼道は花織に微笑みかけながらもやはり彼女が自分に対して向ける表情の変化を感じ取る。何か、花織は俺に対して言いたいことがあるようだ。……その内容は簡単に推測できるが、それを問うほどの覚悟はまだなかった。
「ありがとうございます、鬼道さん……。でも、私……」
花織が何らかを述べようとした途端の事だった。見つけたッスウウウウ‼!という大声が2人の会話を強制的に終了させる。花織も鬼道も振り返った、どうやら壁山が何かを見つけて大声を上げたらしい。
「行くぞ、花織」
「はい」
壁山が声を上げた場所へ皆、集まり始めていた。鬼道と花織もすぐさまその方向に向かって駆け出す。鬼道は、この時ほど壁山の悲鳴に感謝したことは無かった。