脅威の侵略者編 第一章
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酷く一方的なワンサイドゲームだった。
宇宙人の力の前に、雷門イレブンは廃部を賭けた帝国学園戦以来の大敗北を喫した。宇宙人は人間の次元を遥か超えた動きをした、パワー、スピード、テクニック。何もかもが雷門の上を行った。
後半から豪炎寺が加わったにもかかわらず、状況は何も変わらなかった。ドラゴントルネードもイナズマブレイクも……、円堂らの必殺技は何一つ通用しなかった。試合は二十対ゼロという恐るべき点差で幕を閉じた。
そして、それだけの力差のある相手と試合をして選手たちが無事で済むわけはなかった。全員がそのまま救急車で病院に送られた。中でも怪我の酷い影野、少林、宍戸、そして半田とマックスはそのまま入院が決まった。
傘美野中学の学校舎も守ることはできなかった。エイリア学園との試合を終え、雷門はズタボロだった。もう何も余力は残されていないかのように思われていただろう。
翌日、残された雷門イレブンは雷門中学に集められた。響木監督と雷門中学校長に連れられ、一行が向かったのはイナビカリ修練場の入り口だった。そこからさらに地下に降りた場所、大きなモニターが設置された大きな秘密基地のような部屋へと彼らは通される。そこでは夏未の父、雷門総一郎が円堂らを待ち構えていた。
「もはや一刻の猶予もない。奴らはこれからも破壊活動を続けることだろう。なんとしても欠けたイレブンを集め、地上最強のサッカーチームを集めねばならんのだ」
「地上最強のサッカーチーム……?」
突然に告げられた言葉に、ざわざわと部員らが声を上げる。理事長の話はすなわちエイリア学園を倒すための精鋭を募る……、という話だろうか。豪炎寺が歩み出て、円堂の肩を叩いた。彼の、いや、彼らの言いたいことは一つだけだ。
「そして、あのエイリア学園を倒すためには……」
「理事長、俺たちにやらせてください‼」
円堂が仲間たちを振り返る。寸刻も待たず、チームメイトは円堂に頷き返した。
「俺たちがやります‼」
その答えに理事長らは満足だったようだ、何も言わずに円堂らを見ている。もちろん花織もやる気になった。彼らが地上最強のチームになるのなら、そのためには自分たちマネージャーがサポートしてより良い練習環境を作らねばならない。彼らが地上最強になるために、あのエイリア学園を倒すために、できることをしたいと意気込む。
「みんな、やろう! 日本一の次は宇宙一だ‼」
「おう‼」
チーム全員が一丸となって声を上げる。もちろん花織たちマネージャー陣も声を合わせた。入院している半田たちの仇を取るためにもがんばらねばならない。チームの士気はますます上がる。
「準備ができ次第出発だ。頼んだぞ、円堂」
「え?」
急に選手たちは不思議そうな顔をして監督を見る。頼んだぞ、なんてまるで監督が一緒に行かないと言っているようなものだ。だが、監督なしで旅に出られるだろうか?花織が顔を顰めた。同様に不安を感じたのか、風丸が響木に問う。
「頼んだぞって……、監督は?」
「俺は行かん」
「響木監督には私から頼んでいることがあるんだ、これもエイリア学園を倒すために必要な事でな」
唐突なカミングアウトに部内で不安の声が上がった。何せ、全国を旅するのだろう。運転手が誰かしらいるとはいえ、気心知れた監督がいないとなると話が変わる。身近に信頼できる大人がいないというのは、中学生にとっては過酷な条件だと思われる。泣きつく壁山や栗松に苦笑を漏らしながら心配するなと響木が言ったその時だった。
ポンとエレベーターの到着音が響く。花織はその音に振り返った。この秘密基地と地上を繋ぐ唯一のエレベーターには一人の人物が乗っていた。見覚えの無い、スレンダーな女性だ。
「紹介しよう、新監督の吉良瞳子くんだ」
驚きの声が花織の周囲で挙がる。花織も驚き、新監督の瞳子を凝視した。長い黒髪で細身の綺麗な女性。年は23~25くらいだろうか、明らかに美人だと呼ばれる部類だろう。瞳子は黒髪を右手で掻き上げると無表情に言葉を放つ。
「ちょっとがっかりですね、理事長。監督がいないと何もできないお子様の集まりだったとは思いませんでした。本当にこの子たちに地球の未来が任せられるんですか? 彼らは一度、エイリア学園に負けているんですよ!」
冷たい表情に馬鹿にするような口調と言葉をまき散らしながら瞳子がモニターの前へと歩み出る。失礼な人、それが花織にとっての監督の第一印象だった。
出会ったばかりの人にどうしてそんなふうに言われなければならないのだろう。かつて冬海に告げられた言葉と同じくらいには腹が立った。ムッと花織が顔を顰める、だがそれは花織だけではなかったようだ。
「だから勝つんです!」
理事長に抗議を始めようとした瞳子に、円堂が叫ぶ。
「一度負けたことは次の勝利に繋がるんです!」
頼もしい言葉だ、チーム全員がそれに同調するように頷いた。瞳子は振り返りその様子を見る、皆その言葉を信じて疑わないというような表情をしていた。選手にもマネージャーにも誰一人エイリア学園に一度負けたぐらいで諦めるような人間はいない。
「頼もしいわね、でも私のサッカーは今までとは違うわよ」
皮肉のような言葉を瞳子が告げる。そして長い黒髪を翻しながら、円堂たちを振り返り勝気な笑みを浮かべた。
「覚悟しておいて」