脅威の侵略者編 第一章
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事の次第は次のような事らしい。
突如現れた宇宙人が勝負を挑んできた。理由はわからないがサッカーで。そしてその勝負を受けた伝説のイナズマイレブンのOB達は全く歯が立たずにやられてしまったと。その敗北の結果により校舎が破壊されたのだと。
「……」
信じられない……、花織は顔を強張らせた。破壊された校舎を見ても、傷ついたOBの選手たちを見ても、宇宙人が攻めてきたなんて俄かに信じられない。宇宙人が攻めてくる?サッカーで?意味が分からないことばかりだ。花織は得体のしれない恐怖に胸の中では怯えていた。
「花織」
「鬼道さん……」
マントをはためかせながら、鬼道が花織の傍へと歩み寄った。花織は鬼道を何とも言えぬ表情で見つめる。彼女は不安を表に出さない様にしているようだが、それが余計に彼女の顔を強張らせている。鬼道や他数名はそれを敏感に察知していた。花織に関しての観察眼が優れている人間がこのチームには数名いるのだ。
鬼道有人は元々帝国学園のキャプテンだった。
実を言うと、この雷門中のメンバーよりもこの鬼道有人は月島花織と一年間付き合いが長い。花織は元々帝国から転校してきたからだ。一年前の春、二人は帝国学園で出会った。彼は、花織の初恋の人であった。
花織はずっと彼に焦がれていた。今でこそ風丸一郎太に想いを寄せている花織だが、数か月前までは鬼道有人に想いを注ぎ、すべてをこなしてきた。一度は酷く振られたものの、それでも鬼道が好きだった。そして鬼道もまた、今もなお花織に想いを寄せている。
鬼道は花織が陸上のトラックを駆ける姿に一目惚れをしたのだ。彼も花織と同じように彼女に対する想いを抱いていた。だがしかしそれは帝国学園元総帥、影山によって抑圧され、口にすることができないでいたのだ。現在、ようやく影山の支配下から逃れ、花織への想いを口にすることができるようになっている。
色々なことがあったが現在、結果として2人は友人となり、関係を築いている。花織はともかく、鬼道が腹の底でいったい何を思っているのか、どうかは全く持って定かではないが。
「顔色が悪い、大丈夫か?」
「ええ……、大丈夫です。……鬼道さん、ありえるんでしょうか。宇宙人がサッカーで襲撃してくるなんて」
「分からない。だが、OBたちが嘘をついているとは思えない。……この学校のありさまを見れば信じないわけにはいかないだろう」
いつもは冷静な鬼道も予想もできないこの事態に困惑の色を示していた。ゴーグルをしているのでよくわからないが、彼の表情もいつになく動揺している様に花織は思える。花織は鬼道の言葉に俯いた。花織は鬼道の言葉を信頼している、鬼道が肯定するのならばきっとそうなのだろう。
「花織、……?」
先ほどよりも不安を色濃く見せる花織の肩を心配そうに支えた鬼道が、何かの違和感を覚え、あたりを見回した。その違和感は彼以外にも数名気が付いているようで、頻りにあたりを見回すものは他にもいるようだ。花織は半ば見えない何かに怯えながら辺りを見回す。すると、微かに風を切るような音が耳に届いた。
「……っ!円堂‼」
「‼」
咄嗟の動作で花織を庇うような姿勢を見せながら、鬼道が円堂を呼んだ。刹那、黒い球体上の物体が頭上を横切る。それは元々雷門中学の校舎であった瓦礫の上に降下し、紫色の禍々しい光を放つ。例えるならば、TVで見るブラックホールのような……、そんな光の中に数人の人影が現れた。
「我々は遠き星エイリアよりこの地に舞い降りた、星の使徒である」
奇妙な髪型に、奇妙な服装。話しているのは紛れもなくこの世界の言語だが……、そこに立つ生物はどこか常人とは違う、そんな雰囲気を醸している。突如現れた宇宙人と思わしき数名の内、リーダーらしき人物が唐突に語り始めた。緑色の髪が重力に反して逆立っている、シルエットはまるでソフトクリームのような男だ。
「我々はこの星のある秩序に従い、我々の力を示すと決めた。その秩序とは……」
宇宙人はぽんと足で先ほど宙を舞っていた黒い球体を蹴りあげ、手に取った。花織はじっと目を凝らす。何だろう、あれは……。その答えは次にその男が発言した言葉に含まれていた。
「サッカー」
サッカーボール。学校を破壊した黒い物体はサッカーボールだったのだ。男はボールを蹴り、他の宇宙人にボールを送る。そして薄ら笑いを浮かべながら、雷門中イレブンたちを見つめ、言葉を続けた。
「サッカーはお前たちの星に置いて、戦いで勝利者を決めるための手段である。サッカーを知る物に伝えよ、サッカーにおいて我々を倒さぬ限り、この地球に存在できなくなるであろう」
「……だから、イナズマイレブンのおじさんたちと戦ったって言うのか!」
円堂がこぶしを震わせ、仁王立ちをしている。その声には怒りが孕んでいるようだ。当たり前だろう、学び舎を破壊され、伝説と崇めるOBたちにこれだけの怪我を負わされたのだ。怒らないことなど、あるわけがない。
「だったら、今度は俺たちと勝負だ‼」
「フッ……。見よ、この学校はすでに崩れ去った。すなわち勝負が終わった証……、もっともあれが勝負と呼べるものならばな」
宇宙人は円堂の言葉を嘲るように笑う。それだけで、どれだけOBの試合が一方的だったのかが推し量れるようだ。円堂が怒りにますますこぶしを強く握る。その隣で、雷門の点取り屋染岡が怒りを孕んだ表情で叫んだ。
「宇宙人だろうが何だろうが、学校ぶっ壊されて黙ってられっか‼」
「染岡……」
円堂、染岡の言葉にチームは団結する。彼らは皆、宇宙人と戦う意志があるようだった。たとえどれだけ未知数の相手でも、自分たちはフットボールフロンティアで優勝した。日本一になったという自信があるのだろう。彼らの表情には気合が満ちている。
「見せてやろうぜ!俺たちのサッカー‼」
「「おう‼」」
選手たちが声を合わせて宇宙人を見据えた。だが、宇宙人は全く円堂たちを相手にしていないようだ。不愉快そうに表情を歪め、冷たく彼らに言い放つ。
「その必要は、ない」
刹那、宇宙人の足元にあった黒いサッカーボールが紫色の光を放った。軽く蹴り飛ばしたボールは凄まじい勢いで円堂に向かってゆく。円堂はマジン・ザ・ハンドを繰り出そうと構えた、だがそれよりも早くボールは彼らすべてを吹き飛ばした。
選手やマネージャーの悲鳴が校庭出会った場所に木霊する。果てに黒いボールは彼らサッカー部室を粉々に打ち砕いた。