LOOP146
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「……はっ」
闇の中から意識を取り戻す。ベッドから跳ね起きて与えられた自室の天井が見えるとやっと自分の肉体を認識できた。今も激しく脈打つ心臓を落ち着かせようと胸を撫でる。汗びっしょりだ。銀の鍵を取り出して状況を確認する。乗員十四名、グノーシア三人。
――――あれは、夢だったのだろうか。
グノーシア数ゼロの世界、そして。ユキはおぼつかない足取りで洗面台へと向かった。ユキを感知して勢いよく流れる水を手で汲み、何度も何度も顔を洗う。
顔を上げると水を滴らせながら、酷い顔をした自分が鏡の奥からこちらを見つめている。……本当に、酷い顔だ。きっと疲れていたのだろう、だから夢の中でもグノーシアに関することばかり浮かんできてしまうのだ。
それでもただの悪夢ならば良かったと安堵できる。本当に夢だったのならば。きっと夢に違いない、グノーシアが存在しないループだなんて。
グノーシアの存在について思考すると、ユキはセツに話さなければならないことがあることを思い出した。話し合いが始まる前にユキは、今回セツを自室へと招いた。夢か現実だったのか定かではないが、前回と同じ轍を踏むわけにはいかない。
そして悪夢のせいで印象が薄くなってしまっているが、グノースについての情報はセツがきっと求めていたものだろう。ユキは夕里子から得た異性体グノースの正体、そして彼女が告げていたグノーシアがこの船に生じる原因をセツに話した。
「グノーシア汚染者が出現するのは、ユキのため? 分からないな、夕里子は何を……」
ぶつぶつとセツが汚染を未然に防ぐことができれば……、と何やら考えを口にしている。ユキはじっとセツを見た。……あの悪夢のこともセツに話すべきだろうか。正直なところあんなにもリアルな夢は在り得ないと思っている、あれは現実だったのではないか。だがとても口にできなくて、ユキは間接的な疑問をセツに投げかけた。
「セツ……」
「ん……? どうしたんだい、ユキ」
「私には乗船前の記憶がないのだけれど……。記憶を失う前の私について、セツは何か知ってる?」
これまで聞いてきた乗員の話ではこの宇宙船D.Q.O.の持ち主のジョナス。そしてジョナスに仕えているステラを除く乗員たちは、総じてグノーシアによる暴動の発生した惑星ルゥアンからの避難民だったはずだ。
自分の足でユキはこの船に乗り込んだのか、それともセツの誘導でこの船に乗せられたのだろうか。ユキのためにグノーシアが生じる、ということであればユキが連れてきた何者かがグノーシア汚染者だったということも考えられる。夕里子が指し示す原因が何か探す糸口になるかもしれない。
「いや……、悪いけれどあまり印象にないな。ユキのことをちゃんと知ったのはループ現象を自覚した後からで……」
「……」
セツは何やら歯に物が挟まったかのような言い方をしたが、嘘をついてはいないようだった。そうか、とユキはセツの言葉に首を縦に振る。それを認めたセツは改めて話を切り出した。
「そういえば、ユキ……」