第二章 怪談調査

#フジヒメ#ちゃんは不安に揺れながらも、妖怪と人間どちらのことも考えてくれている。
チラチラと心配そうな目が俺たちを見つめていた。


「何もそんなに心配しなくても。僕たちだって手加減くらいはできるさ……!」
「そ、そうです……!」
「ただし、相手が話の通じるヤツだったらの話な」
「ザクロ……!」


狐くんの言葉を#フジヒメ#ちゃんは理解している。
このまま放って置くことが、どれだけ学園にいる者にとって危険な事か。

それでもやっぱり、彼女は妖怪思いでもある優しい子だから、しょんぼりと下げた頭を甘えるように獏くんの胸にすり寄せた。


「本当に#フジヒメ#ちゃんはいい子だよね。あの子がお嫁に行く時、俺は果たして耐えられるかな?」
「お嫁って、まだ先の話だろ? おれたちだってねーのに。それに、#フジヒメ#にはうるさいザクロとウタシロがいるし……」
「狐くん、獏くんだって彼女が本気で“この人に憑いていきたい!”と言ったら折れるだろうし、狗くんだって一年後、二年後に憑いていきたいと思える人間と出逢うかもしれないよ?」
「憑いていきたい人間……? わかんねーな……」


頭の後ろで手を組んだ狗くんは何かを考えているのか、#フジヒメ#ちゃんを映した目をスッと細める。
その姿は、どこか今までの彼とは違う雰囲気を出していた。

#フジヒメ#ちゃんが来てから、少しずつ皆が変わってきている。
これはいい傾向だと、俺は静かに頬を緩めた。
と、同時にある物を思い出す。


「あ! そうだ!」
「うわっ!? な、なんだよ急に……ビビっただろ……!」
「ごめん、ごめん。この雰囲気で、すっかり忘れてたんだけど――」


そう言って俺が取り出したのは、“くじ”と書かれた箱。

「何だ、何だ?」と皆の視線が箱に集まる。


「これ、さっきからハナヲが作ってたヤツだよな?」
「これで怪談調査のチームを決めようと思ってね」


「さあ、引いて引いて!」とやや強引に箱を押し付ければ、皆は渋々と箱の中に手を入れた。
ただ一人、彼女を除いて。


「あ、あの……」


困惑する#フジヒメ#ちゃん。
俺は「大丈夫」と安心させるように彼女の頭を撫でた。


「君には、全部の調査に入ってもらおうと思ってね」


ウインクを華麗に決めて、これで安心だね!
……と思ったら、彼女は目をぱちくりさせて首を傾げた。

とても可愛いけど、これは伝わってないね。
仕切り直し。
俺は、もう一度、俺の意図が伝わるように話をした。
話終えて、#フジヒメ#の顔を見れば、今度は無事に伝わったようだ。

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