第二章 怪談調査

三年の教室が並ぶ廊下を進んでいく。


「やっぱり二年生と三年生じゃ違う気がする……」


アラハギが空の教室を覗きながら呟いた。

調査一日目。
昨夜のくじで決まったオレ、アラハギ、そして#フジヒメ#は聞き込みを調査を行っていた。
すでに二年生への聞き込みを終えている。


「そう? 階が違うから見える景色が少し違うだけで一緒だと思うけど……」
「うーん……言葉にすると難しいんだけど……。空気? 雰囲気? とにかく違う気がする!」


「何か憧れちゃう雰囲気があるんだよね」と自由に動き回るアラハギ。
そんな彼とは対照的に先ほどから制服の袖を引っ張る小さな力がオレの胸を擽っている。 
どうやら、こちらはアラハギのそれとは違うものらしい。
しきりに辺りを見る姿が可愛くてしかたない。

この子はこの後の調査も大丈夫だろうか?

#フジヒメ#は怪談調査に全て参加することになった。
調査の中で人間との関わりや今の時代について学ぶ。
彼女が学園で生活する上で必要な事だとハナヲさんは考えたようだ。
オレたちはそのサポート役。

日替わりにしたのは、多分、この可愛い後輩と一緒に居たいと言う先輩のわがままだろう。


「ここ、まだ生徒が残ってるみたい」


アラハギが教えてくれた教室には談笑する女子生徒たちがいた。

教室に入って話を聞こうと思って踏み出した足を、ふと隣の小さな力によって止める。


「アラハギ、彼女たちを呼んでくれるかな?」


アラハギに頼めば、彼の声が彼女たちの会話に入っていく。


「ねえねえ、先輩たち。お話しの所ごめんなさい。少し聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


小首を傾げるアラハギを女子生徒たちは快く受け入れてくれたようだ。


「イリヤさん、良いみたいですよ!」


女子生徒たちがアラハギに連れられやってくる。


「実は最近噂になっている怪談について聞きたくてね」





結果から言えば、収穫はなかった。
とぼとぼと階段を下りる背中は何だか悲しそうだ。

――キーンコーンカーンコーン――

下校を報せるチャイムが学園に鳴り響く。


「もう終わりだね」


調査の時間は下校のチャイムまで。
今日の調査はここで終わり。

残っていた生徒たちが帰り支度をして、昇降口に集まって来る。


「オレたちも一度戻ろうか」


ずっとここに居ては変に思われる。
階段を下りきって、保健室へと向かおうとしたその時だった。


――ねぇ、知ってる? あの怪談って……。


女子生徒たちの噂する声がした。

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