第二章 怪談調査

女子生徒が目を覚ました。
ベッドの上で身を起こしたそいつは、どうして自分が保健室で寝ていたのかわかっていないようで、キョロキョロと辺りを見渡している。
そして、おれたちの存在に気付くと、驚いたまま固まってしまった。

何もそこまでビビることはねーだろうに……。

しかし、改めて女子生徒を見ると、ばっちり二つの妖力の気配が残っていた。
一つは#フジヒメ#のもの。
そして、もう一つは全く知らない妖怪のもの。
#フジヒメ#のものはもう微かにしか残っていないが、知らない妖怪のものは元々この生徒に取り憑いていたのか今も濃く残っている。


「あれ? おまえ……――」


女子生徒を見ていて、ふと気が付いた。

この生徒、どこかで見たような……?

それをヒフミに言うと、ヒフミはしばらく考えた後「あー!」と声をあげた。


「オマエ、あの時の一年じゃん! ほら、怪談調査の時……クラスのヤツに思いっきり頬っぺた叩かれた!」
「ちょっと待って! この生徒のこと知ってるの?」
「知ってると言うか、オレとトネリと#フジヒメ#とで怪談の調査をした時に見たと言うか?」
「その三人での調査ってことは、二日前だね」
「失踪した一年生を調べようとして聞きに入ったクラスにいたんだよな」


あの時は#フジヒメ#が戸を開けたと同時にこの女子生徒が頬を叩かれて……。
久しぶりに見た修羅場だったぜ。
けど、その時の女子生徒からは妖力の気配を感じなかった。
せいぜいハンカチを渡した時についたであろう#フジヒメ#の気配くらい。


「#フジヒメ#ちゃんも覚えていたんだね?」
「はい、頬の様子も気になりましたので……。しかし、驚かせてしまったあげく気を失わせてしまうとは……」


「お加減はいかがですか?」と女子生徒を心配する#フジヒメ#に、女子生徒はわたわたと慌てた様子で「人違いです!」と叫んだ。


「え?」
「は?」
「へ?」
「……どういうことだ?」


ザクロの声に女子生徒は涙を浮かべてながらも話し始める。

おれたちに会ったのは今日が初めてであること。
学園に来ることも久しぶりだということ。


「学園に来たのも久しぶり?」


頷く女子生徒曰く、入学後しばらくは来ていたものの、ここ一ヶ月半ほどは登校できていないようだ。
今日についても、数日前から見なくなったある人を探しに来ただけだと言う。
当然、二日前は学園に来ていない。


「なら、前に会った生徒がおまえじゃなきゃ誰なんだよ?」


おれの疑問に女子生徒は緊張した面持ちで、もしかしたら自分が探している人かもしれない、と答えた。

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