第二章 怪談調査

まだ頭が揺れ動く感覚に気持ち悪さを感じながらも、目の前に出されたお茶を流し込む。

幾分か楽になったところで改めて辺りを見渡せば、なかなかにひどい有り様だった。


「狗くんたち、飲めそうかな?」
「うぅ……気持ちわりー……」
「ヒフミ、オマエ……毎回あんなんを受けてんのか……?」
「わかるだろ……。気絶しねーだけ、ザクロはスゲェよ」
「そう言えば、ザクロと居たはずなのに、ハナヲさんは大丈夫そうだよねぇ?」
「一応この中じゃ年長者だからね。後輩にカッコ悪い姿は見せられないよ! ――はい、メリィくんも一杯どうぞ」
「ありがとうございます……」


イリヤさんによって人避けの妖術が施された保健室。
ソファーには妖術に当てられた妖怪が力なく横たわっているし、ベッドには気絶した女子生徒がいる……。
そして、その元凶となった後輩は只今説教中だ。


「いくら逃げそうだからって、無闇矢鱈に声を響かせちゃダメだといつも言ってるだろう!」
「ご、ごめんなさい……」
「ヒフミとトネリから聞いているよ。妖術で荒れた人間たちを落ち着かせたんだって? 僕もメリィもそれを校外調査の時に感じた。凄いじゃないか。君の力はちゃんとついてきているんだから、今回も落ち着いて対処すればできたと思うんだけど?」
「……うぅ……うぅ」
「ザクロもハナヲも一緒に居てくれただろう? 君の学びとは言え、一人で何もかもしなくていい。君のフォローはちゃんとしてあげるから。そのための僕たちだ。わかった? ――よし、いい子だ。ほら、彼らの所に行こう」


涙を流しながらウタシロの言葉に頷いた#フジヒメ#がゆっくりとボクたちの側へやってくる。


「ザクロさん、ごめんなさい。ヒフミさん、アラハギさん、トネリさんもごめんなさい」


深々と下げられた頭に誰が怒ることができるの?
相手は何をしても可愛くて仕方ない後輩なのに。


「ヒフミの監督不行き届きだから気にすんじゃねぇ」
「なんかトゲねぇか、ザクロ? でも、また練習しような!」
「ヒフミで思いっきり練習しておいで!」
「え? アラハギ……?」
「ヒフミ、骨は拾ってやるよ……」
「トネリ?」
「いいじゃないか。練習台になってあげなよ、先輩。それでなくても君、こと妖術においては、この子に尊敬されているんだから」
「ウタシロまで!」
「――ぷっ、あはははは!」


揃って笑えば、涙を浮かべていた#フジヒメ#にもほんのり笑顔が戻る。

和んだ空気がボクたちを包んだ時、ベッドの方から派手な音が響いた。

どうやら女子生徒が目を覚ましたようだ。

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