第一章 七不思議の後輩ちゃん
「おはようございます!」
旧校舎まで届いたのは、もうすっかり七霧学園に馴染んだ後輩の声だ。
少し前から新たに語られ出した、怪談になった噂『昇降口に響く声』。
その怪談の火付け役となった藤棚のごみ捨ての一件からいたく生徒会を気に入った後輩は、自らも生徒会に入りたいと声をあげた。
七不思議のほとんどが賛成する中、反対をしたのが獏のウタシロと妖狐のザクロだった。
自身も生徒会に所属しながらこの後輩を誰よりも可愛がっている二人は、雑用ばかりで面倒なだけだからと、後輩を押しとどめていた。
しかし、狗神であるトネリからの「でも入ったら今よりも一緒にいられるんじゃね?」という一言から長い葛藤の末、生徒会への所属を許可したのだ。
そんな後輩の初仕事が今日から始まった朝のあいさつ運動だった。
朝早くから門の前に立ち、登校してきた生徒たちを迎え入れる後輩の声は、木霊という妖怪らしくよく響く。
「ちょっと行ってみるか」
旧校舎から飛び立ったオレは、門近くの木の陰に入ると隠れ蓑を外し、人間の姿へと変化した。
「よぉ……オマエも来たのか?」
「別に来るほどのものじゃないのにね……」
「おはよう、ヒフミ」
表に出ると先に話したザクロとウタシロ、さらに八岐大蛇のイリヤが肩を並べて立っていた。
「おはよう! って、ウタシロたちからはねぇのかよ。生徒会なのに」
「はいはい、おはよう」
ずいぶんと投げやりな挨拶だ。
「はぁー……何で朝っぱらから面倒なことに付き合わされてんだ……」
「そりゃぁ、キミが生徒会に入っているからねぇ」
「おまけに蛇野郎まで来やがる」
「楽しそうな声が保健室まで聞こえたんだよ」
「オマエ、いつも寝てんじゃねぇか」
「面白そうなものが見れると思ってね。寝てるには勿体ないよ」
「それ、僕たちのことを言ってるんじゃないだろうな?」
ウタシロの言葉にイリヤは笑みを返すだけだった。
「オマエは昔っからそういうヤツだよなぁ」
「ふふ、ありがとう」
「……ったく、邪魔はすんなよ」
「気を付けるよ。でも、むしろ君を助けてる方だと思うけどなぁ?」
「あ? 助けてる?」
「だって学園一の不良だといわれているキミが恐がられないようにしてるんだから」
喧嘩して停学処分まで出されたザクロはほとんどの生徒から恐がられている。
今も幅一杯に広がって門をくぐった生徒たちは、オレたちに近づくにつれて徐々にその幅を狭め、道の反対側をひそひそと通り抜けていっていた。
旧校舎まで届いたのは、もうすっかり七霧学園に馴染んだ後輩の声だ。
少し前から新たに語られ出した、怪談になった噂『昇降口に響く声』。
その怪談の火付け役となった藤棚のごみ捨ての一件からいたく生徒会を気に入った後輩は、自らも生徒会に入りたいと声をあげた。
七不思議のほとんどが賛成する中、反対をしたのが獏のウタシロと妖狐のザクロだった。
自身も生徒会に所属しながらこの後輩を誰よりも可愛がっている二人は、雑用ばかりで面倒なだけだからと、後輩を押しとどめていた。
しかし、狗神であるトネリからの「でも入ったら今よりも一緒にいられるんじゃね?」という一言から長い葛藤の末、生徒会への所属を許可したのだ。
そんな後輩の初仕事が今日から始まった朝のあいさつ運動だった。
朝早くから門の前に立ち、登校してきた生徒たちを迎え入れる後輩の声は、木霊という妖怪らしくよく響く。
「ちょっと行ってみるか」
旧校舎から飛び立ったオレは、門近くの木の陰に入ると隠れ蓑を外し、人間の姿へと変化した。
「よぉ……オマエも来たのか?」
「別に来るほどのものじゃないのにね……」
「おはよう、ヒフミ」
表に出ると先に話したザクロとウタシロ、さらに八岐大蛇のイリヤが肩を並べて立っていた。
「おはよう! って、ウタシロたちからはねぇのかよ。生徒会なのに」
「はいはい、おはよう」
ずいぶんと投げやりな挨拶だ。
「はぁー……何で朝っぱらから面倒なことに付き合わされてんだ……」
「そりゃぁ、キミが生徒会に入っているからねぇ」
「おまけに蛇野郎まで来やがる」
「楽しそうな声が保健室まで聞こえたんだよ」
「オマエ、いつも寝てんじゃねぇか」
「面白そうなものが見れると思ってね。寝てるには勿体ないよ」
「それ、僕たちのことを言ってるんじゃないだろうな?」
ウタシロの言葉にイリヤは笑みを返すだけだった。
「オマエは昔っからそういうヤツだよなぁ」
「ふふ、ありがとう」
「……ったく、邪魔はすんなよ」
「気を付けるよ。でも、むしろ君を助けてる方だと思うけどなぁ?」
「あ? 助けてる?」
「だって学園一の不良だといわれているキミが恐がられないようにしてるんだから」
喧嘩して停学処分まで出されたザクロはほとんどの生徒から恐がられている。
今も幅一杯に広がって門をくぐった生徒たちは、オレたちに近づくにつれて徐々にその幅を狭め、道の反対側をひそひそと通り抜けていっていた。