妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
番外編 先輩と後輩
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生徒たちの夢から夢へと渡り歩く。
悪夢を見せるのは僕の十八番だ。
今夜も生徒たちに悪夢を見せようかと思ったのに――
「君がここで寝てたら行けないだろう……」
僕の手の中ですやすやと眠るフジヒメ。
実に可愛い僕たちの後輩だ。
小さな姿はとくに愛らしく、行動の一つひとつから目が離せない。
突拍子がないのも彼女の幼さが魅せるものだ。
最近は昼夜を問わず、眠る時には必ず僕の所にやってくる。
「本当によく眠る子だね、君は」
ヒフミとの妖術の練習に、アラハギとのピアノ、トネリとの遊び……そのからだには多すぎるほど動くのだから、よく眠るのは仕方がないことだ。
手の中でふるふると震えたからだ。
そのあと、もぞもぞと身じろぐ。
「何か夢でも見てるのか?」
妖怪の見る夢――
「……ちょっと失礼するよ」
――パチン――
気になった僕はフジヒメの夢へと入っていった。
「……」
まあ、一言で言い表すならば彼女の夢はまさに“子どもの夢”だ。
昔の夢。
トネリたちと遊ぶ夢。
学園生活の夢。
変な生き物が出てくる夢。
不思議なことが起こる夢。
彼女の夢は次から次へと忙しく変わっていく。
その中でも妙に引っ掛かるのは――
「何でこんなに押し潰されているものが多いんだ……?」
押し潰されているといっても悪夢になるようなグロテスクなものじゃなくて、ファンシーにコミカルに押し潰されている夢が多い。
あとは怪物が寝ている子どもを驚かせようとしているのに無視されている夢もあった。
不憫や奴だ……。
「……何でこんな夢なんか見てるんだか……」
取り留めもなければ、関連性もない夢。
想像力が豊かなこの小さな妖怪に少し驚く。
幼い子どもの見る夢は七不思議よりも不思議である。
「何にせよ……怖い夢じゃなくて良かったよ」
人間たちから酷い目に合わされるとか、仲間が一人ずつ消えていくとか……悲しい夢じゃなくて安心した。
小さなからだを撫でると、今度は甘えるようにすり寄ってくる。
「ふふ、愛らしい君の見る夢が良いものでありますように」
悪夢を見ないおまじないとして妖力を込める。
「……にしても、何でこの子はあんなに押し潰ぶされる夢を見てるんだ? 僕が手で包み込んでるからか?」
上にのせていた手をどけると小さなからだが小さく震えた。
この時見た彼女の夢が正夢に近いものになるなんて、今の僕には知らないことだ。
「まあ……何だっていいか……」
手の中の小さな温もりが僕を優しくする。