妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
番外編 先輩と後輩
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保健室の扉から顔を覗かせたのはフジヒメだった。
「やぁ、フジヒメ。どうしたんだい?」
髪を揺らしてオレのもとへとやって来た彼女はとても嬉しそうだ。
「何か良いことでもあったのかな?」
まだまだ妖怪としても幼い彼女に兄心のようなものを持って聞くと、彼女は花が咲いたように可愛らしい笑顔を見せた。
「実はですね。これをクラスの子に貰ったんです」
彼女の手には淡い紫と青の藤下がりの髪飾り。
「最近つまみ細工にはまってるみたいです。良い感じにできたからあげるって」
「へぇ……所々歪なところがあるけれどとても丁寧にできているね」
「はい。依り代にしているあの藤棚の花をイメージしてくれたそうです。それで――」
フジヒメは少し言いにくそうにしていたが、意を決したようにオレにその藤下がりを差し出す。
「あの、お願いがありまして……髪を結ってほしくて……」
語尾にいくに連れて顔を赤らめていく彼女に笑みがこぼれる。
「ふふ、わかった。オレに任せて」
藤下がりを受け取れば、彼女の顔に満開の花が咲いた。
「ほら、ここに座って」
「はい!」
オレの言葉に素直に従って座るフジヒメの浮いてしまった足がフラフラと揺れている。
「と言っても、オレも髪は束ねるくらいにしか結わないから凝ったものはできないけど、良いかい?」
「はい」
きっとオレよりもウタシロやアラハギの方が得意だろうに。
それを知っての上でなのかオレに頼んで上機嫌に鼻唄まで歌っている彼女は本当に愛らしいと思う。
「はい、できたよ」
「ありがとうございます! ふふっ!」
「嬉しそうだね」
「とっても! 蛇さんたちもどうですか? 似合ってますか?」
見せてまわるフジヒメに、蛇たちも「良かったね」「似合ってるよ」と言っているかのように身体を動かしている。
「イリヤさん」
「ん? どうかしたかい?」
蛇たちに見せ終わったフジヒメがオレの背後へと回る。
「イリヤさんの髪を結ってもいいですか?」
聞いたのに答えを待つこともせず、彼女の手がオレの髪に触れる。
まだ幼い子が無邪気に遊んでいるのだ。
子どもの遊びを邪魔してはいけないと目を閉じて受け入れる。
「……どうぞ」
「蛇さんたちは危ないので離れていてくださいね」
髪が結われていく。
「あ、やっぱり留める物が必要ですね……」
「蛇ではダメかい?」
「いいですけど……いつか、似合う髪留め貰ってきてくださいね」
するりと手から放れた髪はすぐに解けてしまった。