妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
番外編 先輩と後輩
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今夜も騒がしい連中が肝試しにと学園へ来る。
「迷惑な連中だ」
人間ってのはいつも勝手だ。
先に棲んでいるヤツのことなんざまるでお構い無しにやって来ては荒らしていく。
場所を変えればそこにもやって来て、出ていけとばかりに自分たちの住みかを広げていくのだ。
理科室前の廊下が騒がしくなる。
喧しい声に苛立ちが募っていく。
「いい加減にしろよ……っ!?」
鬼火でも出して追い払おうかと思った時だった。
微かな音と妖力の気配がして、切り裂くような悲鳴が廊下に響く。
そして、それは遠くに消えていった。
「何が起こったんだ……?」
いきなりの静寂に包まれた空間に唖然とする。
すると、理科室の扉が開かれた。
「こんばんわ」
のん気な声とともに顔を出したのはフジヒメだった。
「アイツら追い払ったのはフジヒメか」
「へへ、丁度いいところにいたので。あ、この子に協力してもらったんです!」
と言い出して見せたのは、指先に乗った一匹の蜘蛛だった。
「この子の足音を大きくして響かせたんです。ついでに鳴き声も。クラスの子が蜘蛛が苦手って言っていたので、驚かす時にいいかなって」
笑顔で言う割には、やることがエグい。
役目を終えた蜘蛛は廊下の暗闇へと姿を消した。
「んで、どうしたんだ?」
「へ? えーと、とくには……?」
「……ふ、何だそれ」
「あ、鬼火が見たいです。作戦の時に出してくれたあの鬼火」
「火は苦手じゃなかったか?」
「苦手ですよ? でも、ザクロさんの出す鬼火は好きです。……ザクロさんの鬼火は優しいので」
「鬼火に優しいも何もないだろ? 変なヤツだな……ほらよ」
――パチン――
指を鳴らせば、ポッと青白い鬼火が理科室を照らす。
とたんにフジヒメの目が輝きだした。
「ありがとうございます。……やっぱり好きです、ザクロさんの鬼火」
「オマエだけだぜ? そんなこと言うヤツは……」
変わってんな、と思っているとフジヒメは首を振った。
「そんなことありませんよ。ザクロさんの鬼火が優しいと感じて、好きって言う人は私以外にもぜーったいにいます!」
「そんなヤツいねぇだろ?」
「います」
譲る気はないと目が語っている。
何を根拠にそんなことを言うのか。
不思議に思いながらも変に頑固なコイツに折れてやる。
「ま、そういうことにしてやるよ」
折れた途端にコイツはまたふわふわとした笑みを浮かべた。
「はい!」
嬉しそうに鬼火と遊んでいるフジヒメの傍で夜が更けていく。