妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
第一章 七霧学園に広がる噂
名前の変更
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ヒフミの起こした風で反響していた歌が途絶えた。
そのあとすぐに悲鳴が聞こえて、おれたちは妖力がする方へと進んでいく。
「……おまえが噂の正体?」
妖力を辿っていくと女子が一人、下駄箱の影に座り込んでいた。
*
「なるほど。噂の正体は木霊だったのか」
「ごめんなさい。みなさんにご迷惑をお掛けするつもりはなかったんです」
昇降口からほど近い階段に座り、頭を下げたそいつは、『昇降口に響く声』の噂を引き起こしていた木霊だった。
依り代にしているのは最近中庭にできた藤棚の藤らしい。
前に居たところは人が全くいなくて、学園の賑やかな雰囲気に嬉しくなって歌っていたらそのまま噂になったようだ。
「つーか、はしゃぎまわってたらそのまま噂になったって、どんなんだよ」
「意外におっちょこちょいなんだね、君は」
「オマエも人のこと言えねぇだろ」
「ぅ、うるさいな!」
「ふふ。でも、噂になってしまうほど嬉しかったのかい?」
「はいっ! こんなに賑やかな所は久しぶりです!」
「久しぶりってことは、前は別のとこにいたの? 山とかじゃなくて?」
アラハギが聞くと、そいつはしゅんと俯いた。
「……はい。山間の小さな神社だったところに大元になる藤の木があります。ここに来たのは藤棚を作るために大元の藤の枝から育てられたものです」
「神社“だった”ってことは今は……」
「なくなりました。お社や鳥居はまだ形を留めてますが、何も……。初めから神様は居ませんでしたから神社と言えるかどうかも分かりませんが……」
両手を組み、かたく握りしめるそいつの話をおれたちはただ静かに聞くことしかできなかった。
「神社に人が来なくなってしばらく、学園の関係者の方々が来られて、藤がキレイだって言ってくれたんです。学園にも置きたいなって。だから思ったんです。どうせ、一人で居るくらいなら――」
急に立ち上がったそいつにみんなが驚く。
「心機一転、新しい所に行ってみたいな、と!」
拳に力を入れ、晴れ晴れする笑顔を見せたそいつに、肩の力が抜けていくのを感じた。
「おまえ、どんだけ思いきりがいいんだよ!」
「恐いとかなかったのか?」
「そうだよ。僕が言える事じゃないけど、人間に裏切られたのにまた人間の所に来るなんて……」
「私は神社が廃れてしまったことを人間たちに裏切られたとは思っていません。それに私、人間が好きなんです」
そう言ってそいつ――フジヒメ――はおれたちにここに来るまでの話をしてくれた。