妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
第三章 昇降口に響く声・出現
名前の変更
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今夜も生徒たちが藤を見に真夜中の学園へやって来た。
手にはジュースやお菓子を持っている。
昨夜の子たちはカバンか袋を持っていたけど、今夜は誰も持ってきていない。
それが妙に気になって階段前の窓の前へ立つと、フジヒメが藤棚の上で彼らを見ていることに気がついた。
彼女の方も僕に気づいたようで振り返る目と合う。
「……分かったよ」
僕は一度旧校舎の方を見ると窓から離れ理科室へと向かった。
フジヒメは首を振っていた。
頬は不満げに膨らみ、口はへの字に、けれど眉は八の字に。
怒っているのか、悲しんでいるのか……。
優しい君がこれ以上傷つかないように先輩として力を振るわないとな、と一人理科室へと続く廊下で気を引き締める。
未だ見つからない同胞を彼女に重ねているのかもしれないとふと思ったことに蓋をして……。
「失礼するよ、ザクロ」
「ああ? 何か用か? 今夜の連中はうるせぇほど騒がしいからイライラしてんだ」
「その連中のことでだよ。噂を本当にする時が来たようだ」
*
昇降口から離れた廊下の先に僕たちは集まっていた。
ハナヲが考えた作戦を実行するためだ。
ここから昇降口はよく見えるけど、昇降口からここは見えにくい場所。
『昇降口に響く声』の噂を僕たちが確認するのに使った場所だ。
ここでフジヒメと出会い、こうして一緒に学園で過ごしている。
最初は驚いたよ。
現れたと思ったら昇降口でいきなり神楽歌を歌うし、ヒフミの風に尻餅をついて下駄箱の影に座り込んでいるし……。
本当はイリヤやザクロに気をつかってのことだって知ったのは少し後のことだったかな。
学園の初日には皆を引っ張って屋上でお昼寝をした。
メリィの放送を屋上まで響かせて学園中を騒がせもした。
目が離せないフジヒメのおかげで、同胞への不安に押し潰されることはなかった。
小さくなってしまった彼女にさらに目が離せなくなった。
ふわふわとする彼女は簡単にどこかへ行きそうだったから。
けれど、ちゃんとここにいる。
僕たちの後輩はどこまでも優しい。
簡単に変わってしまう人間にも、僕たち妖怪にも。
「それじゃあ、皆いいかい?」
ハナヲのどこかイキイキとした声が小さく響く。
本格的に人間たちを怖がらせることが今回初めてのフジヒメ。
不安そうな彼女の頭を撫でてやれば、まだ少し緊張しているものの肩の力を抜いた。
「……フジヒメちゃん、大丈夫かな?」
「はい……!」
ハナヲの問いに彼女の静かな、けれど力強い答えが返っていく。