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第二章 小さな後輩

名前の変更

七不思議の後輩ちゃん
妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
この物語の主人公


トネリのおかげで、いつの間にか入っていた肩の力が抜けた。

アラハギも戸惑いながらも、さっきまでの激しい感情を静めている。

部屋の空気が変わった。


「……本当にキミは消えないの?」


トネリからアラハギへと移ったフジヒメ

まだ不安そうなアラハギに彼女は元気に跳ねて答える。


「……消えないんだね。大丈夫なんだね」


「良かった……」とアラハギは安心したように小さく呟いた。

そんなアラハギを見て安堵するオレたちにトネリが口を尖らせる。


「なあなあ。何か、おれに対して当たり強くなかったか?」
「え!? そう、だったか? いやー、悪ぃ悪ぃ! ほら、ウタシロも謝れよ」
「うっ! ……あー、そうだね……悪かったよ。彼女や木霊のことを知らなかったとはいえ、きつく言い過ぎた……」
「……すまねぇ」
「ごめんよ、トネリ」
「すみません」
「狗くん、ごめんね」
「まあ、いいけど……フジヒメに免じて許してやる!」


そう偉そうに腕を組んで言うトネリの尻尾は揺れていた。

本当に今回のことはトネリに頭が上がらないな。


「んで、おまえは?」


和やかな空気の中、トネリがアラハギへと向く。


「……」


気まずそうに視線を避けるアラハギだったが手の中のフジヒメと目が合うと、意を決したようにトネリへと向き合った。


「そうだね……今回はボクが悪かった。つい頭にきちゃって、ひどいことを言った……ごめん」
「おう! いいぜ!」


大きく揺れるトネリの尻尾。

フジヒメも嬉しそうだ。


「あ! でも、いくらフジヒメが味方してくれていたとはいえ、けっこーキツかったんだからなっ!」


頬を膨らませたトネリにこの場にいる全員が思っただろう。

また何か彼が喜びそうなものをあげよう、と。

すっかり元に戻った雰囲気の中、オレは小さな引っ掛かりを覚える。


「……あれ?」
「どうした、イリヤ?」
「蛇くん、何か気になることでもあるのかい?」
「いや、このままの姿なのはわかったけれど……なら、どうしてフジヒメは、生徒たちに囲まれることになったのか疑問に思ってね」


チラリとアラハギの手の中のフジヒメを見れば、彼女はビクリと跳ねた。


「……ねぇ、フジヒメ?」


名前を呼べば居心地悪そうに目を逸らした彼女。


「なあ……なんか、イリヤ恐くないか?」
「触らぬ蛇神に祟りなしだよ」
「……あ、逃げた」


アラハギの手から逃げ出したフジヒメは、髪の毛の蛇によってオレの手へと連れてこられる。

ふるふると震える小さな彼女を可哀想に思うも、逃がす気は今のオレにはない。

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