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第二章 小さな後輩

名前の変更

七不思議の後輩ちゃん
妖怪主のため、カタカナでの記入をオススメします。
この物語の主人公


アラハギとフジヒメが小さな姿で保健室へと駆け込んできた。

あまりに突然な出来事に何があったのか聞けば、アラハギはフジヒメがチビ妖怪の姿で学園の皆に囲まれていたと言う。

中庭の方が騒がしいと思ったらそういうことだそうだ。


「いくらキミの小さな姿が可愛らしいぬいぐるみに見えても、人間たちにむやみに姿を見せるのは良くない。何もされなかったから良かったけれど、中にはキミに危害を加える人間がいたかもしれないことをちゃんと理解しておくんだ」


説教染みたことを言えば、フジヒメは小さなからだで静かに頷いた。


「うん、キミは良い子だね」


声を和らげて、優しく淡い紫を撫でる。

オレの手の下でフジヒメは気持ち良さそうに目を細めた。

けれど、ふと疑問に思う。


「でも、藤棚は目立つ場所ではないけれど、特別人が来ない場所でもない。どうしてキミはその姿でそこに居たんだい?」


依然として彼女の姿は小さなままだ。
そして戻る気配もない。

彼女は表情を曇らせていく。


「もしかして……戻れないのかい?」


小さなからだをさらに小さくして彼女は頷いた。

オレとアラハギは保健室を出て、ハナヲさんのいる図書室へと向かう。

オレの手には彼女もいる。


「ハナヲさん、居る?」
「大変なんだ!」
「蛇くん、猫くん、そんなに慌ててどうしたんだい?」


慌てた様子のオレたちを見て、ハナヲさんはすぐに彼の妖術で作った部屋へと招き入れてくれた。


フジヒメちゃんが元の姿に戻れない……?」
「そうなんだ。ねえ、ハナヲさん、フジヒメは大丈夫だよね?」


アラハギと手の中のフジヒメが不安げにハナヲさんを見る。


「……フジヒメちゃんは七不思議ではなく噂としてこの学園に広まっていた。噂は七不思議よりも格段に広まりやすいけれど、同時に消えやすい。彼女の場合はたまたま彼女の声を聞いた女子生徒の話が噂として広まっただけで、実際に声を聞いた生徒は俺たちの七不思議を体験した人数よりもはるかに少ないはずだ」
フジヒメには元々いた村の子孫たちの想いがあるはずだけど……」
「そうだよ! それに今まで大丈夫だったのに何で急に? その子孫たちもまさかフジヒメのことを忘れていってるんじゃ……!」
「アラハギ……」
「っ……」


アラハギの怒りの影をハナヲさんが静かに諌める。

静寂に包まれた中でふわり……と手の中の彼女が動いた。

アラハギの膝へと移り、怒りで俯く彼をそっと見上げる。

その表情は自分のことよりも心配そうに歪んでいた。

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