7章
名前変更
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まさか、昨日の今日だとは。
有言実行なテツくん。
実は、昨日の夜–––
『みんな、お疲れ様です』
お茶を片手に乾杯をして、ご飯を一緒に食べた。
黒子「疲れました」
火神「体力ねぇもんな」
何も言えないのが悔しかったのか、テツくんは大我のお皿に乗っていたお肉を盗んだ。
黒子「これ、美味しいですね」
火神「あ!黒子てめぇ!」
『こらこら』
料理はたくさんあるのに、取り合いをする2人はまるで子供。
つい、笑ってしまう。
とても微笑ましい光景だ。
火神「なに笑ってんだよ」
『ん?楽しいからだよ』
黒子「そうですね」
料理はほとんど大我が食べた。
満足そうな顔をしていた。
大我を玄関まで見送ってからテツくんと後片付けをした。
『アイスでも食べよっか』
黒子「いただきます」
抹茶とバニラがあったので、もちろんテツくんにはバニラアイスを渡した。
黒子「名前さん」
『ん?』
黒子「明日、氷上神社に行きましょう」
『え……?』
黒子「早く解決しましょう」
……と、テツくんのやる気で、現在氷上神社に来ている。
「これが、左近の桜です」
本殿の前に左右で並ぶ右近の橘と左近の桜。
確かに咲いた形跡がなかった。
『……?』
イタイよぉ……
どこからか、とても弱々しい声が聞こえた。
黒子「名前さん?」
さっきの声は私だけにしか聞こえていないようだった。
『今、この桜から声がした』
黒子「そうですか?ボクには聞こえませんでした」
『どこか痛がってた』
黒子「まだ、声がしますか?」
あの一言だけだった。
どこかの枝でも折れているのかと思い、桜をくまなく見渡した。
社務所から戻ってきた宮司さんが不思議そうにしていた。
『きっと、桜に原因があると思います』
社務所にある一室に案内されて宮司さんと話をする。
黒子「他に目撃した人はいないんですか?」
「1人の巫女が "桜に精霊がいる" と言っていました」
氷上神社が建てられた当初から桜があり、神社と共に時代の流れを見ていた。
大事に育てられた桜に精霊が宿って当然。
なぜ、その精霊が泣いているのか不思議に思う。
『他にはありますか?』
「その巫女が言うには、夜に姿を現わすと言っていました」
『夜ですか……』
黒子「名前さん」
『あの、夜にまたこちらに来てもよろしいですか?』
宮司さんからの許可をもらい、夜に来ることになった。
一の鳥居をくぐる際に巫女さんから呼び止められた。
「桜…また咲きますか?私の祖母が桜が咲くのをいつも楽しみにしてました……」
桜が悲しんでる声は聞こえないけど、泣いているのはわかります
いつも泣きながら誰かの助けを求めているんです
黒子「大丈夫です。ボクたちに任せてください」
「はいっ……ありがとうございます」
時計の針は午後10時。
再び氷上神社を訪れた。
明るい時と比べて夜の神社は雰囲気が全く違ってみえた。
黒子「何か出てきてもおかしくないですね」
『ちょ、ちょっとテツくん?!』
怖くなってテツくんに抱きついてしまった。
黒子「冗談ですよ」
『笑えない冗談ですよ』
テツくんから離れて、懐中電灯の光を頼りに桜の元へ行く。
懐中電灯に照らされた桜を見つけて見上げた。
『テツくん見て』
上を指さした。
誰かが枝に座っている。
黒子「本当に出てきましたね」
女の子が泣いていた。
言葉がわかるのなら何があったか訊いてみたいと思う。
『どうして泣いているの?』
〈誰…?私、見えるの?〉
話せる人がいたのが初めてなのか、驚いた表情をみせる。
『どこが痛いの?』
〈足…刺さる……〉
黒子「名前さん、足に何か刺さってます」
女の子の足に懐中電灯の光に反射する何かを見つけた。
『ガラスだ……待ってて!すぐに取ってあげるから』
〈だめ、私の、取れない…〉
黒子「どういう意味でしょうか」
本当にあの子が桜の精霊なら、同じ場所にガラスが刺さっているのかもしれない。
桜の根元に懐中電灯を照らす。
『右足に刺さってるから、根元の右の部分に刺さってるのかも』
黒子「ありました」
意外にも深く刺さっていた。
桜が成長してガラスも巻き込んだみたい。
〈早く、取った〉
『傷つけたくない……どうしよう』
黒子「ボクに任せてください」
と言って、烏天狗の姿になったテツくん。
女の子のところに飛んでいった。
〈よ、かい…私、なかま?〉
黒子「はい、仲間ですよ。ボクが君に力を貸します。その力で根元を緩めてもらえませんか?」
『なるほど…力が弱まっていたのね』
女の子の手を握って力を分ける。
すると、木が音を立てて動き始めた。
バランスを崩した私を支えるかのように根っこが絡みついた。
そして、さっきまで深く刺さっていたガラスは簡単に取ることができた。
〈足…痛い、ない〉
『ふぅ、よかった』
黒子「名前さん、大丈夫ですか?」
『うん』
〈あり、がとう…〉
女の子の姿はなく、声だけが聞こえた。
『桜、咲くといいね』
安心して疲れが出てきたのか、急に睡魔が襲ってきた。
私達は懐中電灯を頼りに夜の道を進んだ。
「黒子っちと……誰っスか…?」
二人の姿がなくなってから桜の木に近づいた。
「知らん」
「すっごく気になるっス!」
「本人に聞けばいいのだよ」
帰るぞ、と言って二人はその場を後にした。
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