6章
名前変更
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ある晴れた日にちょっとした事件は起こる。
火神「名前!こいつはどこに置くんだ?」
『物置きにお願い。そこにテツくんいるから』
今日はちょっとした大掃除。
テツくんと大我に手伝ってもらっている。
火神「次は何すんだ?」
『えっとね、神棚から古くなったお供え物を交換してほしいな』
火神「どこにあんだ?」
神棚は神社含め家の中にたくさんある。
大我1人では大変だろうからお手伝いさんにも助けてもらおう。
『玄関にお母さんいるから、指示に従ってね』
火神「わかった」
それにしても、大我はよく働いてくれる。
終わったあとのご飯が目当てだけど。
黒子「こっちは終わりましたよ」
『ありがとう。ちょっと休憩しよっか」
2人で部屋に戻って一服。
美味しいお茶に昆布と梅を入れて飲む。
黒子「甘いものが食べたいですね」
『そだね』
棚から饅頭や生菓子を取りだした。
お茶に合うから美味しい。
最近はコーヒーにも合うことを知った。
黒子「あぁ、さっきこれを拾ったんです」
ポケットから取りだしたのは青く光る丸い水晶のようなものだった。
『誰かの落としものかな』
黒子「だとしたら、誰のでしょうか」
「ぅわあっ!?」
火神「うおっ!!?」
と、声がした。
何かあったに違いない。
声のする方へ向かうと、大我がなにかの下敷きになっていた。
『えーと……』
黒子「兎ですか?」
『そうだよね』
頭には長い耳、尻尾は小さくて丸い。
私を見て目を輝かせた。
「貴女が神子様ですね!!」
ぴょんと勢いよく立ち上がって私の手を握った。
「会いたかったです!!」
『あぁ、はい…』
火神「おい!いつまで乗ってんだよ!!」
「わあっ!?」
大我の声に驚いて耳や尻尾の毛が逆立っていた。
火神「てか、こいつ誰だよ!?」
因幡〈あ、申し遅れました。ワタシ、因幡の白うさぎです〉
イナバとお呼びください!と元気よく言う。
『へぇ、本当にいたんだぁ』
黒子「物語の中だけだと思ってました」
火神「その、なんとかの白うさぎってなんだ?」
3人「え」
知らないのに驚き。
『有名だと思うんだけどなー』
黒子「火神くんはバカですか」
因幡〈ショックです〉
火神「知らなくて悪かったな!!」
大昔、因幡国(現在の鳥取県)の高草
あるとき、うさぎは大水で隠岐の島まで流された。
そして、うさぎは岬に渡ろうと海にいたワニ(今でいうサメ)を欺いて利用した。
そのことをうさぎは言ってしまい、それに怒ったワニはうさぎを捕まえて毛皮を剥いだ。
泣いているうさぎを大勢の神様が見かけ、助言をするが逆に傷だらけになった。
しかし、大国主の神様のおかげでうさぎの痛みは引いた。
因幡の白うさぎはのちに「白兎大明神」と名付けられ、今では「白兎神社」として鳥取市白兎に祀られている–––––
因幡〈わかりましたか?〉
火神「お、おう」
『その白兎神社は皮膚病や火傷にご利益があるとされてるんだよね』
因幡〈さすが神子様です〉
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
喋らなかったらマスコットキャラになれそう。
黒子「その因幡の白うさぎが、どうしてここにいるんですか?」
因幡〈あ、そうです!この御神木の近くで青いものを見てませんか?〉
思い当たることがあった。
テツくんがポケットから出してイナバちゃんに見せる。
因幡〈これです!これがないと高天原に戻れないんですよ。大国主サマに怒られちゃいました〉
『イナバちゃんは大国主様に仕えてるの?』
因幡〈大国主サマを主人とし、高天原にお住まいになられている神々の伝言役もしています〉
高天原から地上を見守る神様が異変に気づき、地上にいる神々へ伝言に回る仕事をしているとのこと。
イナバちゃんが地上にいるのは何か起こるってことかな。
黒子「まさか、何か起こるんですか?」
因幡〈実は、大国主サマから伝言を預かってます〉
予感は的中してしまった。
悪いことではないことを願おう。
大我はいつの間にか仕事に戻っていた。
ここに2人しかいないことを確認したイナバちゃんが話を続ける。
因幡〈氷の神様をお祀りしている "氷上神社" に左近の桜があるのですが、その桜が去年から咲いていないそうです〉
『あぁ、知ってる。病気って聞いてるけど』
因幡〈病気ではないそうです。神主曰く、桜に宿っている精の元気がない、とのことです〉
左近の桜から泣き声が聞こえたり、雨が降っていないのに木が濡れていることもあるらしい。
因幡〈一度、氷上神社に行って欲しいのです〉
黒子「わかりました」
『えっ』
因幡〈話がわかってくれる方でよかったです!〉
では、よろしくお願いします、と頭を下げて姿を消した。
『そんな簡単に了解しちゃって…』
黒子「いいじゃないですか。初めてのお仕事ですよ?」
普段は滅多に面に出すことのない表情が、今目の前で表れている。
とても目を輝かせている。
初めて拝みました
『やる気があってなによりです』
黒子「はい」
火神「おーい、手伝ってくれ」
家のちょっとした大掃除を再開したテツくんと私であった。
※参考文献「山陰の昔ばなし」
多少文を変えています
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