5章
名前変更
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いよいよその日がやってきた。
考えすぎて授業どころではなかった。
先生からは体調が悪いように見えたようで保健室に連れていかれた。
「忙しいのはわかってるから、無理しちゃだめよ?」
今日は早退しなさい、と言われてゆっくり家に帰る。
先生の勘違いに救われた気がした。
家に帰れば当然、親や神職の方に心配された。
「果物もらってあるから食べようか」
『うん』
「元気なかったから、先生に心配されたんでしょ?」
朝から元気なかったもんね、とリンゴの皮を剥きながら言う。
うさぎさんが完成した。
『早くて今日、守護神の1人がわかる』
それを聞いてお母さんはリンゴを落としそうになった。
「あらやだ!私なにも用意してないよ」
『まだ、決まったわけじゃないから!』
「あ、ちょっと、名前?」
お母さんから逃げるように部屋に行った。
部屋に入ってベッドにダイブした。
『はぁ……どうしよ』
枕に顔をうずめて抱きしめた。
八咫烏〈不安か?〉
『……うん』
そうか、と言う。
顔をうずめているから、八咫烏がどんな表情をしているかわからない。
急にベッドが沈んだので八咫烏が腰かけたのだろう。
八咫烏〈大丈夫だ〉
『うん…ありがとう』
八咫烏の手が私の頭に乗った。
次第にその手は頭を撫でる。
八咫烏〈そろそろ時間だな〉
そう言って私の懐に収まった。
起き上がって蔵へ向かった。
『…わっ……』
〝箱〟が光っていた。
箱から羽団扇を取りだすと輝きが増した。
『眩しいっ!!』
黒子「離さないでください」
『て、テツくん!?』
後ろからいきなり声がして、羽団扇に手を伸ばして掴んだ。
もう片方は私の腰に回された。
そして、輝きが消えてバサッと音がした。
目の前を黒い羽がちらついた。
黒子「これで、貴女を守ることができます」
腰に回していた腕が離された。
振り向いて、目の前にいるテツくんに驚いた。
『テツくん?』
黒子「はい」
『ほんとにテツくんなんだね』
黒子「ボクが守護神の1人ですよ」
『ずっと、この烏天狗の姿なの?』
いえ、と言って、元のテツくんに戻った。
本当にテツくんが守護神の1人、烏天狗だったなんて。
八咫烏〈契約は済んだか?〉
黒子「あぁ、忘れていました」
守護神の願いを叶えないと成立しない。
一体テツくんは何を願うのだろうか。
『……』
黒子「そうですね…」
テツくんはもう一度烏天狗の姿になった。
黒子「では、ボクと一緒に来てください」
腕を掴み自分に寄せて抱きかかえる。
『えっ…テツくん!?』
テツくんがやってることはお姫様抱っこ。
黒子「しっかり掴まっててくださいね」
『え、ちょ……きゃっ!』
勢いよく飛び立つ。
下を見ると八咫烏や自分の家が小さくなっていた。
*****
『すごい……』
そこには一面に広がる夜景。
黒子「名前さんと一緒に見たかったんです」
『嬉しいななぁ』
空から夜景を一緒に見ることがテツくんの願い。
飛べるテツくんが羨ましく感じる。
黒子「そろそろ帰りましょうか」
『そうだね。テツくん、ありがとう』
家に戻れば八咫烏が縁側に座っていた。
『戻ってなかったの?』
八咫烏〈ああ。帰りを待っていた〉
『なにかあったの?』
スッと立ち上がってテツくんに近づいた。
八咫烏〈自らの手で主人を傷つけることは許されない。これは、"掟" に書かれていることだ〉
黒子「心得ています」
応えに小さく笑った八咫烏は懐に収まる。
いつの間にかテツくんは元に戻っていた。
『お腹空いたね。ご飯食べよっか』
黒子「名前さんが作るんですか?」
『もちろん!』
黒子「オムレツが食べたいです」
『任せて!』
テツくんも手伝ってくれるみたいで一緒に台所へ向かった。
「ほうほう……あれが〝神子〟様ですね」
桜の木の上に影がひとつ。
手には紙と筆が握られていて、何かをメモしていた。
「早く、大国主命サマの処へ行かないと」
そこには跡形もなく姿が消えていた。
小さな青い炎を残して––––
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