2章
名前変更
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昨日は考えすぎて変な夢を見てよく眠れなかった。
私は考えた。
『よし…もう一度寝よう』
布団に深く潜った。
太陽の香りと妖怪の気配がする。
『……えっ?』
確かに妖怪の気配がする。
私はすぐに悟った。
『あぁ、あの人だ』
これでは寝ようにも寝れない。
布団から出て居間に行く。
おばあちゃんともう一人の声が聞こえた。
「相変わらず、勝手に上がっては名前のご飯を食べるね」
?「本人がいないのが悪いんじゃよ」
やられた。
またあの人に食べられてしまった。
さすがはぬらりひょん。
『あなたが悪いんです!』
ぬら「それは褒め言葉かい?」
『褒めてないです』
ぬら「妖怪は悪さしてなんぼじゃよ」
親指をビシッと立ててニカッと笑う。
「かわいい悪さじゃないかい」
『おばあちゃん…』
ぬら「名前ちゃんはワシに厳しいんじゃよ」
『リクオくんに言いつけますからね!』
またリクオか!と言って逃げようとしていた。
ぬらりひょんという妖怪だけは見逃せない。
『今度からお金取りますよ?』
追いかけながらそう言った。
ぬら「タダ飯がいいんじゃ!」
『妖怪と言えどお金くらい持ってるでしょ!』
このご老体は俊敏な動きで私から逃げる。
ぬら「まだまだ若いもんには負けんよ」
ひょいっと飛んで屋根の上に着地した。
こうなったら……
捕縛の呪文を唱えるべく印を結ぶ。
ぬらりひょんさんはすでに屋根から下りていた。
それを目で追えば隙が見えてきた。
リクオ「もう!おじいちゃん!」
ぬら「な……!リクオ!?」
『"縛"!!』
リクオ「うわぁ!?」
見事に一つを除いて捕縛に成功した。
『わっ!リクオくん!』
リクオくんも巻き込んで捕縛していた。
そしてリクオくんだけを解放して、ぬらりひょんさんを二重捕縛した。
ぬら「さすがは陰陽師じゃ」
『どーも』
やっと捕まえた。
自然と口角が上がってしまう。
リクオ「名前さん、笑い方…」
『…あ、あはは』
ぬらりひょんさんを解放すると、ぱんぱんと着物を軽く叩いて汚れを落とす。
ぬら「さて、リクオが来たから帰るとするかの」
『用があって来たんじゃないんですか?』
ぬら「用ならもう済んだわい」
満足気な笑みでこちらを見た。
リクオ「あ、名前さん、たまには遊びに来てください!」
『うん!またね!』
何も言わず歩みを進めるぬらりひょんさんの後を、待ってよ、と言って走っていった。
さっきまで歩いていた足を急に止めて空を見上げる。
リクオ「どうしたの?」
ぬら「成長にしては、ちと早すぎやせんか」
リクオ「名前さん?」
ぬら「うむ…何もなければ良いが」
リクオ「うん、そうだね…」
*****
ぬらりひょんさんが家に来て蔵へ行くのが遅くなったけど、開いた箱を見に行った。
『ほんとだ…開いてる』
中を覗くと薄暗くはあるけど何かが入っていたので取りだした。
それは、羽で作られた団扇のようなもの。
『なんだろ……』
これについて書物に書かれているはず。
早く読めるようになろう。
謎が深まるばかりだった。
「羽の団扇が入ってたの?」
『うん』
「書物にはなんて?」
『今から読むところなの』
台所にいたお母さんに報告。
晩ご飯を作っているのでとてもいい匂いが漂っている。
匂いからして、ハンバーグだね。
「頭を使う前にご飯ね」
『うん!』
「熱いうちに食べなさいよ~」
『はーい』
うん、美味しい。
お母さんの作るものはなんでも美味しい。
頭を使うためにいつもよりたくさん食べた。
『ごちそうさま!』
「これで頑張れるね」
今から長期戦になりそうだ。
とにかく、羽団扇について記されているところだけでも読んでおきたい。
〝守護神を呼び覚ませ〟
『呼び覚ましてどうなるんだろ……』
ゆら「名前さん!」
『ゆらちゃん?』
外から呼ぶ声がして障子を開けると、息を切らしているゆらちゃんがいた。
ゆら「箱が開いたって本当ですか!?」
『う、うん』
ゆらちゃんを部屋に上げて話をする。
鞄から古びた本とノートを取りだして私に見せる。
ゆら「前に見せてくれた書物に似ているものを持ってきました」
ノートには訳が書かれていて、一人の
神子の力が強ければ強いほど守護神の勢力が増すと書かれている。
『その神子は花開院とも関係があったの?』
ゆら「大ありのようです。花開院家は代々、神子を影で支えてきたと書物にありました」
昔から苗字家と花開院家との間で友好関係が結ばれている。
苗字家から神子が生まれ、守護神が現れ、それを影で支えるのが花開院家。
『なるほど…』
次にページをめくれば守護神のことが書かれていた。
ゆら「名前さんの書物と同じ内容だと思います」
私から書物を受け取ると、ノートを見ながら読み解いていく。
〝烏天狗〟
守護神の一人が烏天狗だということがわかった。
『烏天狗って妖怪だよね?』
ゆら「本来はそうですね。ここではたぶん、八咫烏と同様かと」
烏天狗は神子の遣いとしてされてきたらしい。
『よく考えたら、守護神って妖怪だね』
書物を読んでいくと烏天狗以外の守護神は妖怪だとわかった。
でも、詳しく書かれていなかった。
ゆら「烏天狗が現れない限り、他の守護神は現れないそうです」
『えぇ!?それじゃあ、早く一人目の守護神を探さないとだね』
ゆら「八咫烏が探してくれるはずですよ」
『八咫烏って他の式神と違って、自由に喚べないんだよね』
この八咫烏はどうやら気まぐれのようだ。
これでも神様の遣いなのかな。
ゆら「あ、ここを見てください」
長々と書かれている行の一部に指をさす。
〝契約〟
〝守護神の望みを叶えよ〟
『望みを叶える……』
ゆら「はい。決して難しいことではないと思うので叶えてあげてください」
では、また来ます、と立ち上がる。
玄関まで見送ると思い出したようにこちらに振り向いた。
ゆら「守護神が現れるまでそう遠くはないですね」
お気をつけて、と言って頭を下げて歩き始めた。
姿が見えなくなったのを確認して部屋に戻ろうとしていたら見覚えのある人影があった。
『テツ…くん?』
ビュュュ
こちらに向かって風が吹いた。
『あれ…?』
風がおさまったときには姿はなかった。
風が吹いたときに八咫烏が光っていたことを私は知らない。
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