12章
名前変更
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実は名前と黄瀬の様子を見に後をついてきていた。
八咫烏〈大丈夫なのか?〉
黒子「心配無用です」
今が影の薄い黒子の本領発揮である。
八咫烏〈変なことに能力を利用するな……〉
黒子「いえ、これは大事なことです」
上空でそんな会話が行われ、二人が店に入ったのを確認して中の様子が見える位置に隠れた。
黒子「何ですかあれ、傍から見たらカップルじゃないですか」
八咫烏〈かっぷる…?〉
首を傾げる八咫烏に黒子は丁寧に説明した。
八咫烏〈なるほど……〉
黒子「あれ見て下さいよ」
八咫烏〈…普通に食べているようにしか見えないのだが〉
名前と黄瀬の頼んだメニューを互いに少し分けての食べ合いをしていた。
黒子「なんだか殺意芽生えてきました」
八咫烏〈おちつけ〉
そして、二人がカフェを出たのに気づいて上空を舞う。
黒子「次はどこに行くんでしょうね」
八咫烏〈目的を忘れてないか…?〉
黒子「何のことですか?」
八咫烏〈なんでもない……〉
今日の黒子は少し怖いと思う八咫烏だった。
*****
二人の後をついて行けば、見覚えのある店に入っていった。
以前、黒子が名前にオススメした和風の雑貨屋だった。
八咫烏〈確かに名前が好きそうな所だな〉
黒子「あの店は着物も売っているので、名前さんにぴったりです」
中の様子が見えないため、店の屋根上に二人は座っていた。
八咫烏〈時間かかりそうだな〉
黒子「そうですね……中でなにをやってるんでしょうね……」
後ろに黒いオーラが見えた気がした。
八咫烏〈その、おちつけ…〉
黒子「ボクは至って普通ですよ」
八咫烏〈そ、そうか〉
黒子「あ、出てきましたよ」
八咫烏〈欲しいものがあったみたいだな〉
そこには紙袋を眺めてニコニコする名前の姿があった。
黒子「そろそろ帰りましょうか」
八咫烏〈もういいのか?〉
黒子「きっとあの二人も帰ると思います」
楽しそうに歩く二人の背中を見つめる。
黒子は未だに不満を抱いているようだったが、名前に気づかれてはいけないと思い黒いオーラを引っ込めた。
黒子「帰ったら黄瀬くんを問い詰めますけどね」
八咫烏〈やはりそうか〉
二人の後をついて行くように空から帰路へ翼を羽ばたかせた。
*****
夕日に照らされて茜色に染まる鳥居が見えた。
黄瀬「今日は楽しかったっス」
『あまり外出しないから色々見れて楽しかったよ』
黄瀬「また誘ってもいいっスか?」
『もちろん!あ、でも今度からは連絡してね』
黄瀬「はいっス!」
満面の笑みで名前の手をぎゅっと握る。
その行動に少し頬が赤くなった。
黄瀬「あーもうお別れなんスね……なんか寂しいっス」
『別にもう会えないわけじゃないから』
黄瀬「じゃあ、暇なときは来てもいいっスか?」
『そのときは歓迎するよ』
しゅんとした表情から子供のような無邪気な笑顔に変わった。
それに微笑み返した瞬間、黄瀬の顔が近づいて頬に柔らかい感触がした。
黄瀬「へへ、隙ありっス」
『あ……え、と………?』
口付けされた頬に手を触れた。
黄瀬「これで "契約完了" っス!じゃあ、名前さんまた来るっス!」
にっこり笑って踵を返し、鳥居をくぐって階段を駆け下る。
名前は未だその場に立ち尽くしている。
八咫烏〈主人に懐っこい犬だったな〉
『え?』
八咫烏〈 "でーと" というものが契約だったようだ〉
少しの沈黙があり、名前は頭の整理をして我に返った。
『うそ!黄瀬くんが?!』
八咫烏〈うむ〉
鎌鼬が現れた数日後に、もう一つ開きかけだった箱がいつの間にか開いていた。
開いたことに気づきはしなかったが、こうして名前に近づいた黄瀬が次の守護神だと八咫烏は思ったのだった。
『それより、テツくんは?』
八咫烏〈もしや、気づいていたのか?〉
『うん、一応ね…』
あの黒いオーラが原因だと察した。
八咫烏〈烏天狗なら今頃、犬神の元だろう〉
黒子「あ、もう終わりました」
急に背後から登場した黒子に珍しく八咫烏が驚く。
名前は毎日のように驚かされているが未だに慣れていなかった。
『あれ?黄瀬くん?』
黄瀬「黒子っちから連れ戻されちゃいました」
黒子「いくら契約とはいえ、黄瀬くんのくせに許せないです」
黄瀬「くせにってなんスか!?」
黒子「犬のくせにがよかったですか?」
黄瀬「どっちも嫌っスよ!」
二人のやり取りを名前と八咫烏は温かい目で見ていた。
そして、空き部屋を利用して黄瀬は黒子から長時間の説教をくらったのであった。
─────
ある青年は何かを求めていた。
疲れ果てた様子の青年はオアシスと呼ぶべきであろう池にたどり着く。
「見つけた……」
池に手を浸けると青白く輝き、泳いでいた鯉が応えるように光る。
「早く、皆の元へ……」
目を閉じて星の輝く空を見上げた。
「ここが妖たちに穢される前に––––」
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