1章
名前変更
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私はおばあちゃんに連れられて、立海の校門の前に立っていた。
それにしても、
『大きい…!』
私、方向音痴なのに…
絶対迷子になります。
「名前、頑張ってね。ほら、金平糖だよ」
私の好物である金平糖を鞄の中に入れてくれた。
『こ、金平糖…!私、頑張れる気がする…』
小さな勇気を胸に、私はおばあちゃんに手を振って門をくぐった。
校内案内を頼りに、職員室に無事辿りついて、現在は、先生に連れられて教室に向かっていた。
なんだか、怖くなってきた…
理由は…
ここが、共学だから。
「じゃあ、入って来て」
という声がした。
まだ、心の準備が…
恐る恐るドアを開けて、教室に入った。
『…東京から、来た、苗字名前です。よろしくお願いします…』
ぺこりと頭を下げた。
あぁ、緊張した。
先生に言われて1番後ろの窓際の席に座った。
私の好きな席だった。
だが、隣と前の席は両方とも男が座っていた。
その二人からよろしくと言われたので、一応返事はした。
ここは窓際なのでいつも空を眺めていようと心に決めた。
*****
昼休みの時間になったので、屋上に行こうとしたら呼び止められた。
?「名前ちゃん!屋上でお昼一緒に食べない?」
初対面でしかも名前で呼ばれて少し驚いたが、ひとりで食べるよりは、と思って一緒に食べることにした。
やっぱり、屋上は気持ちいいなぁ。
立海でできた私の友達、山代 蒼ちゃん。
これからも仲良くしてくれるといいな。
蒼の方に目を向けると本を読んでいた。
『…蒼ちゃん、本…好きなの?』
蒼「実は私、本が好きで図書委員やってるんだよ!」
名前ちゃんは?と聞かれたので、好き、と答えた。
蒼「今日当番だから、放課後図書室おいでよ!本がいっぱいあるからさ」
『えっ、本当?』
本が私にとっては友達みたいな存在だったけど、やっと、友達ができた…
放課後になって、蒼に連れられて図書室に行った。
本当に図書室には本がたくさんあり、名前は目を輝かせて、本を探しに行った。
『……あった…』
読みたい本を見つけたものの、高い所にあったので背伸びをしても取れずに困っていたら、誰かが本を取ってくれた。
?「はい、どうぞ」
『あ…ありがとう、ございます』
相手が相手だったので、名前はお礼言って頭を下げた後、逃げるように席に戻った。
そして、自分が一番落ち着く窓際の隅っこの席に座って本を読んでいると、
?「そこ、座ってもいいかな?」
声にドキリとした。
さっきの男の人だ…。
でも、席なんてたくさんあるのに…?
恐る恐る顔を上げると、そこには優しい笑顔があって、
?「俺もここの席好きなんだよ、苗字名前さん」
『え…?』
どうして私の名前を…?
?「クラスで話題になっててね」
と言って、席に座ったら、
蒼「可愛いし、転校生だから話題になるよねぇ」
『あ、蒼ちゃん…』
図書委員の当番が終わった蒼が話に入ってきた。
蒼「あれ、精市じゃん」
『ゆ、幸村、精市……』
聞いたことのある名前だった。
蒼「名前ちゃん知ってるの?」
『な、名前だけなら…』
前の学校で噂されていた人物だった。
「山代さーん、書庫整理手伝ってくれない?」
蒼「あ、はーい。ごめんね名前ちゃん、もうちょっと待っててね」
蒼が司書の先生の手伝いに行ってから気まずくなってしまった。
少しの間沈黙が続き、それを紛らわすために名前は本に目を落とした。
だがその沈黙を破ったのは幸村だった。
幸村「…本、好きなんだね」
『あ、はい…』
幸村「俺のことは名前だけ知ってるって言ってたよね?」
『後は、テニス部の部長くらいです…』
どうして、こんな私に話かけるんだろう…
女の人なんてたくさんいるのに。
幸村「君に興味があるからだよ」
『えっ』
今の声に出てた?
驚いた名前は口に手を当てた。
幸村はニコニコ笑っている。
優しい…笑顔。
他の男の人とは違う…
でも、まだ信用できない。
いつかは、本性が現れるんだ…
名前は、自分にそう言い聞かせた。
それから10分くらい経つと、蒼が戻って来て、名前は図書室を出た。
帰り際に蒼がこんなことを聞いた。
蒼「精市と何話してたの?」
『えっ、な、何も…』
そう返したので、なぜか蒼は残念そうだった。
蒼「名前ちゃん、ひょっとして男が苦手?」
『…嫌いです』
苦手というよりは嫌いに近かった。
蒼「…そっか」
蒼はそれ以上何も言わなかった。
そして、思い出したように、
蒼「そうだ、図書室はどうだった?」
『好きな本がたくさんあったよ』
蒼「それは良かった」
と言って、名前の頭を撫でた。
『や、やめてよぉ、蒼ちゃん』
蒼「ねぇ!私たち、いい友達になれそうだね!」
いや、なれるよ、と蒼は言った。
その言葉で、名前の目には涙が溢れ出た。
蒼「ど、どうしたの!?」
『あ、蒼ちゃんの、言葉が…嬉しくて…』
蒼は何も言わず、名前の頭を撫でるだけだった。
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