母の愛
「ロロっ!もうやめろ」
弟がギアスを使っているのは、景色の変化と弟の顔色の変化でわかった。
なんで、そこまで助けようとする?俺はお前を騙していたんだ。俺は、許されないことを沢山やったんだ。生きてはいけないのに、何故俺を生かそうとする?
「くっ⋯⋯っ!」
「ロロ!!」
いくら止めようとしてもギアスを使われていて、声は届かない。
追いかけてきたモルドレッドの攻撃が蜃気楼の機体に当たってしまう。激しい揺れにもう無理かと諦めたその時だった。
辺り一面に、突如として真っ白な光が広がった。
「っ!?なんだ」
考える暇もなく、俺の視界は光に包まれた。
「⋯なに?」
追いかけていたゼロの機体である蜃気楼がいきなり光を放ち、気付いた頃には消えていたのを、アーニャは不思議そうに見ていた。
身体の痛さに思わず目を開ける。
辺りはさっきのとは違って一面白の空間しかなかった。
「ロロ、ロロ。どこにいる!」
一緒にいたはずの弟の姿が見えず、必死に叫ぶが声は返ってこない。ロロはどこにいるのか、無事なのか、そんな風にぐるぐるしていると、背後から突然、若い女の声が聞こえた。
「ロロ君はここよ、ルルーシュ」
(⋯⋯⋯⋯え?)
懐かしさでいっぱいになる、もう聞けないはずの声。だって、この声の持ち主は、もう⋯⋯⋯。
震える身体を抑えてゆっくりと後ろへ振り返る。
そこにいたのは、一人の女性だった。
豊かな黒い髪、橙色のドレスはあの日彼女が着ていたもの、瞳の色は薄い紫で、暖かな感情が乗っていた。
いるはずがない。ましてや動いて、話せるはずがない。だって、彼女は、あの日ナナリーを庇って死んだのだから。
「母さん?」
ぽつりと呟いた俺に、彼女は、母さんは困ったように微笑んで俺を見つめていた。
「久しぶりね、ルルーシュ」
記憶と全く変わらない母さんに唖然とする。
「なんで、母さんが⋯⋯生きていたのか?」
「いいえ、残念ながら肉体はもうないの。ここはCの世界と現実との狭間。あなたを助ける為に無理矢理引き込んでしまったの」
「Cの世界との、狭間」
「そうよ。まぁ、あなたも私も色々言いたいことはあるけれど、」
母は俺に近づくと、そっとその細い手を俺の頭に乗っけた。
「こんなに大きくなっちゃって。あの頃はまだまだ小さかったのに」
「か、あさん」
「よくこんなに頑張ったわね、ルルーシュ」
母に引き寄せられて、優しく抱きしめられた。それは、在りし日の思い出に重なって。
「⋯ごめんなさい、あなたとナナリーを置いていってしまって。あなた達に悲しい思いをさせちゃって」
「っ!」
「ずっと見てた、あなたの反逆を。色々言いたい、叱りたい。だけど、私にその権利はないわ」
「そん、なこと」
「こんなに限界まで頑張って、一人で抗って、自分を犠牲にしようとするルルーシュを見ていて辛かった。あなたにこんな選択をさせてしまった現実が悲しかったの」
「母さん」
「だけどね、嬉しくもあった。あなたがナナリーの為に戦って、私の死の真相を突き止めようとしてくれて」
「⋯⋯⋯」
「母さん不安だったのよ。あなたとナナリーが無事に生きていけるのか。⋯⋯ナナリーのこと、守ってくれてありがとう、大人しくて人見知りだったのに、いつの間にこんなに立派になっちゃって」
「⋯」
「ごめんなさい、あなた達を守ってあげられなくて。これじゃあ母さん失格ね」
いつも優しく笑っていた母さんが見せる、悲しげな表情に、咄嗟に思いが溢れてしまう。
「っ、そんなことないですっ!母さんがいてくれたから、俺もナナリーも生きてこれた!」
「ルルーシュ⋯⋯⋯」
「そんなこと言わないでください。母さんは俺達の心を守ってくれました。日本に送られた後も、母さんとの思い出が俺を支えてくれた、俺にとってのヒーローは母さんなんです!」
「⋯どうして、あなたはこんなに、優しくなっちゃったのかしら」
ねえ、ルルーシュ。
「私ね、あなたには生きていてほしいの」
「⋯⋯⋯えっ」
「確かにあなたは許されないことをした、犯してはいけない罪がある」
だけど、
「あなたが私の子供に生まれてくれて、嬉しかったわ。どんなにへこんだり、傷ついた時もあなたとナナリーが笑ってくれるだけで、たっくさんの勇気が湧いたの」
「母さんっ」
「今まで頑張ってきたあなたが、幸せになれないなんて、そんなの私嫌よ」
「⋯だけど俺は、沢山の人の命を、奪って⋯⋯」
「誰かの死を悲しむ人がいるように、あなたの死を悲しむ人もいるってことよ。私欲張りだから」
母さんの顔は誰よりも頼りになるような、自信に満ち溢れた顔で。
「あなたはきっとやり切れる。なんたって私の子なんだから」
「⋯⋯はい、母さん」
俺に生きていてほしいなんて言う人がいるとは思わなかった。だって、俺は沢山の人を殺めたから。ナナリーは死に、C.C.は記憶喪失、スザクに裏切られ、黒の騎士団にも裏切られた。もう、守るべきものはない。それなら、今までの罪を償う為に死ぬべきだと思った。
だけど、俺の生を願ってくれる人がいる。母さんに、それに、
「ロロ」
そうだ、ロロはどこにいる。
「母さん、ロロは一体どこに」
「それならあそこよ」
母さんが指を指した方へ目線を動かすと、そこには⋯
「ロロ、と蜃気楼?」
そこには、眠ったように動かないロロと、自分の専用機体の蜃気楼があった。
「ロロ君は大丈夫。ただ疲れて眠っているだけだから」
「よかった⋯」
ほっと息が漏れる。俺はまた、何かを失わずに済んだ。
「⋯⋯⋯さて、そろそろ時間ね」
ロロの状態を確認していると、母さんがそう言った。
「そんな」
「しょうがないわ。こうして話せたのが奇跡なの⋯⋯⋯⋯それじゃあ、さようなら、ルルーシュ。あなたのこと、ずっと見守っているから」
「っ、はいっ、母さん。必ず生きてみせます!」
俺が宣言すると、母さんは満足そうに消えていった。
弟がギアスを使っているのは、景色の変化と弟の顔色の変化でわかった。
なんで、そこまで助けようとする?俺はお前を騙していたんだ。俺は、許されないことを沢山やったんだ。生きてはいけないのに、何故俺を生かそうとする?
「くっ⋯⋯っ!」
「ロロ!!」
いくら止めようとしてもギアスを使われていて、声は届かない。
追いかけてきたモルドレッドの攻撃が蜃気楼の機体に当たってしまう。激しい揺れにもう無理かと諦めたその時だった。
辺り一面に、突如として真っ白な光が広がった。
「っ!?なんだ」
考える暇もなく、俺の視界は光に包まれた。
「⋯なに?」
追いかけていたゼロの機体である蜃気楼がいきなり光を放ち、気付いた頃には消えていたのを、アーニャは不思議そうに見ていた。
身体の痛さに思わず目を開ける。
辺りはさっきのとは違って一面白の空間しかなかった。
「ロロ、ロロ。どこにいる!」
一緒にいたはずの弟の姿が見えず、必死に叫ぶが声は返ってこない。ロロはどこにいるのか、無事なのか、そんな風にぐるぐるしていると、背後から突然、若い女の声が聞こえた。
「ロロ君はここよ、ルルーシュ」
(⋯⋯⋯⋯え?)
懐かしさでいっぱいになる、もう聞けないはずの声。だって、この声の持ち主は、もう⋯⋯⋯。
震える身体を抑えてゆっくりと後ろへ振り返る。
そこにいたのは、一人の女性だった。
豊かな黒い髪、橙色のドレスはあの日彼女が着ていたもの、瞳の色は薄い紫で、暖かな感情が乗っていた。
いるはずがない。ましてや動いて、話せるはずがない。だって、彼女は、あの日ナナリーを庇って死んだのだから。
「母さん?」
ぽつりと呟いた俺に、彼女は、母さんは困ったように微笑んで俺を見つめていた。
「久しぶりね、ルルーシュ」
記憶と全く変わらない母さんに唖然とする。
「なんで、母さんが⋯⋯生きていたのか?」
「いいえ、残念ながら肉体はもうないの。ここはCの世界と現実との狭間。あなたを助ける為に無理矢理引き込んでしまったの」
「Cの世界との、狭間」
「そうよ。まぁ、あなたも私も色々言いたいことはあるけれど、」
母は俺に近づくと、そっとその細い手を俺の頭に乗っけた。
「こんなに大きくなっちゃって。あの頃はまだまだ小さかったのに」
「か、あさん」
「よくこんなに頑張ったわね、ルルーシュ」
母に引き寄せられて、優しく抱きしめられた。それは、在りし日の思い出に重なって。
「⋯ごめんなさい、あなたとナナリーを置いていってしまって。あなた達に悲しい思いをさせちゃって」
「っ!」
「ずっと見てた、あなたの反逆を。色々言いたい、叱りたい。だけど、私にその権利はないわ」
「そん、なこと」
「こんなに限界まで頑張って、一人で抗って、自分を犠牲にしようとするルルーシュを見ていて辛かった。あなたにこんな選択をさせてしまった現実が悲しかったの」
「母さん」
「だけどね、嬉しくもあった。あなたがナナリーの為に戦って、私の死の真相を突き止めようとしてくれて」
「⋯⋯⋯」
「母さん不安だったのよ。あなたとナナリーが無事に生きていけるのか。⋯⋯ナナリーのこと、守ってくれてありがとう、大人しくて人見知りだったのに、いつの間にこんなに立派になっちゃって」
「⋯」
「ごめんなさい、あなた達を守ってあげられなくて。これじゃあ母さん失格ね」
いつも優しく笑っていた母さんが見せる、悲しげな表情に、咄嗟に思いが溢れてしまう。
「っ、そんなことないですっ!母さんがいてくれたから、俺もナナリーも生きてこれた!」
「ルルーシュ⋯⋯⋯」
「そんなこと言わないでください。母さんは俺達の心を守ってくれました。日本に送られた後も、母さんとの思い出が俺を支えてくれた、俺にとってのヒーローは母さんなんです!」
「⋯どうして、あなたはこんなに、優しくなっちゃったのかしら」
ねえ、ルルーシュ。
「私ね、あなたには生きていてほしいの」
「⋯⋯⋯えっ」
「確かにあなたは許されないことをした、犯してはいけない罪がある」
だけど、
「あなたが私の子供に生まれてくれて、嬉しかったわ。どんなにへこんだり、傷ついた時もあなたとナナリーが笑ってくれるだけで、たっくさんの勇気が湧いたの」
「母さんっ」
「今まで頑張ってきたあなたが、幸せになれないなんて、そんなの私嫌よ」
「⋯だけど俺は、沢山の人の命を、奪って⋯⋯」
「誰かの死を悲しむ人がいるように、あなたの死を悲しむ人もいるってことよ。私欲張りだから」
母さんの顔は誰よりも頼りになるような、自信に満ち溢れた顔で。
「あなたはきっとやり切れる。なんたって私の子なんだから」
「⋯⋯はい、母さん」
俺に生きていてほしいなんて言う人がいるとは思わなかった。だって、俺は沢山の人を殺めたから。ナナリーは死に、C.C.は記憶喪失、スザクに裏切られ、黒の騎士団にも裏切られた。もう、守るべきものはない。それなら、今までの罪を償う為に死ぬべきだと思った。
だけど、俺の生を願ってくれる人がいる。母さんに、それに、
「ロロ」
そうだ、ロロはどこにいる。
「母さん、ロロは一体どこに」
「それならあそこよ」
母さんが指を指した方へ目線を動かすと、そこには⋯
「ロロ、と蜃気楼?」
そこには、眠ったように動かないロロと、自分の専用機体の蜃気楼があった。
「ロロ君は大丈夫。ただ疲れて眠っているだけだから」
「よかった⋯」
ほっと息が漏れる。俺はまた、何かを失わずに済んだ。
「⋯⋯⋯さて、そろそろ時間ね」
ロロの状態を確認していると、母さんがそう言った。
「そんな」
「しょうがないわ。こうして話せたのが奇跡なの⋯⋯⋯⋯それじゃあ、さようなら、ルルーシュ。あなたのこと、ずっと見守っているから」
「っ、はいっ、母さん。必ず生きてみせます!」
俺が宣言すると、母さんは満足そうに消えていった。
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