大嫌いな人
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実家への帰省もそこそこに、奏は自分の住んでるマンションへ帰った。
栄純が何かを言いたそうにしていたのが気になったが。
“どうだった?おじさん達元気だったか?”
『うん、浩輔達も元気だったよ。』
“あいつ等も受験か…。”
『多分、県内の高校受けるんじゃないかな。向こうで野球やるんだと思う。』
“それなら会う時は甲子園か。”
『やだ一也、まだ先の話なのに(笑)』
“浩輔と捕手対決出来んだろ?楽しみじゃね?”
『ふふ、そうだね。』
“明日、練習見に来る?”
『うん。』
“分かった、じゃあ明日な。”
『…お休み。』
電話を切って布団に入る。
明日は何か差し入れしようと考え、眠りに就いた。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
翌日、いつもより少し遅めに起きた奏。
定番ではあるが、レモンの蜂蜜漬けを作って野球部に差し入れに行った。
『あ、やってる。』
グラウンドを見渡し、高島を見つけた。
『高島先生。』
「あら藤堂さん、今日はどうしたの?」
『これを差し入れしに来ました。』
「蜂蜜レモン?」
『はい。定番ですけどね。』
それを高島に渡して練習を眺める。
休憩となった一也が奏に気付いて駆け寄ってきた。
『お疲れ様。』
「とりあえずな。ところでいつの間に来たんだ?」
『さっきだよ。今日いつもより起きたの遅くて…差し入れも簡単な物しか出来なかったの。』
「別に差し入れなんか良いのに。」
そう言いつつも高島の持ってる袋に目を向ける一也。
「礼ちゃん、それ?」
「そうよ。」
「どれどれ……お、レモンか。」
『一也も食べるでしょ?だからあまり甘くしないように気を付けたつもり。』
「それじゃあ、味見を……!」
袋を取ろうとした一也が消えた。
いや、倉持に蹴飛ばされていた。
「何、てめぇだけ抜け駆けしてんだ?」
「倉持…痛い」
「当たり前ぇだ!俺ら差し置いてお前だけ美味そうなモン食おうとしやがって。」
「いやぁ、せっかく奏が差し入れくれたわけだし…「へぇ、先輩より先に食べるんだ?御幸は。」…あら~…」
凄みのある笑顔で一也の目の前に立つのは亮介。
伊佐敷は一也にヘッドロックをかけた。
「痛ぇ!」
「亮介の言う通り。それは“御幸に”じゃなくて“野球部に”差し入れなんだろ?」
『(ここで返答間違えたら私もあぁなるのかな…。それは嫌。)はい、野球部の皆さんで食べてもらいたくて。』
「奏!?(お前、逃げたな!)」
『(逃げますとも、自分の身が可愛いので。)』
目だけで会話をする奏と一也を他所に、一斉に群がる野球部。
「うまっ!」
「絶妙な甘さで良いね。」
「合宿の時も藤原と並んで形の良いおにぎり作ってたもんなぁ…」
「これを御幸は独り占めしようとしてたのかよ…」
部員達が美味しそうに食べるのを嬉しそうな顔で眺める。
チラリと隣を見やれば、ブスッとした一也がいる。
『拗ねないでよ。』
「あそこは俺に差し入れって言って欲しかった。」
『はいはい。こんな事もあろうかと思って…はい。』
奏が鞄から取り出したのは少し小さめな箱。
「俺に?」
『うん、こっちは本当に甘さ控えめだよ?』
「…ありがとな。」
『どういたしまして。』
中身を頬張る一也を横目に、ふとグラウンドへ入ってきた人物が視界へと映る。
『(片岡監督のお客様かな?)』
その人物は辺りをキョロキョロとしていて、ふいに顔が見えれば奏は自身の顔が強張っていくのが分かった。
『(…どう…して……)』
「何で…何で!!私ばかりがこの子を見なきゃいけないのよ!?」
『や!』
「嫌なのは私よ!」
バシン!
『うわぁぁぁん!!』
「うるっさいわね!いちいち叩かれた位で泣くんじゃないわよ!!…泣きたいのは私なのに…!」
脳裏に蘇る記憶。
どんなに忘れたがっても身体は覚えているのか、心臓が激しく鳴り震えが止まらない。
「奏?」
『(何でいるの?お願いだからこのまま気付かないで)』
一也の呼び掛けにも反応出来ない程、意識はそちらに向いていた。
「(この怯えようは何だ?)奏!」
『!な、何?』
「どうした?何かいたか?」
『ううん……何でもない……(そうよ、もう私はあの人の娘じゃないんだから、赤の他人なんだから。)』
「何でもないはずないだろ!……それとも俺はそんなに頼りない?」
『違っ…』
「練習始めるぞー!」
「……戻るわ。」
『…一也………!』
next
栄純が何かを言いたそうにしていたのが気になったが。
“どうだった?おじさん達元気だったか?”
『うん、浩輔達も元気だったよ。』
“あいつ等も受験か…。”
『多分、県内の高校受けるんじゃないかな。向こうで野球やるんだと思う。』
“それなら会う時は甲子園か。”
『やだ一也、まだ先の話なのに(笑)』
“浩輔と捕手対決出来んだろ?楽しみじゃね?”
『ふふ、そうだね。』
“明日、練習見に来る?”
『うん。』
“分かった、じゃあ明日な。”
『…お休み。』
電話を切って布団に入る。
明日は何か差し入れしようと考え、眠りに就いた。
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翌日、いつもより少し遅めに起きた奏。
定番ではあるが、レモンの蜂蜜漬けを作って野球部に差し入れに行った。
『あ、やってる。』
グラウンドを見渡し、高島を見つけた。
『高島先生。』
「あら藤堂さん、今日はどうしたの?」
『これを差し入れしに来ました。』
「蜂蜜レモン?」
『はい。定番ですけどね。』
それを高島に渡して練習を眺める。
休憩となった一也が奏に気付いて駆け寄ってきた。
『お疲れ様。』
「とりあえずな。ところでいつの間に来たんだ?」
『さっきだよ。今日いつもより起きたの遅くて…差し入れも簡単な物しか出来なかったの。』
「別に差し入れなんか良いのに。」
そう言いつつも高島の持ってる袋に目を向ける一也。
「礼ちゃん、それ?」
「そうよ。」
「どれどれ……お、レモンか。」
『一也も食べるでしょ?だからあまり甘くしないように気を付けたつもり。』
「それじゃあ、味見を……!」
袋を取ろうとした一也が消えた。
いや、倉持に蹴飛ばされていた。
「何、てめぇだけ抜け駆けしてんだ?」
「倉持…痛い」
「当たり前ぇだ!俺ら差し置いてお前だけ美味そうなモン食おうとしやがって。」
「いやぁ、せっかく奏が差し入れくれたわけだし…「へぇ、先輩より先に食べるんだ?御幸は。」…あら~…」
凄みのある笑顔で一也の目の前に立つのは亮介。
伊佐敷は一也にヘッドロックをかけた。
「痛ぇ!」
「亮介の言う通り。それは“御幸に”じゃなくて“野球部に”差し入れなんだろ?」
『(ここで返答間違えたら私もあぁなるのかな…。それは嫌。)はい、野球部の皆さんで食べてもらいたくて。』
「奏!?(お前、逃げたな!)」
『(逃げますとも、自分の身が可愛いので。)』
目だけで会話をする奏と一也を他所に、一斉に群がる野球部。
「うまっ!」
「絶妙な甘さで良いね。」
「合宿の時も藤原と並んで形の良いおにぎり作ってたもんなぁ…」
「これを御幸は独り占めしようとしてたのかよ…」
部員達が美味しそうに食べるのを嬉しそうな顔で眺める。
チラリと隣を見やれば、ブスッとした一也がいる。
『拗ねないでよ。』
「あそこは俺に差し入れって言って欲しかった。」
『はいはい。こんな事もあろうかと思って…はい。』
奏が鞄から取り出したのは少し小さめな箱。
「俺に?」
『うん、こっちは本当に甘さ控えめだよ?』
「…ありがとな。」
『どういたしまして。』
中身を頬張る一也を横目に、ふとグラウンドへ入ってきた人物が視界へと映る。
『(片岡監督のお客様かな?)』
その人物は辺りをキョロキョロとしていて、ふいに顔が見えれば奏は自身の顔が強張っていくのが分かった。
『(…どう…して……)』
「何で…何で!!私ばかりがこの子を見なきゃいけないのよ!?」
『や!』
「嫌なのは私よ!」
バシン!
『うわぁぁぁん!!』
「うるっさいわね!いちいち叩かれた位で泣くんじゃないわよ!!…泣きたいのは私なのに…!」
脳裏に蘇る記憶。
どんなに忘れたがっても身体は覚えているのか、心臓が激しく鳴り震えが止まらない。
「奏?」
『(何でいるの?お願いだからこのまま気付かないで)』
一也の呼び掛けにも反応出来ない程、意識はそちらに向いていた。
「(この怯えようは何だ?)奏!」
『!な、何?』
「どうした?何かいたか?」
『ううん……何でもない……(そうよ、もう私はあの人の娘じゃないんだから、赤の他人なんだから。)』
「何でもないはずないだろ!……それとも俺はそんなに頼りない?」
『違っ…』
「練習始めるぞー!」
「……戻るわ。」
『…一也………!』
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