かなわない
namechange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー正捕手争いしたいんだ。
私はその時の一也の表情を忘れない。
正直、クリス先輩が膝をついても尚平気だと言った時…心の底から苛立ちが募った。
分かってる。
クリス先輩は周りから期待されてて今まで頑張ってた。
そんなクリス先輩に苛立ちを向けても仕方ないんだって。
でも……一也は、クリス先輩との正捕手争いを楽しみにしてたんだと思うと言わずにはいられなかった。
『(あのシニアの試合は私でも凄いと思ったのに…)』
だけど、私よりも一也と莉愛のショックはデカいんだろうな。
『…切り替えなきゃ。』
目を閉じて深呼吸する。
さ、お弁当作り再開しないと。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
『おはよ。』
「奏、おはよ。」
「…はよ。」
『く、倉持君、何か眠そうだね。』
「すっげぇ眠ぃ…。」
「はっはっはっ、遅くまでゲームしてっからだろ。」
「お前だって昨日DVD見てたろうが。」
「俺はちゃんと寝てるし?」
『…授業中に寝るのは駄目だけどね。』
一也が寝てるのは授業中だと思う。
現国は起きてるけど…。
「…そういやぁ、城崎休みだってな。」
「…川上が言ってたな。」
『(…莉愛…大丈夫かな。)』
「なぁ、藤堂は何であの時分かったんだ?」
『何が?』
「…クリス先輩の故障。」
何でと言われても…
『…違和感があったの。』
「「違和感?」」
『うん。何て言うか…尋常じゃない汗の量に息切れ、肩を少し庇ってる風にも見えた。』
「…おまっ……すげぇな。」
「…おじさん、確か医者だっけ?」
『うん。』
「佐伯さんも?」
『ううん、あの人はたまたま父さんの知り合いのとこにいただけ。』
「…そか。」
そう、あの時連絡したらたまたま佐伯さんがいた。
自分が迎えに行くから準備を頼むと言って来たらしい。
「つか、その佐伯さん?って人なんか藤堂に似てたよな。」
「(ほんと…コイツよく見てるな。)」
『そ、そう?』
「なんつーか雰囲気みたいなのが。」
『気のせいじゃない?』
倉持君て、観察力あるよね。
敢えて実父とは言う気ないけど…。
「あ、忘れてた。奏に伝言。」
『私に?誰から??』
「片岡監督。」
『…へ?』
「後で来るようにってさ。」
『…後でっていつ?』
「さあ?休み時間にでも行けば良いんじゃね?」
その後、私は一也の言う通りに休み時間を利用して片岡監督に会いに行った。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
コンコン
『片岡先生、藤堂です。』
「入れ。」
『失礼します。』
職員室、片岡先生以外に人はいなかった。
『えと…かず…御幸君から伝言をお聞きしました。』
「…佐伯先輩から娘を頼むと言われた。それは藤堂で間違いないか?」
『は、はい。』
「…しかし名字が違うのは何故だ?母親の姓でもないだろう?」
『…片岡先生は実母をご存知なんですね。』
私はありのまま全てを話した。
話をしていく内に片岡先生の表情が僅かに暗くなっていく。
「…そうか……先輩達は離婚していたのか。」
『…実母も青道だったんですか?』
「あぁ……。頭が良くて周りから頼られる先輩だったな、俺もよくお世話になったもんだ。」
『……正直、私は実母に良い思い出はありません。というより、もう殆ど覚えてないんです。』
覚えてないのではなく覚えていたくないが本音。
片岡先生は静かに口を開いた。
「…何か困った事があれば気軽に言ってこい。」
『…あ、ありがとうございます。』
「…野球部のマネージャーではなくトレーナーとして入る気は?」
『…私に知識はありませんし、あの時も無我夢中でしたので……申し訳ありませんがお断りさせて下さい。』
「無理にとは言わん。」
『…たまに練習見に行きます。』
「あぁ。もう戻っていい。」
『はい、失礼しました。』
扉を閉めて、はふっと息を吐く。
…すっごく緊張した。
『(一也達は大変そうだなぁ…片岡先生厳しいだろうし。)』
私でもこんなに緊張するんだから、一也達はもっと緊張するんだろうな。
…いつか片岡先生の知る佐伯さんと実母の話を聞けたら良いな。
「おかえり……何か言われた?」
『ううん。』
「…妙に機嫌良いよな?」
『ふふ……片岡先生、素敵だね。』
「は!?」
「ヒャハッ、御幸に強敵か?」
「ちょっ……マジ?」
『ふふ。』
「奏!?」
next
私はその時の一也の表情を忘れない。
正直、クリス先輩が膝をついても尚平気だと言った時…心の底から苛立ちが募った。
分かってる。
クリス先輩は周りから期待されてて今まで頑張ってた。
そんなクリス先輩に苛立ちを向けても仕方ないんだって。
でも……一也は、クリス先輩との正捕手争いを楽しみにしてたんだと思うと言わずにはいられなかった。
『(あのシニアの試合は私でも凄いと思ったのに…)』
だけど、私よりも一也と莉愛のショックはデカいんだろうな。
『…切り替えなきゃ。』
目を閉じて深呼吸する。
さ、お弁当作り再開しないと。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
『おはよ。』
「奏、おはよ。」
「…はよ。」
『く、倉持君、何か眠そうだね。』
「すっげぇ眠ぃ…。」
「はっはっはっ、遅くまでゲームしてっからだろ。」
「お前だって昨日DVD見てたろうが。」
「俺はちゃんと寝てるし?」
『…授業中に寝るのは駄目だけどね。』
一也が寝てるのは授業中だと思う。
現国は起きてるけど…。
「…そういやぁ、城崎休みだってな。」
「…川上が言ってたな。」
『(…莉愛…大丈夫かな。)』
「なぁ、藤堂は何であの時分かったんだ?」
『何が?』
「…クリス先輩の故障。」
何でと言われても…
『…違和感があったの。』
「「違和感?」」
『うん。何て言うか…尋常じゃない汗の量に息切れ、肩を少し庇ってる風にも見えた。』
「…おまっ……すげぇな。」
「…おじさん、確か医者だっけ?」
『うん。』
「佐伯さんも?」
『ううん、あの人はたまたま父さんの知り合いのとこにいただけ。』
「…そか。」
そう、あの時連絡したらたまたま佐伯さんがいた。
自分が迎えに行くから準備を頼むと言って来たらしい。
「つか、その佐伯さん?って人なんか藤堂に似てたよな。」
「(ほんと…コイツよく見てるな。)」
『そ、そう?』
「なんつーか雰囲気みたいなのが。」
『気のせいじゃない?』
倉持君て、観察力あるよね。
敢えて実父とは言う気ないけど…。
「あ、忘れてた。奏に伝言。」
『私に?誰から??』
「片岡監督。」
『…へ?』
「後で来るようにってさ。」
『…後でっていつ?』
「さあ?休み時間にでも行けば良いんじゃね?」
その後、私は一也の言う通りに休み時間を利用して片岡監督に会いに行った。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
コンコン
『片岡先生、藤堂です。』
「入れ。」
『失礼します。』
職員室、片岡先生以外に人はいなかった。
『えと…かず…御幸君から伝言をお聞きしました。』
「…佐伯先輩から娘を頼むと言われた。それは藤堂で間違いないか?」
『は、はい。』
「…しかし名字が違うのは何故だ?母親の姓でもないだろう?」
『…片岡先生は実母をご存知なんですね。』
私はありのまま全てを話した。
話をしていく内に片岡先生の表情が僅かに暗くなっていく。
「…そうか……先輩達は離婚していたのか。」
『…実母も青道だったんですか?』
「あぁ……。頭が良くて周りから頼られる先輩だったな、俺もよくお世話になったもんだ。」
『……正直、私は実母に良い思い出はありません。というより、もう殆ど覚えてないんです。』
覚えてないのではなく覚えていたくないが本音。
片岡先生は静かに口を開いた。
「…何か困った事があれば気軽に言ってこい。」
『…あ、ありがとうございます。』
「…野球部のマネージャーではなくトレーナーとして入る気は?」
『…私に知識はありませんし、あの時も無我夢中でしたので……申し訳ありませんがお断りさせて下さい。』
「無理にとは言わん。」
『…たまに練習見に行きます。』
「あぁ。もう戻っていい。」
『はい、失礼しました。』
扉を閉めて、はふっと息を吐く。
…すっごく緊張した。
『(一也達は大変そうだなぁ…片岡先生厳しいだろうし。)』
私でもこんなに緊張するんだから、一也達はもっと緊張するんだろうな。
…いつか片岡先生の知る佐伯さんと実母の話を聞けたら良いな。
「おかえり……何か言われた?」
『ううん。』
「…妙に機嫌良いよな?」
『ふふ……片岡先生、素敵だね。』
「は!?」
「ヒャハッ、御幸に強敵か?」
「ちょっ……マジ?」
『ふふ。』
「奏!?」
next