サヨナラ
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保健室ー
ベッドに寝ている奏の頬を撫でる。
触れても彼女が起きる気配はなかった。
「御幸君、藤堂さんの事は私に任せて教室戻りなさい。」
「…お願いします。」
俺は保健室を出て教室に向かう途中も色々と考えてみた。
登校する時と休み時間は奏と一緒にいる。
下校時に俺や葛西がいない時は城崎が一緒。
周りがアイツに何も出来ない様に…。
…本当に?
「(…くそ!考えても何も浮かばねぇ…)」
今は奏が目覚めるまで待とう。
葛西の事は同じクラスの城崎が何か聞いてるだろうし。
…奏は自分に何かあっても俺が手出しするのを嫌がる。
そう言ってたのは確か…奏の実父に会った時か。
ーーーーーーー
ーーーー
ー
約1ヶ月前、俺は約束通り奏と一緒に会いに行った。
おじさんは俺がいるから大丈夫だろうと判断してくれて任せてくれた。
「何処で待ち合わせ?」
『えと、改札だって。』
駅の改札に着けば、スーツ姿で少し若めの男性が俺らを見つけて駆け寄ってきた。
「こんばんは。」
「…ども。」
『こんばんは。』
「彼は?」
『…私の幼なじみ…』
「幼なじみ……そうか。」
嬉しさを噛み締める様に微笑む男性は、奏にどことなく似ていて変な感じだった。
「2人とも、ご飯は食べたかい?」
『…まだ…』
「じゃあ、ファミレスでも行こうか。」
近くのファミレスに入って、自己紹介する。
「私は佐伯幸人、話は聞いてるとは思うけど奏の実の父親だよ。」
「…御幸一也です、奏とは幼い頃から一緒です。」
「そうか、幼なじみなだけと感じないのは気のせいかな?」
「いえ、彼女とはお付き合いしてます。」
「やっぱり。」
奏の方を見て佐伯さんは微笑む。
恥ずかしいのか、顔を下に向けてしまった。
…俺も少し恥ずかしいかも。
「…幸せそうでなりよりだよ。」
『…うん……幸せです。』
「学校で嫌な事とかないかい?」
『……大丈夫。』
「まあ、御幸君がいるから大丈夫かな。」
「はい、俺がちゃんと守ります。」
『い、良いよ!一也は野球優先して、私は大丈夫だから。』
「野球とそれは別だろ?」
『一也には手出しさせたくないの。』
「それはどういう意味だよ。」
『え…いや……その……』
「ははっ!仲良いね(笑)」
ーーーーーーー
ーーーー
ー
あの後、野球の話になって佐伯さんも捕手やってたとか聞いたな。
何処の高校だったけ?
「御幸君!奏ちゃんは!?」
「まだ起きないから保健の先生に任せてきた。そっちは?」
「悠里ちゃんは風邪だって連絡あったみたい。」
「アイツでも風邪引くんだな(笑)」
「それ、悠里ちゃんが聞いたら怒るよ。」
笑いながらも城崎は否定しない。
教室に戻ればクラスの女子が駆け寄ってくる。
「御幸君、朝いないからどうしたのかと思ったよー。」
「ん?あぁ…保健室行ってた。」
「え!?具合悪いの?それとも怪我?」
「いや、奏が倒れたから付き添ってただけ。」
俺が理由を言えば、目の前の女子が複雑そうな顔をした。
…奏とは違って分かりやすいな。
「…藤堂さんて、御幸君に迷惑かけすぎじゃない?」
「迷惑とか思ってないし。寧ろもう少し頼って欲しいぐらい。」
「何で?他にも男いるんだよ?」
「それも誤解。奏はそんな器用な事出来ないから。」
それでも納得いかないのか、食い下がる女子を簡単にあしらって自分の席へ。
さて、どうすっかな。
本当の事話したら話したで違う噂たつし…。
このままって訳にもいかないしなぁ…。
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
『…ん……』
「藤堂さん起きた?」
『……先生……此処は?』
「保健室よ、学校前で貴女が倒れたから御幸君が運んでくれたの。」
『…一也が……』
「後でお礼言わなきゃね。」
『……はい。』
「もう少し横になってなさい。」
…悠里はどうしたんだろう…。
何もされてなければ良いけど。
浩輔達の事も気掛かりだし、このままだと一也にも気付かれる。
これ以上心配かけたくない。
帰ったら一度浩輔達と話そう。
『(あれ?今何時?)あの…先生…』
呼びかけても返事がない。
保健室にいないの?
チャイムが鳴って、少しすると保健室のドアが開いた。
先生かな?
「奏?」
『!…一也。』
「良かった、目が覚めたんだな。」
入ってきたのは先生じゃなくて一也だった。
安心した様に笑う一也を見て私は慌てて起きた。
「もう大丈夫か?」
『うん、運んでくれて有り難う。』
「良いって。あ、葛西の事なんだけど…」
『!』
悠里に何かあったの?
「単なる風邪で休みだってさ。」
『…風邪?』
「そ、風邪。」
ホッとした。
『悠里でも風邪引くんだね。』
「お前、俺と同じ事言ってる(笑)」
『一也も?』
「城崎から聞いて、全く同じ事言ったんだよ。」
『ふふっ……悠里は普段から元気だから風邪引かなさそうだもんね。』
「馬鹿は風邪引かないって言うけど?」
『悠里の目の前でそれ言わないでね、また怒っちゃうから。』
「考えとく(笑)」
そうだ、今何時か一也に聞こう。
『ねぇ、今って何時?』
「もう昼だよ。」
『嘘!?』
「ホント。今、城崎が奏の分もノートとってくれてるから。」
『莉愛にお礼言わなきゃ…』
一也と話をしてると、保健の先生が戻ってきた。
「藤堂さん、先ほど親御さんに連絡したら迎えに来てくれるそうよ。」
『……え?』
「目が覚めたとはいえ倒れたのだから。」
「じゃあ俺が鞄持ってきます。」
「御幸君お願いね。」
そこからは早かった。
一也が鞄を持って戻ってきて、既に母さんは外にいるらしく一緒に向かった。
あれよあれよと車に乗せられて自宅に帰った。
……丁度良いか、母さんにも話そう。
その前に志穂だ。
私はグッと手を握り志穂の部屋に向かった。
コンコン
「?誰?」
『志穂、お姉ちゃんだけど今良い?』
「え!?お姉ちゃん!?」
慌ててドアを開けてくれた。
「何でいるの!?まだ学校でしょ?」
『それは後で話すから、とりあえず入っても?』
「う、うん。」
部屋に入って志穂と向き合う。
実際、被害は自分だけじゃないから志穂にも聞かなきゃいけない。
『…学校であった事を父さん達に話そうと思う。』
「……え?」
『包み隠さず…ね。』
「そ…そんな事したら!お父さんは絶対に引っ越しを考える……カズ兄といられなくなっちゃうんだよ…?」
……この子は本当に優しい、自分の事じゃなく私と一也の事を真っ先に考えてくれて……志穂が妹で良かった。
『一也にもちゃんと話すよ、怒られるけど。』
「…分かった。」
その夜、私は浩輔と志穂と3人で両親に全て話した。
母さんは真っ青になり、父さんは手で顔を覆ってしまった。
『……本当にごめんなさい。浩輔と志穂を巻き込んでしまいました……』
「巻き込んだんじゃないわ……貴女は2人の姉なのよ。そんな他人みたいな風に言わないで。」
「…そうだよ。奏はちゃんと僕達の大事な娘なんだから……」
『……父さん……母さん…!』
「君が僕達をそう呼んでくれる様になった時はもの凄く嬉しかったんだ。とりあえず、転校すると考えておいて。」
優しく諭す様に言ってくれる父さん。
私達も頷いた。
…一也……ごめん。
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ベッドに寝ている奏の頬を撫でる。
触れても彼女が起きる気配はなかった。
「御幸君、藤堂さんの事は私に任せて教室戻りなさい。」
「…お願いします。」
俺は保健室を出て教室に向かう途中も色々と考えてみた。
登校する時と休み時間は奏と一緒にいる。
下校時に俺や葛西がいない時は城崎が一緒。
周りがアイツに何も出来ない様に…。
…本当に?
「(…くそ!考えても何も浮かばねぇ…)」
今は奏が目覚めるまで待とう。
葛西の事は同じクラスの城崎が何か聞いてるだろうし。
…奏は自分に何かあっても俺が手出しするのを嫌がる。
そう言ってたのは確か…奏の実父に会った時か。
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約1ヶ月前、俺は約束通り奏と一緒に会いに行った。
おじさんは俺がいるから大丈夫だろうと判断してくれて任せてくれた。
「何処で待ち合わせ?」
『えと、改札だって。』
駅の改札に着けば、スーツ姿で少し若めの男性が俺らを見つけて駆け寄ってきた。
「こんばんは。」
「…ども。」
『こんばんは。』
「彼は?」
『…私の幼なじみ…』
「幼なじみ……そうか。」
嬉しさを噛み締める様に微笑む男性は、奏にどことなく似ていて変な感じだった。
「2人とも、ご飯は食べたかい?」
『…まだ…』
「じゃあ、ファミレスでも行こうか。」
近くのファミレスに入って、自己紹介する。
「私は佐伯幸人、話は聞いてるとは思うけど奏の実の父親だよ。」
「…御幸一也です、奏とは幼い頃から一緒です。」
「そうか、幼なじみなだけと感じないのは気のせいかな?」
「いえ、彼女とはお付き合いしてます。」
「やっぱり。」
奏の方を見て佐伯さんは微笑む。
恥ずかしいのか、顔を下に向けてしまった。
…俺も少し恥ずかしいかも。
「…幸せそうでなりよりだよ。」
『…うん……幸せです。』
「学校で嫌な事とかないかい?」
『……大丈夫。』
「まあ、御幸君がいるから大丈夫かな。」
「はい、俺がちゃんと守ります。」
『い、良いよ!一也は野球優先して、私は大丈夫だから。』
「野球とそれは別だろ?」
『一也には手出しさせたくないの。』
「それはどういう意味だよ。」
『え…いや……その……』
「ははっ!仲良いね(笑)」
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あの後、野球の話になって佐伯さんも捕手やってたとか聞いたな。
何処の高校だったけ?
「御幸君!奏ちゃんは!?」
「まだ起きないから保健の先生に任せてきた。そっちは?」
「悠里ちゃんは風邪だって連絡あったみたい。」
「アイツでも風邪引くんだな(笑)」
「それ、悠里ちゃんが聞いたら怒るよ。」
笑いながらも城崎は否定しない。
教室に戻ればクラスの女子が駆け寄ってくる。
「御幸君、朝いないからどうしたのかと思ったよー。」
「ん?あぁ…保健室行ってた。」
「え!?具合悪いの?それとも怪我?」
「いや、奏が倒れたから付き添ってただけ。」
俺が理由を言えば、目の前の女子が複雑そうな顔をした。
…奏とは違って分かりやすいな。
「…藤堂さんて、御幸君に迷惑かけすぎじゃない?」
「迷惑とか思ってないし。寧ろもう少し頼って欲しいぐらい。」
「何で?他にも男いるんだよ?」
「それも誤解。奏はそんな器用な事出来ないから。」
それでも納得いかないのか、食い下がる女子を簡単にあしらって自分の席へ。
さて、どうすっかな。
本当の事話したら話したで違う噂たつし…。
このままって訳にもいかないしなぁ…。
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『…ん……』
「藤堂さん起きた?」
『……先生……此処は?』
「保健室よ、学校前で貴女が倒れたから御幸君が運んでくれたの。」
『…一也が……』
「後でお礼言わなきゃね。」
『……はい。』
「もう少し横になってなさい。」
…悠里はどうしたんだろう…。
何もされてなければ良いけど。
浩輔達の事も気掛かりだし、このままだと一也にも気付かれる。
これ以上心配かけたくない。
帰ったら一度浩輔達と話そう。
『(あれ?今何時?)あの…先生…』
呼びかけても返事がない。
保健室にいないの?
チャイムが鳴って、少しすると保健室のドアが開いた。
先生かな?
「奏?」
『!…一也。』
「良かった、目が覚めたんだな。」
入ってきたのは先生じゃなくて一也だった。
安心した様に笑う一也を見て私は慌てて起きた。
「もう大丈夫か?」
『うん、運んでくれて有り難う。』
「良いって。あ、葛西の事なんだけど…」
『!』
悠里に何かあったの?
「単なる風邪で休みだってさ。」
『…風邪?』
「そ、風邪。」
ホッとした。
『悠里でも風邪引くんだね。』
「お前、俺と同じ事言ってる(笑)」
『一也も?』
「城崎から聞いて、全く同じ事言ったんだよ。」
『ふふっ……悠里は普段から元気だから風邪引かなさそうだもんね。』
「馬鹿は風邪引かないって言うけど?」
『悠里の目の前でそれ言わないでね、また怒っちゃうから。』
「考えとく(笑)」
そうだ、今何時か一也に聞こう。
『ねぇ、今って何時?』
「もう昼だよ。」
『嘘!?』
「ホント。今、城崎が奏の分もノートとってくれてるから。」
『莉愛にお礼言わなきゃ…』
一也と話をしてると、保健の先生が戻ってきた。
「藤堂さん、先ほど親御さんに連絡したら迎えに来てくれるそうよ。」
『……え?』
「目が覚めたとはいえ倒れたのだから。」
「じゃあ俺が鞄持ってきます。」
「御幸君お願いね。」
そこからは早かった。
一也が鞄を持って戻ってきて、既に母さんは外にいるらしく一緒に向かった。
あれよあれよと車に乗せられて自宅に帰った。
……丁度良いか、母さんにも話そう。
その前に志穂だ。
私はグッと手を握り志穂の部屋に向かった。
コンコン
「?誰?」
『志穂、お姉ちゃんだけど今良い?』
「え!?お姉ちゃん!?」
慌ててドアを開けてくれた。
「何でいるの!?まだ学校でしょ?」
『それは後で話すから、とりあえず入っても?』
「う、うん。」
部屋に入って志穂と向き合う。
実際、被害は自分だけじゃないから志穂にも聞かなきゃいけない。
『…学校であった事を父さん達に話そうと思う。』
「……え?」
『包み隠さず…ね。』
「そ…そんな事したら!お父さんは絶対に引っ越しを考える……カズ兄といられなくなっちゃうんだよ…?」
……この子は本当に優しい、自分の事じゃなく私と一也の事を真っ先に考えてくれて……志穂が妹で良かった。
『一也にもちゃんと話すよ、怒られるけど。』
「…分かった。」
その夜、私は浩輔と志穂と3人で両親に全て話した。
母さんは真っ青になり、父さんは手で顔を覆ってしまった。
『……本当にごめんなさい。浩輔と志穂を巻き込んでしまいました……』
「巻き込んだんじゃないわ……貴女は2人の姉なのよ。そんな他人みたいな風に言わないで。」
「…そうだよ。奏はちゃんと僕達の大事な娘なんだから……」
『……父さん……母さん…!』
「君が僕達をそう呼んでくれる様になった時はもの凄く嬉しかったんだ。とりあえず、転校すると考えておいて。」
優しく諭す様に言ってくれる父さん。
私達も頷いた。
…一也……ごめん。
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