向かう先には光輝く世界
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『zzz』
「.....」
いつものように授業をサボり
屋上で寝ようと思って登って定位置に向かうと
そこにはいつもの風景に
横たわる女子生徒の姿。
「なんでここにおるんじゃ」
俺のいつも寝転ぶ所にいたのは
ついこの間マネージャーになった莉和。
天気も良いので
大の字になり気持ちよさそうに寝ている。
仮にも女子なのに大の字とは。
ほんとにびっくりぜよ。
場所を移すかと
莉和に背を向けドアの方へ向かおうとした時
『...大地』
声が聞こえ振り向き莉和の顔を見ると
寝ているであろう彼女の目から涙が流れていた。
愛おしそうに呟くその声とは裏腹に
その寝顔は暗く見えた。
なぜかその寝顔に目を奪われてた。
俺はこいつの事は何も知らない。
突然捕まえろと幸村に言われ
部室に連れてこられたと思ったら
いきなりマネージャーになり
良くコケるし一個下と思えんくらい
言動が子どもだが
その辺の女子と変わらんだろと思っていた。
元々いたマネージャーも
結局まともに仕事はしないで
キャーキャー言いよって練習の邪魔じゃった。
マネージャーがいたって
結局やる事は変わらんかったしいらん。
だから莉和が来た時も
こいつも嫌々じゃったし
すぐ辞めるじゃろと思っていた。
けど文句を言いながらも
仕事は真面目にきちんとこなす。
テニス経験者なのかある程度知識もあって
欲しいタイミングでタオルもドリンクも出てくる。
荒れ放題だった部室も倉庫も
綺麗になっとった。
部活中はコートのチョロチョロしてるから
掃除してる暇なんてないのじゃが
休み時間にやっとったらしい。
莉和がいると不思議と部内も明るくなり
ケラケラ笑う声や話し声が聞こえると
なんだか落ち着くようになった。
幸村の機嫌もいいし
赤也とブン太は懐いてるし
なんならあそこは兄弟みたいじゃ。
お菓子やらその日あった面白い話をして
ギャーギャー騒ぎ真田に怒られる。
最初はメンバーが女子とそんな風に
絡んでいるのに違和感があったが
これもいつしか当たり前の日常になった。
前から一緒にいたようにあっという間に馴染んだ。
でも時々莉和は寂しそうな顔をする。
特に俺らが試合をしている時。
他に気が付いている奴がいるのかわ知らんが
俺は何度かその顔を見てしまった。
寂しそうに試合をするレギュラーを
見つめるその顔を。
どうしてそんな顔するんじゃ?
その目になにを写している?
そして今日涙を見た。
その涙は誰の為の涙じゃ?
お前さんが呟いた者は?
俺はお前さんの事を何も知らない。
誰かの事を知りたいと思ったことは無い。
泣いているところを見ても
その理由を知りたいと思ったことも無い。
この感情はなんじゃ?
そっと眠る莉和の隣に腰を下ろすと
寝返りをうちこちらに顔を向け小さく縮こまった莉和。
顔にかかった髪の毛を避けようと
莉和に近づくと
手が伸びシャツのぎゅっと握り
また涙が零れた。
『...行かないで.....置いてかないで』
苦しそうなその顔を見ていたら
自然と言葉が出てきた。
「何処にも行かん。ここにいる」
そう呟き頭を撫でてやると
苦しんでいるような顔は
自然と力が抜け穏やかな寝顔に変わった。
シャツは相変わらず握られたまま。
不思議と嫌な気はしなかった。
だからそのままにしておいた。
お前さんが少しでも楽になるなら。
一瞬でも安らかになるなら。
少しくらいのシワは良いだろう。
いつも見ている莉和とは違う莉和。
その小さな体に抱えてるもんはなんじゃ?
「不思議なやつじゃのぅ」
そっと空に呟き目を閉じた。
起きた時の莉和の顔を想像しながら。
きっとこの状況に驚き慌てるじゃろう。
想像だけで笑えてくるのぅ。
そんな俺を見て笑ってくれるじゃろうか。
いつもの笑顔見れるじゃろうか。
一人の女の事をこんなにも知りたいと思ったことは無い。
恋?
いや、ありえん。
そんなの昔に置いてきたはずだ。
でも莉和の笑顔がみたい。
目を覚ました時に
またあの笑顔が見れることを願って
そっと眠りについた。
END