アーサー・カークランド(英)
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深夜。家の中はすっかり静まり返っていた。昼間なら聞こえてくるはずの時計の音さえ、今は妙に遠く感じられる。窓の外では細かな雨が降っていて、ガラスを叩く音だけが一定の間隔で響いていた。
アーサーは眠っていた。しかし、隣から聞こえてきた小さな声に、ゆっくりと目を開ける。
「……ん?」
まだ眠気の残る目をこすりながら、隣を見る。そこには、布団の中で小さく丸まっているナマエがいた。
「……おい?」
声をかけても返事がない。ただ、肩が小さく震えている。アーサーは一気に目を覚ました。
「……泣いてんのか?」
驚いたように呟き、上半身を起こす。暗い部屋の中で目を凝らすと、ナマエの頬に涙が残っているのが分かった。アーサーは少しだけ戸惑った。
こういうとき、どうすればいいのか。普段なら、もっと気の利いたことを言えるのかもしれない。けれど、泣いている恋人を前にすると、頭の中がうまく働かなくなる。
「……おい、どうしたんだよ」
声をかけながら、恐る恐る手を伸ばす。肩に触れる。ナマエがわずかに身体を震わせた。
アーサーは一瞬ためらったあと、そのままそっと引き寄せた。
「……大丈夫だから」
自分でも驚くほど、声が優しくなった。ナマエがアーサーの胸元へ顔を寄せる。その瞬間、アーサーの耳が赤くなった。
「……ったく」
照れを隠すように、小さく息を吐く。
「こんな夜中に泣くなよ……心配するだろ」
文句のような言葉。けれど、背中へ回された腕はとても優しかった。ゆっくりと背中を撫でる。一度。それから、もう一度。ナマエの呼吸が落ち着くまで、同じ動作を繰り返す。
「……怖い夢でも見たのか?」
返事の代わりに、服を掴む指先に力が入った。アーサーはその手を見下ろす。そして、少しだけ表情を柔らかくした。
「……そうか」
それ以上は聞かなかった。無理に話させる必要なんてない。今はただ、安心してもらえればいい。
「もう大丈夫だ」
背中を撫でながら、ゆっくりと言葉を続ける。
「俺がここにいるから」
言った直後、アーサーは自分で恥ずかしくなったらしい。顔を真っ赤に染めた。
「……って、何言ってんだ俺」
ぼそっと呟く。けれど、ナマエが少しだけ安心したように身体を預けてくると、その表情はすぐに穏やかになった。
「……まあ、いいか」
そう言って、もう一度抱き直す。今度は先ほどよりもしっかりと。それでも苦しくならないように、包み込むように腕を回す。
「泣きたいなら、泣けばいい」
アーサーは少し照れながら続ける。
「無理に我慢する必要なんかねえよ」
しばらくして、泣き声が少しずつ小さくなっていく。アーサーはそれに気づいて、ほっとしたように息を吐いた。
「……よかった」
ナマエの髪を、ぎこちなく撫でる。最初はどう触れればいいのか分からないような手つきだった。けれど、何度か繰り返すうちに自然になっていった。
「……眠れそうか?」
小さく頷くナマエ。
「そっか」
アーサーは微笑んだ。
「じゃあ、寝るまでこうしといてやるよ」
言葉とは裏腹に、その声にはどこか嬉しそうな響きがある。ナマエが服を掴んだまま離さないことにも、何も言わない。むしろ、その手を自分の手でそっと包んだ。
「……離れねえから」
ぽつりと呟く。
「だから、もう怖がらなくていい」
雨音が静かに続いている。部屋は暗いまま。けれど、さっきまでの寂しさはもうなかった。アーサーはナマエを抱き寄せたまま、背中をゆっくり撫で続ける。やがて腕の中から、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「……寝たか」
アーサーは小さく笑う。眠ったことを確認してからも、すぐには腕を解かなかった。
「……ほんと、心配かけやがって」
そう呟く声は、どこまでも優しい。眠っているナマエの髪をもう一度だけ撫でる。アーサーはおもむろにナマエの顔に近付くと、起こさないようにしながらも、そっと口づけた。
「……おやすみ」
照れくさそうに呟いて、アーサーも目を閉じた。雨音だけが残る静かな夜。その腕の中には、もう涙の気配はなかった。
アーサーは眠っていた。しかし、隣から聞こえてきた小さな声に、ゆっくりと目を開ける。
「……ん?」
まだ眠気の残る目をこすりながら、隣を見る。そこには、布団の中で小さく丸まっているナマエがいた。
「……おい?」
声をかけても返事がない。ただ、肩が小さく震えている。アーサーは一気に目を覚ました。
「……泣いてんのか?」
驚いたように呟き、上半身を起こす。暗い部屋の中で目を凝らすと、ナマエの頬に涙が残っているのが分かった。アーサーは少しだけ戸惑った。
こういうとき、どうすればいいのか。普段なら、もっと気の利いたことを言えるのかもしれない。けれど、泣いている恋人を前にすると、頭の中がうまく働かなくなる。
「……おい、どうしたんだよ」
声をかけながら、恐る恐る手を伸ばす。肩に触れる。ナマエがわずかに身体を震わせた。
アーサーは一瞬ためらったあと、そのままそっと引き寄せた。
「……大丈夫だから」
自分でも驚くほど、声が優しくなった。ナマエがアーサーの胸元へ顔を寄せる。その瞬間、アーサーの耳が赤くなった。
「……ったく」
照れを隠すように、小さく息を吐く。
「こんな夜中に泣くなよ……心配するだろ」
文句のような言葉。けれど、背中へ回された腕はとても優しかった。ゆっくりと背中を撫でる。一度。それから、もう一度。ナマエの呼吸が落ち着くまで、同じ動作を繰り返す。
「……怖い夢でも見たのか?」
返事の代わりに、服を掴む指先に力が入った。アーサーはその手を見下ろす。そして、少しだけ表情を柔らかくした。
「……そうか」
それ以上は聞かなかった。無理に話させる必要なんてない。今はただ、安心してもらえればいい。
「もう大丈夫だ」
背中を撫でながら、ゆっくりと言葉を続ける。
「俺がここにいるから」
言った直後、アーサーは自分で恥ずかしくなったらしい。顔を真っ赤に染めた。
「……って、何言ってんだ俺」
ぼそっと呟く。けれど、ナマエが少しだけ安心したように身体を預けてくると、その表情はすぐに穏やかになった。
「……まあ、いいか」
そう言って、もう一度抱き直す。今度は先ほどよりもしっかりと。それでも苦しくならないように、包み込むように腕を回す。
「泣きたいなら、泣けばいい」
アーサーは少し照れながら続ける。
「無理に我慢する必要なんかねえよ」
しばらくして、泣き声が少しずつ小さくなっていく。アーサーはそれに気づいて、ほっとしたように息を吐いた。
「……よかった」
ナマエの髪を、ぎこちなく撫でる。最初はどう触れればいいのか分からないような手つきだった。けれど、何度か繰り返すうちに自然になっていった。
「……眠れそうか?」
小さく頷くナマエ。
「そっか」
アーサーは微笑んだ。
「じゃあ、寝るまでこうしといてやるよ」
言葉とは裏腹に、その声にはどこか嬉しそうな響きがある。ナマエが服を掴んだまま離さないことにも、何も言わない。むしろ、その手を自分の手でそっと包んだ。
「……離れねえから」
ぽつりと呟く。
「だから、もう怖がらなくていい」
雨音が静かに続いている。部屋は暗いまま。けれど、さっきまでの寂しさはもうなかった。アーサーはナマエを抱き寄せたまま、背中をゆっくり撫で続ける。やがて腕の中から、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「……寝たか」
アーサーは小さく笑う。眠ったことを確認してからも、すぐには腕を解かなかった。
「……ほんと、心配かけやがって」
そう呟く声は、どこまでも優しい。眠っているナマエの髪をもう一度だけ撫でる。アーサーはおもむろにナマエの顔に近付くと、起こさないようにしながらも、そっと口づけた。
「……おやすみ」
照れくさそうに呟いて、アーサーも目を閉じた。雨音だけが残る静かな夜。その腕の中には、もう涙の気配はなかった。
