箱庭
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この世界には、国がいる。
イギリスにはイギリスがいて、フランスにはフランスがいる。アメリカにも、中国にも、ロシアにも、イタリアにも、ドイツにも。
彼らは人間と同じように歩き、話し、食事をし、時には喧嘩をする。……ただし、人間とは少し違う。
彼らは国そのものだ。
国の歴史を背負い、国民の暮らしを見守り、時にはその国を治める「上司」のもとで働く。戦争が起きれば戦場へ行き、条約が結ばれればその場に立ち会い、国が栄えれば喜び、衰えれば共に苦しむ。国が滅んだ時には、彼らも消える。そして何より――彼らは、人間よりずっと長く生きる。
数百年。
千年。
長いものなら、二千年を超える者だっている。そのため彼らの世界では、人間には少し理解しづらいことも起こる。
昨日まで敵だった国と、今日は仲良くお茶を飲んでいたり。何百年も前の出来事を、つい昨日のことのように覚えていたり。国同士の関係が、そのまま本人たちの人間関係になっていたり。
……まあ、国というものも、なかなか大変なのである。
ところで。
ここで一つ、少し変わった国の話をしよう。
日本。
東の海に浮かぶ、細長い島国。
礼儀正しく、控えめで、少々引っ込み思案。古くから長い歴史を持ち、現在では「本田菊」という一人の青年が、その国を代表している。
――そう。現在では。
だが、日本には昔から、もう一人いた。
本田ナマエ。菊の妹。
そして、同じ日本という国を背負う、もう一人の「日本」である。
一人は頭脳と外交に長けていた。もう一人は剣を携え、幾度となく国の危機を駆け抜けた。
時代によって表舞台に立つ者は変わった。兄が日本の顔となった時代もあれば、妹が日本の中心に立った時代もある。
二人は時に同じ方向を向き、時に異なる主君のもとで争い、時には何百年もの間、国の在り方を巡って意見を違えた。
それでも、二人は兄妹だった。
どれほど時代が変わっても。どれほど立場が変わっても。そのことだけは、変わらなかった。
そして――
そんな日本の片割れには、少し変わった縁があった。西の海を越えた、遠い島国。紅茶を愛し、皮肉屋で、気位が高く、それでいて妙に面倒見のいい紳士。
イギリス。アーサー・カークランド。
長い歴史を生きてきた二つの島国は、外交の席で出会った。最初はただの国と国。やがて友人となり。そしていつしか――
互いに、ただの「国」ではいられなくなっていった。
これは、三千年近い時を生きてきた、日本という国の片割れ。本田ナマエと、千年以上の歴史を持つ、遠い島国の紳士。アーサー・カークランド。
二人が、国と国との関係だけでは説明できない感情を知っていく物語である。
――そしてもちろん。
そんな二人を、黙って見ている兄がいるわけもなく。これは、少し変わった日本と。その兄と。遠い島国の紳士と。そして、彼らを取り巻くたくさんの国々が織りなす、長くて、騒がしくて、少しだけ甘い――
国たちの物語である。
イギリスにはイギリスがいて、フランスにはフランスがいる。アメリカにも、中国にも、ロシアにも、イタリアにも、ドイツにも。
彼らは人間と同じように歩き、話し、食事をし、時には喧嘩をする。……ただし、人間とは少し違う。
彼らは国そのものだ。
国の歴史を背負い、国民の暮らしを見守り、時にはその国を治める「上司」のもとで働く。戦争が起きれば戦場へ行き、条約が結ばれればその場に立ち会い、国が栄えれば喜び、衰えれば共に苦しむ。国が滅んだ時には、彼らも消える。そして何より――彼らは、人間よりずっと長く生きる。
数百年。
千年。
長いものなら、二千年を超える者だっている。そのため彼らの世界では、人間には少し理解しづらいことも起こる。
昨日まで敵だった国と、今日は仲良くお茶を飲んでいたり。何百年も前の出来事を、つい昨日のことのように覚えていたり。国同士の関係が、そのまま本人たちの人間関係になっていたり。
……まあ、国というものも、なかなか大変なのである。
ところで。
ここで一つ、少し変わった国の話をしよう。
日本。
東の海に浮かぶ、細長い島国。
礼儀正しく、控えめで、少々引っ込み思案。古くから長い歴史を持ち、現在では「本田菊」という一人の青年が、その国を代表している。
――そう。現在では。
だが、日本には昔から、もう一人いた。
本田ナマエ。菊の妹。
そして、同じ日本という国を背負う、もう一人の「日本」である。
一人は頭脳と外交に長けていた。もう一人は剣を携え、幾度となく国の危機を駆け抜けた。
時代によって表舞台に立つ者は変わった。兄が日本の顔となった時代もあれば、妹が日本の中心に立った時代もある。
二人は時に同じ方向を向き、時に異なる主君のもとで争い、時には何百年もの間、国の在り方を巡って意見を違えた。
それでも、二人は兄妹だった。
どれほど時代が変わっても。どれほど立場が変わっても。そのことだけは、変わらなかった。
そして――
そんな日本の片割れには、少し変わった縁があった。西の海を越えた、遠い島国。紅茶を愛し、皮肉屋で、気位が高く、それでいて妙に面倒見のいい紳士。
イギリス。アーサー・カークランド。
長い歴史を生きてきた二つの島国は、外交の席で出会った。最初はただの国と国。やがて友人となり。そしていつしか――
互いに、ただの「国」ではいられなくなっていった。
これは、三千年近い時を生きてきた、日本という国の片割れ。本田ナマエと、千年以上の歴史を持つ、遠い島国の紳士。アーサー・カークランド。
二人が、国と国との関係だけでは説明できない感情を知っていく物語である。
――そしてもちろん。
そんな二人を、黙って見ている兄がいるわけもなく。これは、少し変わった日本と。その兄と。遠い島国の紳士と。そして、彼らを取り巻くたくさんの国々が織りなす、長くて、騒がしくて、少しだけ甘い――
国たちの物語である。
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